レビー小体型認知症サポートネットワーク(DLBSN)は、当事者や家族が専門家を交えて情報交換ができる場として運営されています。2008年に「家族を支える会」として発足しましたが、名称変更と組織改編を経て「レビー小体型認知症サポートネットワーク」(略称:DLBSN)に生まれ変わりました。2015年11月5日土曜日、DLBSNとして新たなスタートとなる全国交流会が、新横浜プリンスホテルで「第9回レビー小体型認知症研究会」と同時開催されました。今回はその全国交流会のようすをお伝えします。
レビー小体型認知症サポートネットワークの略称であるDLBSNは、レビー小体型認知症を意味するDLB(Dementia with Lewy Bodies: DLB)とサポートネットワークの頭文字をとったものです。「レビー小体型認知症家族を支える会」からの名称変更には、当事者を支え見守っている家族だけではなく、ご本人やDLBについて知りたいと思っている人たちとも情報を共有したいという願いが込められているといいます。
レビー小体型認知症の発見者である横浜市立大学名誉教授の小阪憲司先生を総顧問医として、全国の各エリアでは代表者と顧問医が中心となって運営されています。
2015年11月7日のDLBSN全国交流会は新横浜プリンスホテルで9:30から12:00まで開催され、その後に同じ会場で引き続き「第9回レビー小体型認知症研究会」が開催されるという運びになっていました。総顧問医である小阪憲司先生の挨拶、そしてこの日のために全国の各エリアから集まった代表と顧問医の医師が紹介された後、質問コーナー「先生、教えてください」が始まりました。
この質問コーナーでは、顧問医のほか協力医、推奨医、各エリアの代表やケア専門職の方々が登壇し、あらかじめ寄せられたご家族からの質問や、当日会場に来られた方からの質問に答えるという双方向の情報交換が行われました。
最初の質問では、DLB初期の父親が今後急変した時の対応、次回診察までの間何をすべきかといった質問と併せて、これから冬場に向かってインフルエンザや肺炎などで他の病院に入院した時、どうすれば適切な対応をしてもらえるかという不安が寄せられました。
この質問に答えた宮城エリアの顧問医・西尾医師からは、パーキンソン症状が少しあるだけで落ち着いているのであれば、あまり心配をし過ぎないように生活を、というアドバイスに加えて、別の内科疾患などで入院する際にはDLB特有のせん妄などの症状について、主治医にあらかじめ伝えておくことが大切であるとの回答がありました。
次の質問では、DLB以外にも持病が多く、現在認知症病棟にいる父親についての悩みが寄せられました。興奮が強くせん妄があるにもかかわらず、主治医からはホーム(施設)での生活をすすめられているという状況です。この悩みに答えた愛知エリアの眞鍋医師からは、まず精神科医でせん妄などの症状を収める治療を行ってからでなければ、ホームでの生活は難しいため、現在の主治医に対してもご家族からそのように伝えるべきであるとの意見が述べられました。認知症を扱う専門医の中でも、DLBに対する認識が十分浸透していないことがうかがえる事例です。
この後、東京から参加されたご家族の質問では、ご本人からの暴言や目にあまる行動に、娘さんやご家族が憔悴しきっておられるという深刻な悩みに対して、岡橋医師や東京エリア代表の長澤かほる氏から親身なアドバイスがありました。また、小阪憲司先生と出会って奥様を病院から退院させ、入所した施設で担当医との良好な関係を築いて薬を減らすことができたという男性の体験談では「お父さんが私の薬だね」という、患者さんご本人からの言葉が紹介されました。ご夫婦で非常に良い療養生活を送られ、ひょっとしてこのまま治るのではないかという希望さえ抱いているご主人に対し、西尾医師からは適切な薬を使うことの大切さも併せて伝えられました。
会場からの最後の質問では、運動症状のオン/オフ、覚醒状態のオン/オフが混在している患者さんへの対応について、さまざまな角度からのアドバイスがありました。症状の変動を記録して、ひとつひとつの症状にしっかりと治療を行うことの重要性や、そのためのチェックシートの入手方法など、患者さんのご家族にとって有用な情報が提供されました。この後、神奈川と東京からのご家族のメッセージ朗読やトークセッション、全国の各エリアでの活動状況などが報告され、有意義な情報交換の場はひとまず閉会となりました。
日本でも他に類を見ないこのネットワークがさらなる発展を遂げるとともに、ひとりでも多くの人がレビー小体型認知症に関心を持ち、認識を深めることが、ひいては患者さんご本人やご家族を社会全体で支えることにつながっていくのではないでしょうか。
