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糖尿病になるとがんになりやすい?糖尿病とがんの関係性から治療、予防法まで
糖尿病とは、膵臓から分泌されるインスリンというホルモンの障害が生じ、通常よりも血糖値が高い状態が続く疾患です。また、糖尿病は血糖値の上昇だけでなく、腎症や網膜症、神経障害などの様々な合併症が現れ...
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糖尿病になるとがんになりやすい?糖尿病とがんの関係性から治療、予防法まで

公開日 2017 年 05 月 30 日 | 更新日 2017 年 05 月 30 日

糖尿病になるとがんになりやすい?糖尿病とがんの関係性から治療、予防法まで
橋本 尚武 先生

東京女子医科大学八千代医療センター 副院長  糖尿病内分泌代謝内科科長 教授

橋本 尚武 先生

糖尿病とは、膵臓から分泌されるインスリンというホルモンの障害が生じ、通常よりも血糖値が高い状態が続く疾患です。また、糖尿病は血糖値の上昇だけでなく、腎症や網膜症、神経障害などの様々な合併症が現れるケースも少なくありません。

そして、近年の研究では、糖尿病を過去に経験したことのある方、現在糖尿病である方は、糖尿病にかかったことのない方に比べて、がんを発症するリスクが、男性では約1.27倍、女性では約1.21倍高くなることがわかっています。

記事1の『糖尿病の原因と症状、合併症とは-トイレの回数が多い・口が渇く・水をよく飲む、当てはまったら要注意?』では、糖尿病の症状や原因、合併症についてご説明しました。今回は、引き続き、東京女子医科大学八千代医療センター副院長の橋本尚武先生に、糖尿病とがんの関連性について、原因から予防法までを中心にお話をうかがいました。

糖尿病を経験した、または現在糖尿病である患者さんは、がんになりやすい?

糖尿病を発症した経験のある(糖尿病既往)患者さんは、糖尿病になったことのない方に比べて、男性は約1.27倍、約女性は約1.21倍がんになる可能性が高くなるということが、国立がん研究センターの研究によりわかっています。

糖尿病患者のがん発症率
糖尿病既往患者さんのがんを発症するリスク

上の図は、糖尿病を一度も発症したことのない方を1とし、糖尿病を発症したこのある方(既往歴のある方)のがんになるリスクを、がん全体とがんの種類ごとに表したものです。がんの種類や性別により、リスクの高さは異なります。男性では肝がんが2.24倍で最も高く、女性は2.42倍で卵巣がんが最も高いという結果になっています。

また、実際にがんを発症してしまった方は2型糖尿病の患者が中心であり、1型糖尿病の方は少数であるというデータもあります。

糖尿病の種類については記事1『糖尿病の原因と症状、合併症とは-トイレの回数が多い・口が渇く・水をよく飲む、当てはまったら要注意?』をご参照ください。

糖尿病の患者さんががんのリスクが高い原因

?を頭に浮かべている人

糖尿病を患ったことのある患者さんが、どうしてがんになりやすいのかという原因は、まだはっきりと解明されていません。しかし、考えられる原因として下記のようなものがあります。

高インスリン血症、IGF-Ⅰ(インスリン様成長因子1)の増加

インスリンの働きが弱くなり十分に作用しない状態(インスリン抵抗性)を経過して糖尿病を発症した場合、その状態を補うために、高インスリン血症(インスリンを多量に排出させ、血液中のインスリンの量が多くなった状態)となります。

そして、高インスリン血症がIGF-Ⅰ*(インスリン様成長因子1)の増加、または、通常よりも強い機能の発揮を促進します。その結果、がんの腫瘍細胞の増加を亢進させてしまい、がんを発症するというメカニズムが考えられます。

