繰り返す発熱:医師が考える原因と受診の目安|症状辞典

繰り返す発熱

受診の目安

夜間・休日を問わず受診

急ぎの受診、状況によっては救急車が必要です。
どうしても受診できない場合でも、翌朝には受診しましょう。

  • 38℃以上の高熱に膀胱炎や腰痛などの症状を伴う
  • 意識障害がある
  • 起き上がって歩くことができない

診療時間内に受診

翌日〜近日中の受診を検討しましょう。

  • 毎日熱が上がったり下がったりする
  • 手足の指の関節が腫れたりこわばったりするほか、微熱や倦怠感などもある

医療社団法人小磯診療所 理事長

磯崎 哲男 先生【監修】

発熱とは通常の体温よりも異常に体温が上昇している状態のことです。一般的には37.5℃以上が発熱といわれています。発熱はさまざまな原因によって非常によくみられる症状であるため、よほどの高熱でない限り軽く考えられがちな症状でもあります。しかし、発熱を定期的に繰り返す場合は、思いもよらない原因が背景にある可能性もあります。

  • いったん熱は下がるものの、数日おきに発熱を繰り返す
  • 日中は平熱だが、夜間になると熱が上がる
  • ストレスや緊張を感じると定期的に熱が上がる

これらの症状がみられる場合、原因としてどのようなことが考えられるでしょうか?

何度も繰り返す発熱は次のような病気によって引き起こされることがあります。具体的には感染症、がん自己免疫疾患などの病気が挙げられます。

細菌やウイルスへの感染が原因で発熱を引き起こすことがあります。感染による病気の中には、次のように発熱を繰り返すタイプのものもあります。

尿路感染症(腎盂腎炎、前立腺炎など)

尿路感染症とは、おしっこの通り道(尿路)である腎臓、尿管、膀胱、尿道において、なんらかの原因で病原体が侵入し炎症を起こす病気です。

腎盂腎炎は膀胱や尿管に入り込んだ細菌が腎臓にまでおよび、炎症を引き起こす病気です。背中や側腹部の痛み、膀胱炎とともに38℃以上の高熱を出すことが多く、重症化すると敗血症に移行して命に関わることも少なくありません。

腎盂腎炎では、熱の上昇と下降を数時間~数日おきに繰り返すことが多いとされています。そのほかにも、悪寒、倦怠感などの全身症状が現れることも多々あります。

前立腺炎は男性特有の器官である前立腺に炎症が生じる病気で、大きく分けて急性細菌性前立腺炎と慢性細菌性前立腺炎、慢性非細菌性前立腺炎の3種類があります。このうち急性細菌性前立腺炎は、前立腺の腫れや排尿時の痛み、頻尿、38℃以上の高熱といった症状が現れます。

腎盂腎炎
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前立腺炎
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麻疹

麻疹ウイルスに感染することで生じる病気です。感染してから10~12日ほど潜伏した後で、発熱や咳、鼻水、結膜炎発疹(ほっしん)などの症状が現れます。熱は3日前後続いたのちに1℃程度下がりますが、半日程度で発疹とともに39℃以上の高熱が出ます。発疹は耳の後ろや首、顔、体幹、腕、脚の順で広がり、発疹が全身に広がるまで高熱が続くといわれています。

麻疹
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急性中耳炎

ウイルスや細菌感染によって鼓膜の奥にある中耳腔に炎症が生じる病気で、特に3歳までの子どもに発症することが多いとされています。主な症状は耳の痛みや難聴の症状のほか、発熱や嘔吐、下痢などの全身症状を伴うことがあります。

急性中耳炎
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肺結核

結核菌が肺で増殖することで発症する病気です。咳や痰、発熱のほか、痰に血が混じる(血痰)こともあり、これらの症状が2週間以上続いたり、回復と悪化を繰り返したりします。かつて結核は国民病といわれるほど感染者が多かったものの、治療薬の開発などにより患者数は大きく減少しています。

