疾患啓発(スポンサード)

20~40歳代の女性に好発するクッシング症候群とは――原因・症状・検査について

20~40歳代の女性に好発するクッシング症候群とは――原因・症状・検査について
田辺 晶代 先生

国立国際医療研究センター病院 糖尿病内分泌代謝科診療科長、第二内分泌代謝科医長、内分泌・副腎腫...

田辺 晶代 先生

目次
項目をクリックすると該当箇所へジャンプします。

クッシング症候群”は、コルチゾールというホルモンが過剰に作られることで体に異常をきたす病気の総称です。1965年~1986年時点の調査では、日本全国で1年間にあらたに100例ほどの症例が発病すると報告されているまれな病気ですが、放置すると合併症を引き起こし、場合によっては命に関わる可能性もあります。全身にさまざまな症状が現れるものの、時間をかけて徐々に進行することが多いため、患者さんが自ら症状に気付きにくいのも特徴の1つです。今回は、国立国際医療研究センター病院 糖尿病内分泌代謝科 診療科長 兼 内分泌・副腎腫瘍(ふくじんしゅよう)センター長の田辺 晶代(たなべ あきよ)先生に、クッシング症候群の原因や症状、検査・診断についてお話を伺いました。

クッシング症候群は、副腎(左右の腎臓の上に1つずつある小さな臓器)で作られているコルチゾール(ステロイドホルモンの一種)が必要以上に増え、体に異常をきたす病気の総称です。男女比は1:4の割合で女性に多く、特に20~40歳代の方に多いといわれています。

病気の原因については、主に以下の3つに分けられます。

クッシング症候群の原因の約50%は副腎のコルチゾール産生腫瘍によるものです。副腎(多くは左右いずれか)に腫瘍が発生することがあり、その腫瘍の中には“コルチゾール”を産生するものがあります。正常の状態では、コルチゾールの分泌量は脳下垂体*から分泌される副腎刺激ホルモン(ACTH)によって、適量になるようにコントロールされています。コルチゾール産生腫瘍はACTHに関係なく必要以上にコルチゾールを分泌し、その結果クッシング症候群が発症します。このように副腎の腫瘍が原因で発症したクッシング症候群を “副腎性クッシング症候群”といいます。

*脳下垂体:脳の一番下にあり複数のホルモンを分泌する器官

約40%は脳下垂体にできる、ACTHを産生する腫瘍によるものです。ACTHは副腎を刺激してコルチゾールを分泌させるホルモンです。ACTH産生腫瘍が発生した場合、副腎へのコルチゾール分泌を促す刺激が増え、結果的にコルチゾールが必要以上に作られるようになります。脳下垂体にできたACTH産生腫瘍が原因で発症したものは“クッシング病”といい、難病にも指定されています。

脳下垂体ではなく、体のどこかにACTHを産生する腫瘍ができてしまうこともあります。脳下垂体以外に発生した腫瘍が原因になっているものは“異所性ACTH症候群”といい、クッシング症候群の中でも極めてまれな病態です。

主にこれら3つ(副腎性クッシング症候群・クッシング病・異所性ACTH症候群)を総称してクッシング症候群といいます。

ホルモンは血液によって全身に運ばれてさまざまな臓器に作用するため、クッシング症候群を発症した場合、全身に多様な症状が現れます。

コルチゾールが必要以上に増えると、満月様顔貌(まんげつようがんぼう)といって顔が丸みを帯びて満月のように見える特徴的な症状が現れます。また、首の後ろに脂肪が増えるバッファローハンプ(水牛様肩)も症状の1つです。お腹周りにも脂肪が付きますが、手足は細く、このように体の中心部に限って脂肪が増える症状を中心性肥満といいます。手足の筋力が弱くなり、腹部の皮膚には赤紫色の筋もできます(皮膚線条(ひふせんじょう))。

そのほか、赤ら顔やにきびがみられたり、皮膚が菲薄化(ひはくか)(薄くなる)して弾力がなくなり、軽くぶつけただけであざが残りやすくなったりするのも特徴的な症状です。

コルチゾールが必要以上に増えると、上で述べたような外見的な症状のほかにも、血糖値や血圧の上昇、コレステロール値の上昇、骨密度が低下して骨折しやすくなる、易感染性(感染症にかかりやすくなる)、傷が治りにくくなるなどの症状がみられます。また、女性では、月経不順あるいは無月経をきたす場合もあります。精神的に不安定になったり、うつ状態になったりすることもあります。

外見の変化や症状は数年かけて徐々に進行することが多いため、ひどくなるまでは患者さんが自ら気付いて医療機関を受診することはまれです。多くは、これまで異常がなかった方、特に若い方が健康診断で急に高血圧症糖尿病の可能性を指摘されたり、治療していた高血圧症や糖尿病がなかなかよくならなかったりすることがきっかけで発見されます。近年では画像検査で偶然腫瘍が見つかる頻度が増えています。たとえば、肺のX線検査で異常を指摘された方には、胸部CT検査が行われます。その際、画像に写り込んだ副腎に腫瘍が見つかり、精密検査の結果、クッシング症候群(副腎性クッシング症候群)が発見されるといったケースです。

