DOCTOR’S
STORIES
よりよい医療を追求すべく、世界にも視野を広げていく秋山 純一先生のストーリー
私が医師を目指し始めたのは、高校3年生の時です。それまでは、大学の英語を教えていた父と祖父の影響や、高校時代のアメリカ留学の経験から、「将来は自分も英語を専門とした仕事をするのだろう」と何となく考えていました。
そんなふうに考えているとき、父から「これからの時代、国際交流がもっと盛んになっていくだろう。だから、英語を専門にするのではなく、英語を使いながらほかに専門を持ったほうがよいのではないか。」とアドバイスをもらいました。また留学中、アメリカの家庭で生活していたときに偶然周りに医師が多くいた環境だったこともあり、「ならば医師を目指してみようかな」と思ったのが始まりです。
医師として国際的な活動をできればという思いもあったことから、大学卒業後は、当時から国際交流が盛んだった国立国際医療研究センターに入職しました。それ以来、2年間の留学を除き、この病院で医師をしています。
たくさんの患者さんと関わりたいという思いから内科に進みたいと思っていましたが、具体的な診療科については決めかねていました。そんななか、消化器内科に進むきっかけとなったのが、2人の先生との出会いでした。
1人は当時の消化器内科の部長で、後に病院長になられた故・
また梅田先生の後に、消化器内科の部長に就任された
*24時間pHモニタリング検査:逆流性食道炎の病態を詳しく調べるために行うもので、食道や胃のpHを24時間連続で記録することができる検査。
こうした恩師のすすめもあり、2010年に米国のスタンフォード大学へ2年間の留学をしました。そこで出会ったのが留学先の研究室のボスであり食道疾患の専門家のDr. Triadafilopoulosです。
消化器内科は内視鏡を使って検査や治療を行うことが多いですが、実はそれだけではなく、内視鏡では見えないような隠れた原因などを解明する、病態生理学*からのアプローチも非常に重要です。先に述べた24時間pHモニタリング検査も、まさに病態生理学からのアプローチによる検査です。
日本は内視鏡検査・治療においては世界をリードしている一方で、病態生理学からアプローチする診療は、世界に対して遅れをとっていました。Dr. Triadafilopoulosは米国の著名な内視鏡学会雑誌の編集者であると同時に、食道機能検査にも非常に詳しい先生で、留学中にたくさんのことを教えていただきました。Dr. Triadafilopoulosのもとで内視鏡診療とともに食道機能に関しての最新の知識をアップデートでき、非常に得るものの多い2年間になりました。
*病態生理学:生体の正常機能の破綻により何らかの症状や病気が引き起こされる原因や経過を理解するための学問
私が大切にしていることの1つは、EBM(evidence-based medicine)の実践です。EBMは日本語にすると“根拠に基づく医療”のことで、これまでに得られた研究結果(科学的な根拠)を基に、よりよい医療を患者さんに提供しようとするものです。EBMの実践のために、日本だけでなく世界の状況にも目を光らせて、常に最新の知識や技術をアップデートしていくことを意識しています。
一方で、患者さん一人ひとりによって抱える悩み、取り巻く状況といった社会的背景が違うため、EBMに基づく医療だけが、必ずしも患者さんにとって適切とは限らない場合があります。そのため、患者さんを診るときには医師と患者ではなく、“人と人”という目線で、目の前の患者さんと対話することをとても大事にしています。こうして患者さん特有の状況を理解することで、その患者さんにとってのよい医療に結びつけることができると思っています。
当然全ての治療が100%うまくいくわけではありませんが、こうした診療を心がけた結果、これまでなかなか治療がうまくいかなかった患者さんの症状を取り除くことができたときには、私も本当に嬉しくなります。
「先生のおかげで、楽になりました」と、患者さんに笑顔で言っていただいたときは、医師をやっていてよかったな、と心から思う瞬間です。
医師になった最初のきっかけが、「英語を使って専門的な仕事をしていきたい」という思いだったこともあり、今後も世界に目を向けて、活動の幅を広げることを心がけています。積極的に海外の学会に参加したり、海外の先生方と交流を深めたりすることで、常に新しい情報や知識を吸収し、患者さんへのよりよい医療の提供につなげたいと思っています。
最近では、食道機能検査の1つである食道内圧検査の国際ワーキンググループの一員として、新しい診断基準の改訂にも携わりました。
また、厚生労働省から依頼を受けて、10年ほど前からICD-11*への改訂に向けたWHO(世界保健機関)の会議にも参加しています。診療に限らず、幅広いフィールドで医療に携わっていくこともこれからの目標です。
*ICD:世界における疾病や傷害、死因の統計分類である国際疾病分類のこと。WHOによって作成されている。2003年に第10版であるICD-10に改訂され、現在は第11版となるICD-11への改訂作業が進められている。
目の前の患者さんにとって適切な診療は何かを慎重に見定め、実践していくこと。これが、医師として何よりも大切なことだと思っています。しかし、このためにはチーム全体の力が必要です。当院の消化器内科には、多様な個性と才能を持った多くの先生たちが集まってきてくれています。これからも、それぞれの先生が持つ個性を生かして、活気のあるチームに成長させていくことで、患者さんへのよい医療を提供していければと思っています。
