院長インタビュー

整形外科分野で新たな可能性に挑む――村山医療センター

整形外科分野で新たな可能性に挑む――村山医療センター
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]院長インタビュー

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村山医療センターは東京都武蔵村山市にある骨・運動器疾患を中心に治療を行っている病院で、臨床研究にも注力しています。その評判を聞きつけ、日本国内だけでなく海外からも患者さんが訪れています。最近ではSNSやホームページを利用して専門である骨や運動器に関する情報発信も積極的に行っている同院について、病院長である谷戸 祥之(やと よしゆき)先生に伺いました。

先方提供

村山医療センターは1941年(昭和16年)に陸軍病院として開設され、結核の療養である国立村山療養所、国立療養所村山病院を経て、2004年に現在の名称となりました。

骨や運動器疾患、骨髄損傷の診療を開始したのは1965年のことです。その後1977年に国立病院の中でも骨・運動器疾患に注力する施設となり、多くの患者さんの治療を行ってきました。現在では脊椎側弯症(せきついそくわんしょう)腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)などの脊椎・脊髄疾患に対して高度な治療を行っています。治療実績に加えて、当センターは他施設との共同の臨床研究、多くの研修医の受け入れなどの教育にも積極的に取り組んでいます。

当院には、脊髄損傷(せきずいそんしょう)専門の病棟があります。日本国内には、脊髄損傷専門の病棟がある施設は3つしかありません(2024年8月現在)。ほかの2施設は北海道と九州にあるため、当院へは本州のさまざまな地域から患者さんがいらっしゃっています。

当院には脊椎・脊髄を専門とする医師が15名在籍しており、そのうち14名が日本整形外科学会認定の専門医であり、また7名が日本整形外科学会認定の脊椎脊髄病医、8名が日本脊椎脊髄病学会認定の脊椎脊髄外科指導医です。

下肢関節外科医は5名が常勤であり、年間300件以上の人工関節手術を行っています。

脊髄損傷専門病棟では約60名の患者さんが入院可能です。急性期の患者さんの初期治療から自立に向けてのリハビリテーション、ご自宅での生活へ向けた準備として家屋改造のアドバイスなど、総合的なサービスを提供しています。また、慢性期の方でも治療が必要な方は積極的に受け入れています。

ほかにも、骨折関節リウマチ、頚椎・腰椎の疾患の方が中心の整形外科病棟や脳卒中や頭部外傷、神経・筋疾患のリハビリの方が中心の回復期リハビリテーション病棟があり、一人ひとりの患者さんに合わせたオーダーメイドのプログラムを作成し、実践しています。

最近では、手術室で体の周囲にX線を回転させながら当てて検査を行う最新型のCTを導入しています。これによって、撮影範囲の広い脊椎全体や下肢なども従来に比べて短時間で撮影ができ、さらに解像度の高い画像の取得も可能になりました。

内科では、高齢の方を中心に健康の維持と疾患の予防を重視した診療を行っています。注力しているのは禁煙治療と、糖尿病脂質異常症高血圧症といった生活習慣病骨粗しょう症の管理です。患者さんには問診や診察を行い、必要に応じて各種検査を受けていただいた上で病気の背景と原因を説明し、一人ひとりに適した食事や運動などの生活習慣指導と最適な薬物療法を提供しています。

また、内科にはリウマチ性疾患に対する専門外来を設けており、日本リウマチ学会専門医が対応しています。リウマチでお困りの方はぜひご相談をいただければと思います。

外科では、鼠径ヘルニア治療に注力しており、体への負担が少ない低侵襲(ていしんしゅう)手術である腹腔鏡下手術の症例が豊富です。腹腔鏡下手術は、手術の精度と安全性を高めるとともに、術後の回復も早いという利点があるのが特徴です。当センターでは、鼠径ヘルニアのほかに、胃や大腸などの消化器科や外科の病気に対しても腹腔鏡下手術を用いています。

当院は、“骨・運動器疾患”の臨床研究施設として大学等と連携しながら新しい研究を行っています。近年とくに力を入れているのは慶応義塾大学との共同研究で、これは脊髄損傷に対するヒトiPS細胞由来神経幹細胞移植の臨床研究など、損傷後の神経機能を回復させる“脊髄再生”に関する研究になります。

コロナ禍で研究の進行に制限がかかり、当初の予定よりも研究に遅れが出ましたが、2024年現在はコロナ前の状態に戻っています。今後はこうした研究をより積極的に進め、患者さんの治療へ役立てていくことができるようにしたいと考えています。

近年、骨粗しょう症の患者さんが増えてきているという印象を持っています。骨粗しょう症は、家の中で静かに動いている分にはあまり症状は感じません。しかし、骨が脆くなることで骨折のリスクが上がり、ふとしたことがきっかけで転倒してしまうと大腿骨を骨折し、寝たきりとなってしまうことも少なくありません。

骨に違和感があれば、まずは受診することをおすすめします。たとえ何もなかったとしても、問題がないことを確認できれば安心できると思います。また少しでも早く病気を発見できれば、進行する前から治療を行うことができます。そういった意味で、うまく病院を使っていただきたいと考えています。

また、治療するだけではなく、その先の未来に希望を持ってもらうことも必要だと思っています。たとえば、脊髄を損傷した患者さんは将来がどうなるのか不安になり、絶望する方も少なくありません。そんな方に、病気を克服して活躍している人がいることを知ってほしいと思っています。

こうした思いから、2024年に院内で“第1回村山医療センター脊髄損傷を語る会”を開催しました。脊髄損傷から回復し、現在は前向きに生活している方々を講師として招き、15分ほどの講演をしてもらうというものです。“車を運転できるようになった”“家族ができ、子どもも生まれた”“勉強して弁護士になった”など、定期的に明るい話を聞いて患者さんに希望を持っていただけたらと考えています。

当センターはこれからも骨や運動器の病気を中心に治療や研究、人材育成を進めるとともに、骨粗しょう症の治療や健康維持を通じて地域の方々の求める医療を提供していきます。引き続きよろしくお願いいたします。

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