インタビュー

緑内障の手術―手術方法から手術時間まで

緑内障の手術―手術方法から手術時間まで
相原 一 先生

東京大学大学院医学系研究科外科学専攻眼科学 教授

相原 一 先生

この記事の最終更新は2015年09月24日です。

緑内障の治療において、手術を行うのはどのような場合なのでしょうか。また、手術にはどのようなものがあるのでしょうか。緑内障の診療、研究ともに日本の第一人者である東京大学眼科学教授の相原一先生に、緑内障の手術についてお話をお聞きしました。

緑内障の手術は、点眼薬やレーザー治療(参照:「緑内障の治療―症状を悪化させない治療が必要」)が無効であったときに行います。緑内障の手術を行っても、視力や視野が回復するわけではありません。手術の目的は、眼圧を下げることにより緑内障がさらに進行してしまうのを防ぎ、失明を予防することです。また、手術を行っても視力や視野の障害が進行してしまうこともあります。

手術の方法は数種類あり、緑内障のタイプや進行の度合いなど、それぞれの眼の状態などを総合的に判断して決定します。緑内障の手術は大まかに「流出路再建術」と「ろ過手術」の2種類に分けられます。房水の流れを良くして眼圧を下げるのが手術の目的ですが、前者では房水を眼の中にある静脈に流し込み、後者では房水を眼の外に流し込みます。眼の外に流し込むため、後者のほうが強力に眼圧を下げていくことができます。

この手術においては、眼圧を概ね15前後まで下げることができます。原発閉塞隅角緑内障のほか、ステロイドによる緑内障発達緑内障に対してはこの手術が行われます。この手術は、さらに以下の2種に分類されます。

  • 隅角癒着解離術(ぐうかくゆちゃくかいりじゅつ)

原発閉塞隅角緑内障に対して行う手術です。この手術では狭くなった隅角を広くしていき、隅角が癒着している部分を剥(は)がしていきます。慢性化しているとき(地長期間かかってしまっているとき)には効果がないこともあります。

  • 線維柱帯切開術(せんいちゅうたいせっかいじゅつ)

詰まっている線維柱帯を切り開き、本来の流出路であるシュレム管に房水を流す手術です。「線維柱帯に間違いなく異常がある」というパターンの緑内障には効果がありますが、普通の開放隅角緑内障には効果がないこともあります。

  • 合併症

流出路再建術において、合併症は非常に稀です。出血により一時的に目が見えにくくなることはありますが、基本的には回復します。

  • 手術後の日常生活

特に制限はありません。

この手術においては、眼圧を概ね10前後まで下げることができます。房水を眼の外に流していく手術であり、効果は期待できるものの、眼圧が下がってしまうこともあります。また、外に流していくルートをつくっても、それが創傷治癒(傷が治る)過程でふさがってしまうこともあります。

  • 線維柱帯切除術(せんいちゅうたいせつじょじゅつ)

線維柱帯を一部分切除していきます。房水の流出路を外に作っていく手術です。現在行われているもっともメジャーな手術です。

  • 合併症

ろ過手術の場合は、流出路再建術に比較して合併症が多くなります。しかしほとんどの合併症は対処可能なものです。以下のような合併症があります。

  1. 一時的な眼圧の低下
  2. 眼圧の再上昇
  3. 感染症
  4. 白内障が進行する
  • 手術後の日常生活

目に水を入れることができないため、プールには入れません。しかし、私自身は現在、緑内障をきちんとコントロールしてかつ日常生活の質を保てるような手術を目指しています。

手術時間は基本的に1時間程度です。最近では技術も発展し、1時間かからずに多くなることもあります。また、麻酔は局所麻酔を用います。つまり眼だけに麻酔をするため、眠ることはありません。

緑内障の場合は、手術が終わったとしてもそれで治療が終わるわけではありません。手術をしても少しずつ進行はしていきます。完全に止めることはできないのです。緑内障は生涯にわたって通院が必要な病気であると考えてください。

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