院長インタビュー

救急医療から先進的な治療まで地域住民の健康を幅広く支える大原綜合病院

救急医療から先進的な治療まで地域住民の健康を幅広く支える大原綜合病院
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]院長インタビュー

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福島県福島市にある一般財団法人大原記念財団 大原綜合病院(以下、大原綜合病院)は、急性期医療を担う地域医療支援病院です。2次救急病院であると同時に、専門医療機関として紹介患者さんの受け入れを行う同院の取り組みや地域での役割、今後の展望について、大原記念財団理事長兼統括院長である佐藤 勝彦(さとう かつひこ)先生に伺いました。

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大原綜合病院の前身となる大原医院は、1892年に開設されました。そこから数えて、2024年には創立132周年を迎えます。

開設以来、地域住民の方々からの要望を受けて医療機能を拡張し、1951年に大原綜合病院と改称。福島市の中心部という非常にアクセスのいい立地もあり、多くの患者さんに来院いただいてきました。

2018年には、旧病院の斜め向かいとなる福島市上町に、免震構造の新病棟を建築し移転。新病院棟建設を機に、大原医療センターにあった循環器内科、脳神経外科、心臓血管外科、腎臓内科などの急性期部門を新病院に移設して急性期医療を一つにまとめ、高度急性期を含む急性期医療を提供する総合病院としてリスタートしました。また、検診や人間ドックなどを行っていた大原健康クリニックを併合し、新たに健診予防センターとして院内に開設しました。

新病院は、病床数353床(個室109床)を有し、市内でも数の少ない病理診断科など28の診療科を構えています。さらに、総合救急センター、画像診断センター、手術センター、HCU、そして屋上のヘリポートが 1本の動線で結ばれるよう設計されているため、高度急性期医療や広域災害医療にも対応可能となっています。

2025年には、精神科医療を中心とする清水病院の老朽化に伴い、2018年から回復期医療や在宅医療支援を行っている大原医療センターへ統合移転を行う予定です。これによりさらに幅広い疾患や病状に対応できるよう心と体の両面からの診療ができる総合回復期医療の提供を目指しています。

消化器内科は内視鏡治療を得意分野としており、高画質電子内視鏡システムを備え、精度の高い内視鏡診断と治療を行っています。

実績としては、上部内視鏡が年間6,000件超、下部内視鏡は年間約2,300件(2023年度)です。早期胃がん、食道がん大腸がんなどに対しては内視鏡的粘膜下層剥離術ESDなどの低侵襲(体に負担が少ない)な内視鏡治療を積極的に施行し、ESDは年間約200件以上施行しています。また胆嚢、胆管、膵臓疾患に対する内視鏡膵胆管造影ERCP関連治療や超音波内視鏡による精密検査や治療も多数施行しています。

そのほか、潰瘍性大腸炎クローン病に対する専門的薬物治療や、あらゆる消化器がんに対する化学療法も多数実施しています。

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2024年1月、心筋梗塞(しんきんこうそく)大動脈瘤(だいどうみゃくりゅう)心臓弁膜症肺塞栓(はいそくせん)深部静脈血栓症といった循環器疾患に広く対応するため、循環器センターを立ち上げました。

当院ではこれまで、緊急を要する循環器治療については日本循環器学会認定専門医が担当してきました。しかし血管造影室が1室しかなかったため、1人の患者さんの治療中に、次の患者さんの受け入れを断らざるを得ない状況でした。そのため、循環器センターの設置に伴って血管造影室を増設して複数の患者さんへも対応できるようにしました。新たな血管造影室には同時に2方向から撮影することができるバイプレーンの血管造影検査装置も設置しており、従来のシングルプレーン装置と比較すると撮影時間が大幅に短縮されるほか、造影剤による患者さんへの負担軽減も期待できるようになりました。

当院の整形外科には外傷センターと脊椎センターがあり、外傷骨折脊椎脊髄(せきついせきずい)疾患を得意としています。

傷センターでは、地域の高齢化に伴って骨粗鬆症に伴う大腿骨近位部骨折が増加している状況に対応すべく、日本整形外科学会専門医が内科や麻酔科と連携して早期手術を行い、成果を挙げています。

脊椎センターでの脊椎手術においては、県内外から紹介で訪れる患者さんを数多く受け入れています。脊椎疾患治療では術後の疼痛(とうつう)や合併症を可能な限り抑える低侵襲治療を原則としていますが、2022年にはより精度の高い治療が行えるようO-armイメージングシステムを導入しました。

O-armイメージングシステムは、CTのような3D画像を手術中にリアルタイムで撮影し、脊椎インスツルメンテーション手術において術中ナビゲーションできる装置です。これまでの透視装置では確認しにくかったポイントを3D画像で確認しながら手術ができるので、手術適応の範囲が広がり、手術の精度も高められるほか、手術時間の短縮も可能になりました。

2024年6月には、泌尿器科で、前立腺肥大症などの治療で用いるレーザーメス「ホルミウムYAGレーザー」を導入しました。一般的な医療機関では出力60wのYAGレーザーが主流ですが、当院ではこれまでも100wの高出力機器を使用していました。しかし老朽化に伴い、今回さらに強力な120W出力の機器に更新しました。この機器は全国で3台目、東北では初の導入となっています。最新機種の導入により、前立腺肥大症や尿路結石の治療が、より低侵襲で迅速に行えるようになりました。こうした医療機器の導入によって、患者さんになるべく負担をかけずに治療を行うことを実現しています。

