きしつせいせいしんしょうがい

器質性精神障害

最終更新日:
2017年04月25日
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2017/04/25
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概要

器質性精神障害とは、外因性の精神障害の総称です。
精神疾患は、従来は神経症に代表される性格や環境からのストレスなど心理的原因によって生じる精神障害である心因性、脳に直接侵襲を及ぼす身体的病因による外因性、統合失調症双極性障害のような伝達物質の不均衡による内因性という3つの要因に分類されていました。この考え方は古典的な概念となってしまいましたが、精神疾患を理解するうえで重要な意味を持ちます。成立するうち、外因性に分類されるものの中で直接脳そのものを障害するものを器質性精神障害とよびます。

精神科疾患の操作的診断のため一般的に用いられるICD-10(International Classification of Diseases:国際疾病分類)のF0群、症状性を含む器質性精神障害の中には、F00からF03に分類されている認知症性疾患、F04に含まれる健忘症候群、F05に規定されているせん妄が含まれ、さらにF06の脳損傷、脳機能不全及びその他の身体疾患による他の精神障害、07に規定されている脳疾患、脳損傷および脳機能不全によるパーソナリティおよび行動の障害のように器質因により幻覚妄想や気分の変動などの、いわば内因性精神疾患に似た症状をきたす一群が含まれます。

詳しく見ると、F06の中には、F06.2で分類されている幻覚を含めた統合失調症様の症状を呈する一群、F06.3で気分障害と同じ臨床症状を呈する一群、F06.4で不安障害、F06.5で解離性障害の症状を呈する一群が記載され、F07には基本的には人格と行動の障害を呈する一群が含まれています。器質性精神障害に独特なものとしては、F06.6に規定されている器質性情緒不安定性障害、F07.1に規定されている脳炎後症候群、F07.2の脳震盪後症候群が挙げられます。

本項では便宜上、F00からF03に分類される認知症性疾患について述べ、他の病気については症状性精神病、術後精神病の項にて後述します
 

原因

認知症とは神経変性という特定の脳の神経細胞の障害や脳出血脳梗塞など、不可逆的な変化により、慢性的に進行する疾患群の総称ですが、本稿では比較的頻度の高い原因疾患となる4大認知症について概説します。

アルツハイマー病

認知症の原因となる半数以上はアルツハイマー病と言われています。神経変性により、徐々に認知機能障害が進行する疾患群の代表的なものであり、病初期から記憶障害を呈します。

血管性認知症

脳梗塞や脳出血といった脳血管障害に関連して出現する認知症の総称です。

レビー小体型認知症

病初期から中期にかけては記憶障害があまり目立たない点が大きな特徴です。

前頭側型認知症

前頭葉の変性が原因となり起こります。
 

症状

アルツハイマー病

特に、「いつ、どこで、何をしたか」という出来事の内容(エピソード記憶)の障害が、病初期から目立ちます。ものをどこに置いたか忘れてしまう、同じことを何度も聞き返すといった症状は、このエピソード記憶の障害に起因するものです。

また、日付の感覚があいまいになるといった見当識の障害や、進行すると、徐々に人やものの認識ができなくなる、日頃慣れている道がわからなくなるといった症状も出てくることもあります。

血管性認知症

脳血管による血流障害の部位や程度により、症状はさまざまです。脳深部の細い血管の梗塞(ラクナ梗塞)が多発すると、前頭葉への血流の供給不足により、実行機能障害が出現します。一方で、より太い血管の梗塞や出血などで損傷の範囲が広い場合は、視空間認識や言語機能の障害、人の顔が認識できないといった相貌失認、ものの使い方などがわからなくなる観念失行などの症状を呈することもあります。症状は脳の損傷部位や程度により様々です。

レビー小体型認知症

視覚認知の障害や、視空間認識の障害が見られ、幻視、認知機能の変動、パーキンソニズムが主症状として挙げられます。幻視は、動物や人など具体的でありありとしたものが特徴です。誰かがいる気配を感じるといった実態意識性という症状も呈することがあり、これらの症状からさまざまな妄想に発展することも多い病気です。

前頭側型認知症

病初期から段取りが悪くなるといった実行機能障害や、他人の感情や表情の理解する能力(社会的認知)の障害により共感性が欠如したりすることもあります。礼節が保たれず脱抑制的になる、同じ動作や行動を繰り返す常同行為などの症状を呈します。

また、側頭葉症状が目立つタイプでは、言葉の意味が理解できないといった意味記憶の障害により、ものの名前が思い出せない、使い方がわからなくなるといった症状が出現します。
 

検査・診断

認知症の診断にあたってはまず認知機能低下の有無をスクリーニングするため長谷川式認知症スケールなどを行います。長谷川式認知症スケールでは認知症のカットオフ値は定められていますが、点数が良好でも時間見当識や遅延再生で失点している場合はアルツハイマー病を疑います。

次に身体疾患による認知機能低下を除外するため甲状腺機能低下、ビタミン欠乏、電解質異常の除外のため血液検査、正常圧水頭症慢性硬膜下血腫、急性の脳血管障害の有無を頭部画像検査にて調べます。

頭部CT、MRIでは海馬を含めた側頭葉内側部の萎縮の評価を行い、さらに脳の糖代謝を計測するFDG-PET(Positron Emission Tomography:陽電子放出断層撮影)や脳血流SPECT(Single photon emission computed tomography:単一光子放射断層撮影)を用いる場合があります。
 

治療

現在有効性が確認されている薬剤ではアルツハイマー病に対するコリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン)があり、NMDA受容体拮抗薬であるメマンチンも広く使用されています。ドネペジルはアルツハイマー病以外にもレビー小体型認知症にも有効とされていますが、他の変性性認知症に対する有効な薬剤は2018年4月時点では存在しないのが現状です。

なお、血管性認知症に対する直接的な治療はないものの高血圧糖尿病の管理を行うこと、ニセルゴリンなどの脳循環改善薬で間接的に進行を予防することが有効とされています。

また、薬物療法にのみならず、生活習慣の改善やリハビリテーション、運動やの励行も認知機能の維持に有用とされています。介護保険を導入し、家族の介護負担を減らすことで患者と家族に穏やかな時間をもたらすことが治療上重要と考えられます。
 

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