院長インタビュー

多職種連携のチーム医療で地域の皆さんの生活の質を守る兵庫医科大学病院

多職種連携のチーム医療で地域の皆さんの生活の質を守る兵庫医科大学病院
阪上 雅史 先生

兵庫医科大学病院 病院長

阪上 雅史 先生

目次
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兵庫県西宮市に病院を構える兵庫医科大学病院は、1972年の開設以来、阪神地域の医療を守っています。同院は、1995年の阪神・淡路大震災の被害を乗り越え、地域の皆さんと共に発展してきました。現在、病気によって患者さんの生活の質が低下することがないように、急性期医療のほか、がんセンターにおける先進医療の提供にも力を入れています。

今回は、病院長の阪上雅史先生に、兵庫医科大学病院の診療体制の特徴や、多職種のスタッフによるチーム医療、働き方改革への取り組みなどについてお話を伺いました。

兵庫医科大学 外観
兵庫医科大学 外観

1972年に開院した当院は、特定機能病院(高度の医療の提供、高度の医療技術の開発や高度の医療に関する研修を実施する能力がある病院)でありながら、地域の皆さんにやさしい病院を目指して歩みを進めてきました。当院では地域の皆さんにさらに貢献するために、2013年4月に急性医療総合センターを開設。急性医療総合センターには、救命救急センターや集中治療センター、周産期センターなど超急性期医療に関する部門を1つの施設に集め、手術センターも併せて配置しました。これにより、緊急の対応が必要な患者さんや災害時に適切に医療を提供できる体制を整えることができました。

その後2016年には認知症疾患医療センターを設置しました。さらに2019年には難病診療連携拠点病院やがんゲノム医療拠点病院の認定を受け、2020年には地域がん診療連携拠点病院に指定されています。当院はこれらを通じて、高齢化に従って増えてきた病気に対して大学病院として期待される医療を提供できるようになりました。

新病棟

現在当院は新病院棟を建設しており、2026年春のオープンを予定しています。15階建て、約800床の病床を備えるこの新病棟は“Human Centered Hospital”をキャッチフレーズに、ひとが主役の未来型スマート病院となります。“ひと”は患者さん、ご家族、地域にお住まいの方、さらには当院の職員までを含んでいます。“スマート病院”が目指すのはIT、AIを使ったDXの活用による、より効率的な医療の提供です。
新たな設備や導線によって質の高い医療をより安全に提供することができることに加え、免震構造や止水対策を行うことにより災害拠点病院としての機能も充実します。ぜひ新病棟開設による当院のさらなる進化にご期待ください。

当院の急性医療総合センターは、重症患者さんに対する救急医療や集中医療にも対応する三次救急を担っています。同センターは、一般救急や熱傷センター、脳卒中センターなど急性期治療に関する部門を同じ建物内にそろえています。そのため、緊急の対応が必要な患者さんに対して、迅速かつ切れ目なく医療を提供する体制を取ることができます。

また災害拠点病院として、南海トラフ地震などの災害を想定した診療環境の整備にも努めています。この取り組みによって、地震や水害などの災害時にも救急患者さんを受け入れることができるように、病院設備を強化しています。

当院は2007年11月にがんセンターを設置し、2008年2月には厚生労働省から地域がん診療連携拠点病院に指定を受けました。また、現在は小児がん拠点病院にも指定され、よりいっそう大学病院の特徴を活かし、外科的治療や内科的治療にとどまらず、患者さんの心と体のサポートをする緩和ケアチームを含めた集学的治療に注力しています。その一環として、当院ではキャンサーボードと呼ばれる、がん専門の病院内カンファレンスを開催しています。このカンファレンスには、各診療科の医師だけでなく、看護師や薬剤師、放射線技師、ソーシャルワーカー、事務職など、多職種のスタッフが参加しています。

がん治療そのものによる痛みや苦しみを取り除くことだけでなく、入院や通院によって生じる負担も軽減したいと考えています。そこで、当院では外来化学療法室における外来での化学療法にも力を入れています。仕事や学校生活を送りながら通院で化学療法を受けられるように、多職種連携によるチーム医療と設備の充実で、これからもがん患者さんを支えてまいります。