また、患者さんが当院を受診する際に、利便性を高めていただくことについても、さまざまな施策を検討中です。その1つが、2021年7月から導入した診療情報閲覧サービス「カルテコ」です。

カルテコは、受診した際の診療情報や健康診断の結果などを、患者さんがいつでも自分のスマホやパソコンから確認できるオンラインサービスです。他の医療機関を受診した際に、当院での処方内容や健診の結果などの診療情報を医師に提示することが容易にできます。骨粗鬆症の検査結果や、血圧などの測定値などを患者さん自身がいつでも確認できるので、日常生活での健康管理に役立ててもらえることでしょう。カルテコを導入している医療機関は、2024年9月現在では東北地方唯一となっています。

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当院では、2024年5月に大原ワクチンセンターを開設しました。東北地方の総合ワクチンセンターとしては初の設置となります。

センターでは新型コロナウイルスやインフルエンザのみならず、高齢者の肺炎球菌ワクチンや帯状疱疹ワクチン、女性のHPVワクチンなどの接種とともに、講演会などによる普及啓発活動にも力を注いでいます。

がんに対し手術や化学療法、放射線療法など集学的な治療を受ける患者さんでは抵抗力低下による感染症の合併が問題となります。予定どおりにがんに対する治療を完結できるよう、ワクチンによる感染症予防の計画を立てます。また海外に渡航される方には現地で流行している疾患に応じたワクチンの接種を行います。

当センターでは、地域の皆さんが予防接種を受けやすい環境を整えるとともに、ワクチンについて正しい知識の広報に努め、地域住民の方々の健康を支えていく所存です。

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福島市では、毎年8月に「福島わらじまつり」が開催されます。江戸時代から続く信夫三山暁まいりから生まれたイベントで、巨大なわらじを担いで練り歩くほか、福島市出身の作曲家・古関裕而原曲の「わらじ音頭」にあわせた「わらじおどり」などが行われています。

コロナ禍までは、財団の職員250名以上でわらじおどりに参加していました。2023年に新型コロナウイルス感染症の取り扱いが5類に変更になったことを機に、2024年には5年ぶりに参加。わらじまつりを盛り上げました。

わらじまつりへの参加は、地域住民の方々に大原グループに親しみを持ってもらうと同時に、職員のモチベーションの向上にもつながっています。東北地方の夏祭りを集めた”東北六魂祭”の1つでもある福島わらじまつりを盛り上げることで、地域の隆盛にも一役買うことができればと願っています。

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私は、2019年に理事長となって2024年現在も脊椎外科の医師として診察に当たっています。特に力を入れているのは、骨粗鬆症に対する知識の普及です。

高齢社会を迎えて、骨粗鬆症もメディアでよく取り上げられるようになりましたが、予防のため何をしたらいいか、日常生活で気をつけるべきことについて、知らない方も少なくありません。そういった方のために当院では、普段からできる運動療法や食事のポイントなどをアドバイスする骨粗鬆症教室を開催しています。2022年には骨粗鬆症教室の内容をまとめた本も出版しました。

また私自身、福島市医師会骨粗鬆症検診精度管理委員会の委員長も務めており、検診に携わる自治体、医師会、医療機関の3者が一体となって骨粗鬆症検診制度の改革などにも取り組んでいます。

そのほかにも当院では、地域住民の方々の健康意識や医療知識を高めるため、「大原けんこう講座」と称してさまざまなプロジェクトを行ってきました。福島県の地域性として、脳卒中心筋梗塞といった脳血管疾患で亡くなる方の割合が全国平均より多いため、改善策として減塩プロジェクトの発足や、腰痛を改善するための腰痛教室を開催など、慢性疾患の自己管理法を学んでもらう講座も開催しています。

大原記念財団の理念は、“人を愛し、病を究める”です。前身である大原医院の頃から、全ての患者さんと家族のために、常に新しい医療知識や機器を積極的に取り入れ、最善を尽くすことで信頼される病院を目指してきました。

2018年の病院移転を機に、同法人大原医療センターの急性期部門を当院に統合しました。大原綜合病院は急性期病院として専門医療や救急医療をさらに充実させ、大原医療センターは回復期医療に特化するという方針をとりました。そして法人内医療連携ケアシステムを構築し、一般病院としてはいち早くPatient Flow Management (PFM)を導入し、急性期の入院前から患者が回復期へ転院し、退院後の在宅や施設までの流れが円滑に行われるようにしました。これにより地域包括ケアシステムの構築に主導的に関わってきました。

また、精神科医療の担い手である清水病院は、単科病院であるため、こころと体を同時に診療できるリエゾン診療体制を整えるために、2025年に、大原医療センターへ移転・統合し、総合回復期病院としてリニューアルする予定です。

さらに、福島県は決して医療人材が豊かとはいえません。そのため当院では医師の卒後臨床研修や医療スタッフの教育にも力を入れてきました。

幸い当院は、医療DXを推進し、新しい医療技術や医療機器を積極的に取り入れていること、交通アクセスがいいことから、医療スタッフの研修先としても人気があります。その環境を活かして、将来の福島県の医療を担う優れた医療人を育成できればと願っています。それこそが、地域の皆さんの健康を支えるベストな道だと考えています。

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