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国立国際医療研究センター病院
国立国際医療研究センター病院 国際感染症センター センター長、AMR臨床リファレンスセンター センター長
大曲 貴夫 先生
国立国際医療研究センター病院 外科
合田 良政 先生
国立国際医療研究センター病院 産婦人科 診療科長
大石 元 先生
国立国際医療研究センター病院 呼吸器内科診療科長 第一呼吸器内科医長
放生 雅章 先生
国立国際医療研究センター 呼吸器内科
高崎 仁 先生
国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院 元副院長・元脳卒中センター長・非常勤、順天堂大学大学院 医学研究科客員教授
原 徹男 先生
国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院 糖尿病内分泌代謝科 非常勤
梶尾 裕 先生
国立国際医療研究センター病院 食道胃外科 医長
山田 和彦 先生
国立国際医療研究センター病院 外科 鏡視下領域手術外科医長
野原 京子 先生
国立国際医療研究センター病院 整形外科 診療科長
桂川 陽三 先生
国立国際医療研究センター病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 診療科長、耳鼻咽喉科・頭頸部外科 医長、音声・嚥下センター長
二藤 隆春 先生
国立国際医療研究センター 心臓血管外科 元科長・非常勤、北里大学医学部 診療准教授
宝来 哲也 先生
国立研究開発法人 国立国際医療研究センター 理事長、東京大学 名誉教授
國土 典宏 先生
国立国際医療研究センター病院 がん総合診療センター 副センター長、乳腺・腫瘍内科 医長
清水 千佳子 先生
国立国際医療研究センター病院 乳腺内分泌外科 医長・診療科長
北川 大 先生
一般社団法人新宿医師会区民健康センター 所長、山王病院(東京都) 産婦人科、国立国際医療研究センター 産婦人科
箕浦 茂樹 先生
国立国際医療研究センター病院 眼科診療科長
永原 幸 先生
国立国際医療研究センター病院 第二婦人科 医長
冨尾 賢介 先生
国立国際医療研究センター病院 肝胆膵外科 診療科長
稲垣 冬樹 先生
国立国際医療研究センター病院 糖尿病内分泌代謝科 医師
小谷 紀子 先生
国立国際医療研究センター病院 腎臓内科 診療科長
高野 秀樹 先生
国立国際医療研究センター病院 理事長特任補佐/循環器内科 科長
廣井 透雄 先生
国立国際医療研究センター病院 腎臓内科 血液浄化療法室統括医
片桐 大輔 先生
国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院 小児科 医員
七野 浩之 先生
国立国際医療研究センター病院 膵島移植診療科 診療科長、膵島移植センター センター長、国立国際医療研究センター研究所 膵島移植企業連携プロジェクト プロジェクト長
霜田 雅之 先生
国立国際医療研究センター病院 糖尿病内分泌代謝科診療科長、第二内分泌代謝科医長、内分泌・副腎腫瘍センター長
田辺 晶代 先生
国立国際医療研究センター病院 肝胆膵外科
三原 史規 先生
国立国際医療研究センター病院 形成外科・診療科長 国際リンパ浮腫センター・センター長、リンパ超微小外科臨床修練プログラムディレクター
山本 匠 先生
国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院 歯科・口腔外科 診療科長、高度先進医療診療科 診療科長、臨床研究センター 産学連携推進部 医工連携室長、高度先進医療診療科 細胞調整管理室長
丸岡 豊 先生
国立国際医療研究センター病院 食道胃外科 医師
榎本 直記 先生
国立国際医療研究センター 脳神経内科 科長
新井 憲俊 先生
国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院 産婦人科 産科医長
定月 みゆき 先生
国立国際医療研究センター病院 心臓血管外科 診療科長
井上 信幸 先生
国立国際医療研究センター病院 消化器内科 診療科長
山本 夏代 先生
国立国際医療研究センター病院 脊椎外科 科長
松林 嘉孝 先生
国立国際医療研究センター 国際医療協力局 人材開発部研修課
井上 信明 先生
国立国際医療研究センター病院 病院長/泌尿器科 診療科長/第一泌尿器科 医長
宮嵜 英世 先生
国立国際医療研究センター病院 がんゲノム科 診療科長、第三呼吸器内科 医長、外来治療センター 医長、がん総合診療センター 副センター長
軒原 浩 先生
国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院 精神科科長 メンタルヘルスセンター長
加藤 温 先生
国立国際医療研究センター病院
服部 貢士 先生
国立国際医療研究センター病院 がん総合内科診療科長/乳腺・腫瘍内科
下村 昭彦 先生
国立国際医療研究センター病院 第四呼吸器内科医長
西村 直樹 先生
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