薄毛:医師が考える原因と受診の目安|症状辞典
メディカルノート編集部 [医師監修]【監修】
髪の毛が減るなどして地肌が見える症状を薄毛といい、ホルモンの影響や栄養不足、細菌による皮膚の病気など、実にさまざまな原因が考えられます。
薄毛になると見た目が気になってしまい、生活に支障をきたすことも少なくありません。また、原因のなかには早めの治療が必要なものもあります。
こういった場合に考えられる原因には、どのようなものがあるのでしょうか。
日常生活が原因で薄毛が起こることもあります。主な原因としては、以下のようなものが挙げられます。
タンパク質や亜鉛、鉄など、さまざまな栄養素が毛の産生にはたらきかけています。
そのため、極端な食事制限や偏った食事などで栄養が不足すると、毛が弱くなったり抜け落ちてたりすることがあります。
ダイエットを行う場合、食事ではカロリーを計算し、無理とならない程度にカロリー摂取を調整したうえで、適度な運動を長く続けるのが健康的にダイエットを成功させる秘訣です。
ダイエットをしていない場合でも食事に偏りがある場合には、肉類や魚、野菜、豆類、海藻類や乳製品、果物などをバランスよく摂取するようにしましょう。
疲労やストレスによって自律神経やホルモンバランスが乱れると、毛周期が乱れたり、頭皮への血流循環が悪くなり、毛根部分に栄養が行き届かなくなったりします。
また、出産のあとにはホルモンバランスが大きく変化するために、その影響で一時的に脱毛が起こることがあります。
疲労やストレスには、休養が非常に大切だといわれています。まずは十分な睡眠時間を確保しつつ、睡眠の質を高めるよう努力してみましょう。
また、バランスのよい食事や運動、リラックスできる時間を意識的にとる、身近な方に悩みを聞いてもらうなどもよい解消法です。
ホルモンバランスの変化による産後の抜け毛は、多くの場合は徐々に回復していきますが、育児の疲労やストレスで抜け毛が起きる場合もあるため、ご両親や旦那さんに協力してもらい休養できる時間をつくるなど、疲労、ストレス解消に取り組んでみましょう。
洗髪せずに頭皮の不潔状態が続くと、皮脂が過剰に分泌され、皮脂に汗やほこり、フケなどが混ざります。
そして、毛穴が詰まったり、細菌が繁殖して炎症が生じたりして髪の成長や発毛が妨げられ、薄毛につながることがあります。
3日に1回(脂性の方や抜け毛が目立つ方は2日に1回くらい)の洗髪が、最低限頭皮の清潔を保つためには必要と考えられます。1〜2日に1回のペースを目安にシャンプーを使用して洗髪を行い、皮脂や汚れを落としてあげましょう。
上で挙げたような対策をとってもよくならない場合、思いもよらぬ原因が潜んでいるかもしれません。一度、皮膚科を受診し相談してみましょう。
病気による薄毛には、男性型脱毛症(AGA)など身近なものもありますが、想像のつかない意外な原因もあります。
頻度の高い病気としては以下のようなものが挙げられ、一般的に薄毛は部分的に生じます。
男性型脱毛症とは、男性ホルモンの影響によって生理的に発症する脱毛症のことで、いわゆるAGAと呼ばれているものです。
男性型と名前がついていますが、女性でも発症する場合があり、近年では女性が発症する場合を女性型脱毛症と呼ぶこともあります。男性では20代後半~40代後半、女性では閉経後に多くみられます。
前頭部の髪の生え際がM字型に薄くなったり、頭頂部がO型に薄くなったりすることが特徴で、基本的に脱毛は進行していきます。
円形脱毛症とは、ストレスや疲労、感染症、出産などをきっかけとして、毛が抜け落ちてしまう病気です。部分的に斑状に脱毛することが多いですが、重症例では広い範囲におよび、体毛も脱毛することがあります。
数か月程度で自然に髪が生えてくることが多いですが、再発を繰り返したり慢性的に続いたりする場合もあります。
脂漏性皮膚炎は、マラセチア菌などの皮膚常在菌によって皮脂が分解され、そうしてできた遊離脂肪酸が皮膚を刺激することによるものだと考えられています。頭皮に発症することが多いですが、顔や胸、脇の下、股など、毛の生える脂漏部分ならどこにでも発症する可能性があります。
発症すると、白色、黄色、灰色などをした鱗屑(フケのようなもの)を伴う皮疹が生じ、その影響で発症部位の毛が抜けて薄くなることがあります。
全身の病気などが原因で薄毛が起こることも珍しくはありません。以下に挙げるような原因では、薄毛は部分的ではなく、頭髪を含めた全身の毛が薄くなりやすい傾向にあります。
慢性甲状腺炎は、慢性的に甲状腺に炎症が起き、甲状腺の機能が低下する病気です。橋本病とも呼ばれています。
主な症状として、疲れやすさや体重増加、脈が遅くなる、関節の痛みや便秘などが挙げられ、髪の毛が細く弱くなって脱毛症が生じることもあります。
クッシング症候群とは、コルチゾールという副腎皮質ステロイドホルモンのひとつが過剰に分泌される病気です。
コルチゾールはストレスホルモンとも呼ばれ、過剰に分泌されると皮膚が薄くなったり、血管の壁が弱くなったりします。また、顔のむくみや胴体の肥満(手足は痩せて細くなる)、多毛、脱毛、ニキビ、うつ傾向など多彩な症状が現れます。
抗がん剤をはじめとするさまざまな薬の副作用で、毛が薄くなったり脱毛が起こったりする場合があります。併せてほかの症状がみられることが多く、新しく処方された薬を服用したあとに何らかの症状がみられた場合には副作用が疑われます。
斑状デリテマトーデスや禿髪性毛包炎、毛孔性苔癬といった病気によって、毛の組織が不可逆的なダメージを受けて永久脱毛に陥る脱毛症です。
そのほか、放射線治療や外傷性に瘢痕をきたして脱毛するものもあります。見た目の変化として色素沈着や脱色、かさぶたの付着などがみられる場合もあります。
トリコチロマニアとは、癖で自分の毛を抜いてしまった結果として脱毛状態になるもので、抜毛癖とも呼ばれています。小学校高学年から中学生の女児に多く、主にストレスが脱毛行為の原因になっていると考えられています。
多くは利き手側の頭髪やまつげにみられ、脱毛部の毛の抜け方はまばらで形もさまざまです。切れた毛が不規則に残ることも多くあります。
薄毛部分に痛みやかゆみ、皮疹が現れている場合、疲れやすいなど体の症状を伴う場合などには、近日中に病院を受診するのがよいでしょう。また、見た目が気になって生活に支障をきたしている場合も早めの受診がすすめられます。
受診先としては、内科または皮膚科でよいでしょう。診察を受ける際には、薄毛が起き始めた時期や部位、ほかの症状、服用している薬の有無などについて、しっかりと医師に伝えましょう。
翌日〜近日中の受診を検討しましょう。
気になる・困っている場合には受診を検討しましょう。