クッシング症候群はホルモンの異常によって起こる病気ですので、精査・診断の際は主にホルモンの分泌量を測る検査を行います。さらに画像検査で原因となる腫瘍を探します。

クッシング症候群が疑われる方については血液検査でコルチゾール、ACTHの値を測定します。その際、できれば朝早めの時間帯、遅くとも午前中のうちの採血が望まれます。正常の副腎は早朝からコルチゾールを作り始め、朝8時ころにその量がピークを迎えます。その後徐々に減少して夜12時ころにはかなり低値になるという日内リズムがあるため、初診が午後だった場合、別日の午前中にあらためて採血のために受診いただくようお願いしています。

また、ホルモンの異常に伴う二次性高血圧*、二次性糖尿病**の疑いがあって受診した方については、コルチゾールやACTH以外の、異常が生じている可能性のあるホルモンの値のほか、血糖値やコレステロール値なども測定します。

*二次性高血圧:何らかの病気や薬の投与が原因となって起こる高血圧(原因が特定できる高血圧)

**二次性糖尿病:何らかの病気や薬の投与が原因となって起こる糖尿病

コルチゾールは、病気だけでなくストレスでも産生量が増える傾向にあります。そこで、コルチゾールやACTHの量の変化が病気によるものか否かを確認するために行うのがデキサメタゾン抑制試験です。この検査では、デキサメタゾンというステロイドホルモン薬(コルチゾールの作用を強くしたもの)を服用し、コルチゾールとACTHの値の変化を確認します。

健康な方であれば、デキサメタゾンを服用すると下垂体がACTHをほぼ産生しなくなり、それに伴ってコルチゾールもほとんど分泌されなくなります。服薬後の血液検査でコルチゾールが低値になっていれば、この検査では正常と判定します。一方、クッシング症候群の方の場合、デキサメタゾンを服用しても調整機能がはたらかずに副腎がコルチゾールを作り続けるため、服薬後の検査でコルチゾールが下がりません。

デキサメタゾン抑制試験の方法は、夜11時ころにデキサメタゾンを服用し、翌朝10時ころまでに採血してコルチゾールを測定します。診断のためにはデキサメタゾン抑制試験以外に、深夜のコルチゾールとACTH測定(夜11時ころに採血して測定する)、24時間分の尿を全てためて尿の中のコルチゾールを測定するなどの検査が必要で、これらの検査は入院で行います。当院ではデキサメタゾン抑制試験を外来で実施し、残りの検査を約2泊3日の入院で実施する場合と、すべての検査を入院で実施する場合があります。ホルモンの検査と並行して、原因の腫瘍(副腎、脳下垂体、それ以外)を探すための画像検査を行います。

そのほかクッシング症候群に関連して起こり得る合併症(骨密度の低下や血圧・血糖値の上昇、動脈硬化、心臓機能低下など)の検査を行うケースもあります。

クッシング症候群では、高血圧が原因となって脳卒中を引き起こしたり、糖尿病の合併症が悪化したり、骨粗鬆症によって骨折しやすくなったりする可能性があります。また、結核肺炎蜂窩織炎(ほうかしきえん)などの重症な感染症にかかりやすくなりますので早期発見・早期治療介入が望まれます。とはいえ、ご自身でクッシング症候群の症状に気付いて検査を受け、早期治療につなげることは難しいのが実情です。そのため、まずは健康診断で高血圧や糖尿病などの異常、あるいはX線検査での異常などを指摘されたら、放置せずにきちんと医療機関を受診いただきたいと思います。

受診について相談する
  • 国立国際医療研究センター病院 糖尿病内分泌代謝科診療科長、第二内分泌代謝科医長、内分泌・副腎腫瘍センター長

    田辺 晶代 先生

「メディカルノート受診相談サービス」とは、メディカルノートにご協力いただいている医師への受診をサポートするサービスです。
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。
  • 受診予約の代行は含まれません。
  • 希望される医師の受診及び記事どおりの治療を保証するものではありません。

    「クッシング症候群」を登録すると、新着の情報をお知らせします

    処理が完了できませんでした。時間を空けて再度お試しください

    本ページにおける情報は、医師本人の申告に基づいて掲載しております。内容については弊社においても可能な限り配慮しておりますが、最新の情報については公開情報等をご確認いただき、またご自身でお問い合わせいただきますようお願いします。

    なお、弊社はいかなる場合にも、掲載された情報の誤り、不正確等にもとづく損害に対して責任を負わないものとします。

    「受診について相談する」とは?

    まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
    現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。

    • お客様がご相談される疾患について、クリニック/診療所など他の医療機関をすでに受診されていることを前提とします。
    • 受診の際には原則、紹介状をご用意ください。
    実績のある医師をチェック

    クッシング症候群

    Icon unfold more