肝硬変の原因としては、C型肝炎ウイルス・B型肝炎ウイルス・アルコールなど、さまざまなものを挙げることができます。
肝硬変はかつて、肝臓病の「なれの果て」であり、治療することが非常に困難な病気のひとつといわれてきました。しかし、実は近年、肝硬変も「治る」可能性が出てきました。肝硬変とは、一体どのような病気なのでしょうか。長年肝臓の診療をおこない、今も第一線で日々患者さんと向き合っておられる、湘南藤沢徳洲会病院の岩渕省吾先生にお話をお伺いしました。
肝硬変とは、様々な肝臓の病気(C型、B型肝炎・脂肪肝・アルコール性肝障害など)が長い経過をたどって進行した結果、肝臓に線維化(やけどの後の引き攣れのようなもの)が起こり、肝臓の正常な構造が寸断されるものです。(詳細は後述)。肝臓の表面は凹凸不整になり、肝臓全体としては小さく硬くなってしまい、その結果、正常な肝臓の機能を果たせないばかりか、腹部全体にかかわる血流異常が起こります。
肝硬変の硬い肝臓は基本的には元には戻らず(不可逆的といいます)、原因が取り除かれずに線維化が進行すると、最終的には「肝不全」という肝臓が全く機能しない状態におちいってしまいます。しかし、近年では肝硬変の診断も早期に行われ、治療も進歩した結果、予後も大きく変わってきました。
(参照:「肝硬変の治療―近年発展してきた治療とは?」)
ただ、同じ肝硬変でも、ごく軽いものから進行して悪化したものまで様々な種類がみられます。進行の度合いは一般に、肝機能がある程度保たれている「代償期」と、肝機能が低下し浮腫や腹水、黄疸傾向などが現れる「非代償期」に分けられます。
肝臓は身体中で最も大きな臓器であり(1.0~1.3Kg)、予備能力に優れている(多少のダメージを受けたとしても完全に機能が阻害されるわけではない)ため、肝機能が半分以下に落ちないと症状を表しません。それが「沈黙の臓器」とも呼ばれる所以です。したがって代償期では自覚症状はほとんどありません。ただし、安静時にあちこちの筋肉がつる、または手のひらが赤いなどの症状がみられた場合、これらは肝硬変の徴候である場合があります。
一方、非代償期になると様々な症状・合併症が出てきます。また、肝硬変になるとその後肝臓がんが発生し易くなり、肝硬変の死因の半数以上が肝臓がんの合併によるとも言われており、注意が必要です。
(参照:「肝硬変の症状とは―さまざまな症状と合併症について」)
わが国において、肝硬変の80%近くが肝炎ウイルスを原因とするものです。内訳は、約65%がC型肝炎ウイルス、約15%がB型肝炎ウイルスとなっています。C型肝炎ウイルス(HCV)が発見される1989年以前は、肝硬変の原因の1/3以上はアルコールと考えられていました。しかしHCV感染の実態が明らかになるにつれ、お酒が原因と思われた患者さんの半数以上にHCVがみつかり、肝硬変進行にはC型肝炎が関与していることがわかりました。現在では純粋にアルコ-ルのみを原因とする肝硬変は全体の10~15%程度とされています。
さらに、肝臓がんが発生する患者さんの90%以上が肝炎ウイルスに感染しており、わが国の肝臓病には肝炎ウイルスが深く関与していることがわかります。ちなみに欧米では、肝硬変の原因としては未だにアルコールが最も多く、この事実はわが国が先進国筆頭の肝炎ウイルス汚染国であることを物語っています。
その他残りの10%の原因として、代謝性、自己免疫性肝炎、胆汁うっ滞性、うっ血性などが挙げられますが、なかでも最近注目されているのは、肥満や糖尿病の患者さんに合併しやすい、アルコールを飲まなくても発症する脂肪肝(非アルコール性脂肪性肝炎:NASH)です。
上記のように、肝硬変に進行するにはさまざまな原因があります。
肝硬変にならないようにするには、まずは自分の肝臓に異常がないかを知ることです。肝臓病の症状はなかなか現れづらいのが特徴であり(参照:「肝硬変の症状とは―さまざまな症状と合併症について」)、最低でも血液検査をしないと肝臓の状態は分かりません。そのため、成人検診でも良いので、最低年1回の血液検査を受けるべきでしょうし、肝炎ウイルスの検査を行ったことのない方はチェックした方が良いでしょう。さらにお酒を多く飲まれる方や糖尿病、脂肪肝、肝炎ウイルスキャリアなど、肝臓病のリスクがある方は、血液検査ばかりでなく超音波検査など画像診断を受けるべきでしょう。
古くから肝臓病にはシジミが良いといわれてきました。シジミに含まれる「オルニチン」という成分はもともと肝臓でアンモニアの代謝に関わり、解毒作用を助ける働きをする成分です。ですからオルニチン自体は肝硬変の患者さんの解毒能改善に有効かもしれません。
しかし、シジミには鉄分が多く含まれています。肝臓が悪くなると鉄が肝臓に貯まりやすくなり、この鉄が肝機能に悪影響を及ぼすことが知られるようになってきました。今では慢性肝炎や肝硬変の治療に、献血の要領で血を抜き鉄分を減らす方法(「瀉血」と呼ばれます)が行われています。瀉血によって血液中からフェリチンという鉄成分が減少すると、肝炎の数値が目に見えて良くなる患者さんも沢山います。
本来ならば人体に必要不可欠な鉄分ですが、肝硬変症の場合は肝臓に過剰な負担をかけることになり、悪影響を与えることにもなります。こうした理由から、シジミを含め貝類や海藻など鉄分の多い食材の摂りすぎは、肝臓病の方にとって良くありません。ただし、貧血の方は別です。貧血の場合は鉄の摂取を控えるとより貧血がひどくなる恐れがあるからです。
これも肝臓病に関する誤解の代表的なものです。このような認識をもつ医師はもはや少なくなったはずですが、以前には、肝臓病には安静第一と言われてきました。しかし今では、これが大きな誤解であったことが判ってきたのです。肝臓病に安静が必要なケースは、急性肝炎の初期や肝硬変の非代償期など、一部のケースのみです。慢性肝炎であり肝炎の数値が上がっている患者さんであっても特に安静は必要ありませんし、肝硬変になってしまった患者さんでも、むしろリハビリなどで運動を心がけたほうが良いといわれます。
この理由は、肝臓病が進行すると筋肉が肝臓の代謝機能の一部を肩代わりするためです。かつては医師が安静第一を勧めるあまり、かえって筋肉量の低下や心肺機能の低下をきたし、倦怠感の増強や生活の質の低下を招いていた可能性があります。繰り返しとなりますが、「肝臓病には安静が大切」という考えはまったくの誤りなのです。
湘南藤沢徳洲会病院 肝胆膵消化器病センター センター長
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