当院では、2018年4月に厚生労働省よりがんゲノム医療連携病院に、続いて2019年9月にはがんゲノム医療拠点病院に指定されました。がんセンターで集約的ながん治療を行うとともに、がんゲノム医療にも取り組んでおります。当院のがんゲノム医療では、がん遺伝子パネル検査によって、一人ひとりの患者さんに効果の期待できる薬を調べることが可能です。

今後は、がんに対する個別化治療に力を注ぎ、がん患者さんの体と心の負担を少しでも軽減することができたらと願っています。

2019年12月時点では、泌尿器科、上部消化管外科、下部消化管外科、産科婦人科において手術支援ロボット“ダヴィンチ”による手術を保険適用で実施しています。各診療科において、ダヴィンチが保険適用となる病気は以下になります。

ダヴィンチ手術では、開腹手術に比べて切開創が小さいため、患者さんの体の痛みを減らし、手術後の早期回復が望めます。また代表的な低侵襲治療である腹腔鏡下手術に比べてもより精巧な手術が可能であり、合併症のリスクも大幅に減らすことが期待できます。当院では、患者さんの体の負担を軽減することが可能な低侵襲手術にこれからも力を注いでまいります。

当院には、多職種連携の18の医療チームを組織しています(2023年12月時点)。それぞれのチームでは、診療科や職種にとらわれることなく、専門的な知識を有するスタッフを集めて治療に取り組んでいます。その結果、多角的できめ細やかな医療を提供することを可能としています。

たとえば、認知症ケアチームでは、医師だけでなく、看護師や精神保健福祉士などが一緒になって、認知症に起因する睡眠障害うつ病などの行動および心理症状がみられる患者さんのケアを行っています。認知症ケアチームが心のケアに取り組むことで、病気の治療がスムーズに行えるようサポートできるようになります。また、入院患者さんに対する認知症ケアの状況を確認したり、患者さんやそのご家族からの相談に応じたりします。

18の医療チームでは、チーム力の向上にとどまらず、若手スタッフの教育や指導者の育成にも努め、病院全体のレベルアップを図っています。

当院は、地域の皆さんの生活の質に配慮した医療を提供している病院です。今後はさらに地域の皆さんの生活の質を維持、回復するための医療にも積極的に取り組みたいと考えています。

社会の高齢化とともに、健康な体と心を維持することが大切になるでしょう。たとえば年齢を重ねた方はどうしても目の病気を発症しやすくなりますが、当院では眼科専用の手術室を3室備えたアイセンターを2011年に設置し、緑内障をはじめ、緊急の網膜剥離などの手術も行っています。当院はこのような医療の提供を通じて、地域の皆さんが年齢を重ねてもQOL維持し続け、自分らしく体も心もすこやかに生活できるよう貢献してまいります。

ラウンジ
武庫川を臨む急性医療総合センターのラウンジ

2024年4月から始まる医師の働き方改革への取り組みに力を入れています。できるだけ残業を減らし、一人ひとりのスタッフの生産性を上げるように努めています。具体的には、従来は外来診療終了後に行っていた会議の時間を就業時間内に設定したり、会議の数を可能な限り少なくしたりしています。

今後は、どのようなライフステージのスタッフも働きやすい職場環境を整えたいと考えています。

当院では、臨床を重視した初期研修のプログラムも充実しており、初期研修の段階から多職種連携のチーム医療について学ぶことができます。それに加え、指導医による丁寧な指導を心掛けています。

また、初期研修医の皆さんには、医療安全に対する意識を持って医療に取り組むように指導しています。その指導のひとつとして、初期研修医の皆さんにもインシデントの発表をしてもらっています。若手医師の皆さんには、医療に携わっているとき、常に医療安全に対する意識を持ってほしいと願っています。

当院は大学病院であり、兵庫県に2つしかない特定機能病院として患者さんの治療を行いつつ、新しい医療の開発や臨床試験も積極的に行っています。しかし、敷居が高い病院ではありません。これからも地域の皆さんの生活の質を医療面から支えていき、常時頼っていただけるやさしい病院であり続けるために、多職種連携のチーム医療によって、患者さんの生活に配慮した安全で質の高い医療の提供に尽力してまいります。

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