肺結核
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多くのがんは、進行すると発熱を引き起こす物質が産生されるようになるため発熱を繰り返すようになります。特に、1日の中で平熱と発熱を繰り返す“間欠熱”を生じることが多く、なかには繰り返す発熱によってがんが発見されることも少なくありません。どのがんでも発熱は起こり得ますが、血液系のがんである白血病悪性リンパ腫などでは頻度が高いとされています。

がん
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白血病

血液中の細胞の1つである白血球ががん化する病気です。原因や経過によってさまざまなタイプがありますが、体内に侵入したウイルスや細菌などの異物を攻撃する白血球が正常にはたらかなくなることで発熱を繰り返しやすくなります。

また赤血球や血小板など、ほかの血液細胞に異常をきたすケースも多く、貧血や血が止まりにくいといった症状が現れることも少なくありません。

白血病
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悪性リンパ腫

血液中の細胞の1つであるリンパ球ががん化する病気です。発症すると首や(わき)の下、脚の付け根などのリンパ節が腫れ、痛みのないしこりが生じます。進行するとリンパ節の腫れが全身に広がっていくばかりでなく、夜間を中心として38℃以上の発熱を繰り返し、体重減少や寝汗などの症状がみられるようになります。

そのほかにも、かゆみを伴う発疹脊髄(せきずい)が圧迫されることによる麻痺など、さまざまな症状が引き起こされるのが特徴です。

悪性リンパ腫
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免疫に異常をきたす病気の中には次のように発熱を繰り返すものがあります。

関節リウマチ

免疫が異常にはたらくことにより、関節内の滑膜と呼ばれる組織に慢性的な炎症が生じる病気です。主に指の関節に発症し、痛みや腫れを引き起こします。進行すると関節の構造が破壊されて変形することも少なくありません。

また、微熱を繰り返したり、貧血、倦怠感などの症状が見られたりすることもあります。

関節リウマチ
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全身性エリテマトーデス

免疫が異常にはたらくことにより、関節、腎臓、皮膚、血管などに慢性的な炎症が生じる病気です。

症状の現れ方は人によって異なり、発熱や倦怠感とともに関節痛、両頬の皮疹、腎機能の低下などの症状を引き起こします。また、いったんよくなっても再発するのが特徴であり、発熱を繰り返すことがあります。

全身性エリテマトーデス
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発熱を繰り返すまれな病気としては、家族性地中海熱高IgD症候群PFAPA症候群などの自己炎症性疾患が挙げられます。

家族性地中海熱

地中海沿岸域や中近東に多い病気で、発熱のほか腹膜炎胸膜炎による腹痛と胸痛、また関節の痛みや腫れなどの症状が繰り返し現れます。一般的に発熱は12~72時間続き、38℃を超える高熱が生じます。

家族性地中海熱
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高IgD症候群

遺伝子変異によって主に乳児期早期に発熱を繰り返す病気です。発熱した際には頚部(けいぶ)リンパ節の腫れや関節炎、皮疹、腹痛、下痢、嘔吐、肝障害などを伴います。

PFAPA症候群

主に2~5歳ごろの子どもに生じる病気です。3~6日の発熱がおよそ28日周期で繰り返し起こり、咽頭炎(いんとうえん)やアフタ性潰瘍(せいかいよう)、リンパ節の腫れ、疲労などの症状が現れます。

気になる症状がある場合は、医療機関の受診を検討しましょう。

PFAPA症候群
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発熱はよくみられる症状ですが、発熱を繰り返すときは上で挙げたような病気が原因の可能性があります。中には命に関わるような病気が背景にあるケースもありますので決して看過することはできない症状の1つです。

特に、繰り返される発熱のほかにも倦怠感や関節痛など別の症状がある、数日おきに高熱が出る、貧血や出血症状、体重減少を伴う場合はできるだけ早く病院を受診しましょう。

また、受診の際にはいつ頃から発熱を繰り返すようになったのか、発熱の頻度や継続期間はどれくらいか、発熱以外に症状はないか、持病はないかなどを医師に詳しく伝えるようにしましょう。発熱の記録をしておくと診療がスムーズになることがあります。

原因の自己判断/自己診断は控え、早期の受診を検討しましょう。