口が開かない:医師が考える原因と対処法|症状辞典

口が開かない

受診の目安

夜間・休日を問わず受診

急ぎの受診、状況によっては救急車が必要です。
どうしても受診できない場合でも、翌朝には受診しましょう。

  • 強い打撲などきっかけがはっきりしており、強い痛みがある

診療時間内に受診

翌日〜近日中の受診を検討しましょう。

  • 痛みがあるとき
  • 熱感があるとき

場合によって受診を検討

気になる・困っている場合には受診を検討しましょう。

  • 短時間でよくなり、その後繰り返さない

口の開閉は下顎骨と側頭骨の一部によって構成される“顎関節”と、その周囲の筋肉によって行われています。

口は会話や飲食、あくびなど日常的に多くの開閉運動を繰り返しているため、“顎関節”とその周囲の筋肉には多くの負荷がかかっています。このため、“顎関節”周囲は何らかのトラブルを引き起こしやすく、特に“口が開かない”という症状は発症頻度が高い傾向にあります。

  • 口を開くと顎がカクカクなって痛み、口が開けられない
  • 虫歯が悪化して顔が腫れ、口が開かなくなった

これらの症状が見られる場合、どのような原因が考えられるでしょうか。

口の開閉をつかさどる“顎関節”は、人の体の中でも酷使されがちな関節です。このため、ダメージを受けやすくトラブルが起こりやすい部位でもあります。

しかし、なかには以下のような病気が原因で口が開かなくなることもあるので注意が必要です。

顎関節症

顎関節に炎症が生じて痛みを生じる病気で、関節が動きにくくなることが特徴です。

口が開けづらくなるだけでなく、関節を動かすとカクカクといった雑音を生じることも少なくありません。また、顎の痛みが放散して頭痛や耳痛を自覚したりすることもあります。

原因は顎の酷使や噛み癖、歯ぎしり、歯の食いしばりなどによる顎関節への物理的なダメージ、外傷、リウマチなどの関節疾患など多岐にわたります。

顎関節症
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顎骨骨髄炎・蜂窩織炎

口腔内の細菌感染が波及して顎骨の骨髄に炎症を引き起こす病気です。

歯茎の腫れや発赤、(うみ)の流出などを引き起こし、発熱や倦怠感(けんたいかん)などの全身症状が現れることも少なくありません。また、虫歯や歯周病が原因の場合には歯の破折や動揺を引き起こすこともあり、奥歯では炎症が歯茎から内部に進行することで顎運動が障害され、口が開かなくなることも多々あります。

糖尿病の人やステロイド内服中の人など免疫力が低下しがちな人はリスクが高いですが、健康な人でも発症します。

腫れや発赤、熱感、痛みを生じ、重症な場合には発熱などの全身症状が見られることもあります。

顎骨骨髄炎
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蜂窩織炎
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廃用症候群

寝たきりの高齢者などに多く見られる病気で、活動性が低下することで筋肉の萎縮(いしゅく)や関節の拘縮(こうしゅく)を引き起こします。長期間にわたって摂食困難な状況が続くと顎関節にも拘縮や筋肉の萎縮が生じるようになり、口を開けることができなくなります。

廃用症候群
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破傷風

破傷風(はしょうふう)とは、破傷風菌による毒素が原因でけいれんなどを引き起こす感染症です。

傷などから菌が入ると、3〜21日の潜伏期間の後に症状が現れ、重篤な場合には呼吸筋が麻痺することによって窒息死することもあります。破傷風の初期症状に口が開きにくくなるなどの開口障害や、食べ物を飲み込みにくくなるなどの嚥下(えんげ)困難が生じることがあります。

破傷風
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悪性腫瘍(口腔がん)

口腔がんとは口の中にできるがんを指し、舌がん、口腔底がん、歯肉がん頬粘膜がんなどさまざまな種類があります。

初期症状では痛みや出血がなく、“なかなか治らない口内炎があると思ったらがんだった”ということもあります。進行するとがんが深く広がることがあり、この場合には口が開けにくくなることがあるほか、言葉を話しにくい、食事を噛みにくいなどの症状が現れることがあります。

口腔がん
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“口が開かなくなる”という症状は、好ましくない生活習慣や病気など、さまざまな原因によって引き起こされます。随伴症状がない場合は軽く考えられがちですが、思わぬ病気が潜んでいる場合もあるので注意が必要です。

特に、顎関節に強い痛みや腫れを伴う場合、発熱や倦怠感などの全身症状がある場合、口腔内病変がある場合、口が開かずに飲食がままならない場合などはなるべく早めに病院を受診するようにしましょう。

受診に適した診療科は口腔外科・頭頸部外科や整形外科ですが、発熱などの全身症状が目立つ場合はかかりつけの内科などで相談するのも1つの方法です。また、受診の際にはいつから口が開きにくくなったのか、随伴する症状、現在罹患している病気や内服中の薬などを詳しく医師に伝えるようにしましょう。

頭頸部外科
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日常生活上の好ましくない習慣が顎関節に過度な負担をかけ、口が開きにくくなることがあります。原因となる主な習慣とそれぞれの対処法は以下のとおりです。

人は過度なストレスや緊張を感じると歯を食いしばったり、筋肉が硬く凝り固まったりすることがあります。このため、顎関節やその周囲の筋肉に過度な負担が生じて炎症が引き起こされ、口が開きにくくなることがあります。

ストレスや緊張を和らげるためには

日常生活からストレスや緊張を完全に取り除くことは困難ですが、自分に合ったストレス解消法などを身につけ、適度にストレスや緊張を解消して心にゆとりを持った生活を送るようにしましょう。

咀嚼(そしゃく)の際には、顎の関節運動が行われます。硬いものを食べると顎関節に過剰な負担がかかって痛みを生じるようになり、口が開かなくなることがあります。

顎関節に優しい食事とは

ある程度硬さのあるものを食べるのは、満腹中枢への刺激によるダイエット効果などを期待することができるため、柔らかい物ばかりを食べる必要はありません。しかし、噛むと顎がガクガクなるような硬いものの食べすぎは控えるようにしましょう。

咀嚼する際に左右どちらかにかたよる癖がある場合には、片方の顎にのみ過剰な負担がかかるため、炎症を引き起こすことがあります。炎症は片方の顎のみですが、口を開くと痛みを生じるため口が開けられなくなることもあります。

顎に負担をかけない噛み方とは

顎に過剰な負担をかけないようにするには、左右均等な力で咀嚼するように注意し、口の中に食べ物を入れすぎないようにしましょう。

日常生活上の習慣を改善しても症状が改善しない場合は、思わぬ病気が潜んでいる可能性があります。軽く考えずに、それぞれの症状に合った診療科を受診するようにしましょう。

原因の自己判断/自己診断は控え、早期の受診を検討しましょう。