*IGF-Ⅰとは、成長ホルモンから作られる物質であり、細胞の成長を活発にさせる働きがあるため、正常な細胞だけでなくがん細胞の増殖も促進してしまいます。

組織の酸化ストレス

高血糖により組織に酸化ストレス*が生じた場合、DNAに障害が起こるケースもあります。そして、DNAが修復されないまま成長すると、がん細胞になってしまうという原因も考えられます。

酸化ストレスとは、酸化反応によって生じる体に有害な作用のことです。

糖尿病の原因と同様の食生活と運動不足

糖尿病を発症する原因の1つとして、脂質の多い食生活が挙げられます。そして、糖尿病と同様にがんを発症しやすくする原因としても、脂質の多い食品の摂取が影響しています。そのため、糖尿病になる患者さんの食生活は、がんを発症しやすい食生活でもあるのです。また、運動不足でも同様のことがいえます。

糖尿病の患者さんが、がんを併発した場合の治療法における注意点

先生と患者さんが話し合っている画像

基本的に、糖尿病の患者さんであっても、その他の患者さんとがん治療の方法が異なるということはありません。しかし、糖尿病患者さんは血糖値が高いということから、治療の際に注意すべき点がいくつかあります。

化学療法での注意点

化学療法で使用する抗がん剤は、患者さんの血糖値を上げやすくする働きがあります。血糖値が上昇すると血液中の白血球のはたらきが鈍くなってしまうことに加え、抗がん剤は白血球を減少させる働きがあるため、もし抗がん剤の使用時に血糖値が上昇してしまっていると、感染症にかかるおそれがあります。

そのため、化学療法を行う場合は、その都度、血糖値の様子をみながら薬剤やインスリン注射を使用し、感染症予防を行います。

手術での注意点

患者さんの血糖値が高いと、手術した傷口から菌に感染する確率が高くなります。そのため、がんの手術を行う外科と糖尿病を診る内科が手を組み、血糖コントロールを行いながら、安全に手術が行える体制を整えます。

糖尿病は全身疾患のため、様々な科との連携が必須

糖尿病の患者さんががんの治療を行うには、上記の外科と内科のタッグのように、様々な科との連携が必要となります。糖尿病は、三大合併症である糖尿病腎症、糖尿病網膜症、糖尿病神経障害のほかにも、心筋梗塞や脳梗塞、歯周病から骨折まで、全身に合併症が現れます。

合併症をお持ちの患者さんの場合は、合併症の治療を担う科と、がん治療を行う科がコンタクトをとりながら、患者さんが安全にどちらの治療も受けられようにサポートしていきます。

東京女子医科大学八千代医療センターでは、診療科同士の垣根がなく、日ごろから様々な科の医師と、患者さんの病状を共有し連携しながら治療を行っています。そのため、糖尿病のがん患者さんでも、安全にがん治療を受けていただけます。

糖尿病の患者さんががんを併発しないための予防法

橋本尚武先生

糖尿病とがんの予防法には、共通点が多くあります。例えば、生活習慣として、禁煙や過度な飲酒、脂肪の多い食事の摂取は控え、繊維の多い食品を摂ることを心がけましょう。しかし、極端に繊維質のものばかり食することは効果的でないため、バランスの整った食事にしてください。

また、運動をすることも重要です。糖尿病の患者さんは、高齢の方が多いため、散歩など軽い運動だけでもかまいません。体を動かすことは糖尿病やがんの予防だけでなく、認知症予防などにも効果的です。

そして、現在糖尿病、または、過去に糖尿病を経験したことのある患者さんは、必ずがん検診をこまめに受診してください。特に女性は、会社勤めを辞めるなどして定期的に健康診断を受ける機会がなくなると、がん検診を受けることもなくなってしまい、がんを見落とす確率が高くなります。自主的に病院や地方自治体などが設けるがん検診に参加することが大切です。

 

糖尿病とがんの関係(橋本 尚武先生)の連載記事

全身疾患としての糖尿病において、合併症、併発症を含めた診療の早期発見、早期治療に心がけている。

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