医療法人社団彰耀会 メモリーケアクリニック湘南 理事長・院長、横浜市立大学医学部 臨床教授
医療法人社団彰耀会 メモリーケアクリニック湘南 理事長・院長、横浜市立大学医学部 臨床教授
日本精神神経学会 精神科専門医・精神科指導医
1996年横浜市立大学医学部卒業。2004年横浜市立大学大学院博士課程(精神医学専攻)修了。大学院在学中に東京都精神医学総合研究所(現東京都医学総合研究所)で神経病理学の研究を行い、2004年より2年間、米国ジャクソンビルのメイヨークリニックに研究留学。2006年医療法人積愛会 横浜舞岡病院を経て、2008年横浜南共済病院神経科部長に就任。2011年湘南いなほクリニック院長を経て、2022年4月より現職。湘南いなほクリニック在籍中は認知症の人の在宅医療を推進。日本認知症予防学会 神奈川県支部支部長、湘南健康大学代表、N-Pネットワーク研究会代表世話人、SHIGETAハウスプロジェクト副代表、一般社団法人日本音楽医療福祉協会副理事長、レビー小体型認知症研究会事務局長などを通じて、認知症に関する啓発活動・地域コミュニティの活性化に取り組んでいる。
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祖母の幻視について
1年程前から祖母に幻視が現れるようになりました。初めは草木が猫等の動物に見え、家族の誰かが確認しいないことを伝えると「そう、おかしいね」と言ってそれ以上は何も言わなかったのですが、一か月後には道路のポールが人間に見えるようになり、二か月後には一人だったものが複数人見えるようになりました。そのころから妄想のようなことも言うようになり家族に話して否定されるとむきになって正しいと言い張るようになりました。(例:本人は自宅にいるのに向かいの家の人の動きが見える、近視なのにめがねもかけずはっきりと100m先の物が見える、車の中で誰かが生活し子供が学校に行っている等)半年後には”隣人宅に誰かが侵入している”と隣家に電話をしたり、100m先にたい焼きが売っているからと買いに行き実際に行ったらなくなっていた、また自宅から200mほど離れた家で夜な夜な集会をやっているのはなぜか、などデイサービス(週2回)で職員さんや近所の方に話すなどし、周囲からちょっと最近おかしいのでは?と近所の方が教えてくださったこともあります。そして先月から幻視の人々が自宅の庭に現れるようになり寝泊りしており祖母にだんだん近くなってきているようで本人は怖がっています。また最近は被害を受けることが多くなり庭でいたずらをされているようです。見えるのは日中、本人が自宅に居る時のみで出先では見えません。またこの話をするときの祖母は人が変わったかのようです。 初めは目に問題があるのかと思い眼科に連れていきましたが年相応で特に異常なしだった為、内科で認知症のテスト(年相応で異常なし)とパッチを試しましたが効果なしでした。またMRIで小さな動脈瘤が見つかりましたが特に異常はなさそうとのことでした。 以上のことを踏まえて物忘れ外来に通っていますが精神科の先生曰く、認知症でも精神病でもまたレビー小体型認知症でもなさそうでわからない、と言われました。 今は精神科の先生のご指示通り祖母の話を否定も肯定もせず話題を変えて意識をそらし安心してもらうようにしていますが、本人は不安で怖い思いをしたままですし祖母の近くに住む母もどうしたらよいかわからずかなりストレスが溜まっており心配です。考えられる病気はありますでしょうか。また、何科を受診したらよいか等アドバイスを頂けたらと思います。 宜しくお願いします。
突然のボケ
今日夕方、実家の弟から母が出先で急に訳が分からなくなり帰れなくなり先方から電話があった。 話の途中で急にわからなくなり、誰と話しているか、自分がどこにいるかもわからなくなったようです。 私が県外で暮らしている事も忘れているとの事です。現在も状態変わらず。 以前、転んで頭を打った際にかかった病院に電話すると検査が明後日、診断は来週の予約しか取れないと言われたそうですが、すぐに病院に行かなくても良いのでしょうか?
認知症の薬について
認知症の薬についてお伺い致します。 検査等せずとも、親族の話を聞いただけで認知症の薬(アルツハイマー型➕レビーの混合型)を出すものなのでしょうか? 教えて下さい。
どんどん症状が悪化
認知症の症状がどんどん悪化していて心配です。治りますか?
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