院長インタビュー

済生会横浜市東部病院の地域への貢献――総合病院として救急医療やがん治療に取り組む

済生会横浜市東部病院の地域への貢献――総合病院として救急医療やがん治療に取り組む
三角 隆彦 先生

済生会横浜市東部病院 院長

三角 隆彦 先生

目次
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神奈川県の横浜市鶴見区に位置する済生会横浜市東部病院は、主に横浜市の東部地域の医療を担うために誕生した地域中核病院です。同院は、総合病院として地域住民の皆さんへ質の高い医療サービスを提供できるよう尽力してきました。中でも救急医療やがん治療に積極的に取り組んでいる点が大きな特徴です。救命救急センターでは、重症外傷から小児科や精神科の領域まで幅広く、治療に緊急を要する患者さんを24時間365日体制で受け入れています。また、がん治療は最新の医療機器や治療法を取り入れることに注力し、多様な治療の選択肢に対応できるよう努めています。

総合病院として地域を支える済生会横浜市東部病院の三角 隆彦(みすみ たかひこ)院長に、同院の取り組みや地域住民の皆さんへの思いをお話いただきました。

私たち済生会横浜市東部病院は、神奈川県横浜市東部地域の地域中核病院として誕生しました。そこには、大きな医療機関がある横浜市の中心部と比べて、周辺地域に医療機関が少ないという背景がありました。そこで、横浜市が周辺地域の医療体制を整備するためにつくったのが地域中核病院整備計画です。その計画に基づき、主に横浜市の東部地域の救急医療や先進医療を担う役割を果たすため誕生した医療機関が、済生会横浜市東部病院です。

外観
写真提供:済生会横浜市東部病院

当院は、日本全国で多くの福祉事業を手がける社会福祉法人 恩賜財団 済生会の病院の1つです。周辺には済生会が手がける福祉施設がいくつかありますが、病院を母体に医療・保健・福祉が連携した総合的なサービスの提供を目指しています。さらに、“医療で地域の生(いのち)を守る”という済生会の目標に基づき、最新の医療機器と高度な医療技術で地域住民の皆さんに質の高い医療を提供できるよう、日々取り組んでいます。

済生会横浜市東部病院は救命救急センターを設け、24時間365日、治療に緊急を要する重症の患者さんを受け入れており、横浜市内の3次救急医療機関でもあります。また、市内に2か所ある横浜市重症外傷センターの1つとして、大量出血などを起こした重症の患者さんを救うため、24 時間体制で外傷診療および手術に対応可能な医師が常駐するなど、緊急性が高く重篤な患者さんに対応できるよう体制を整えています。

2022年度 (2022年04/01~2023/03/31)には、救急車による搬送を7,805件受け入れており、さらに救急車の搬送のみならず、自ら救命救急センターに来院される患者さんも受け入れています。休日や夜中であっても対応しておりますので、周辺地域のお子さんをお持ちのご家庭や高齢の方にとっても、安心の体制が整っているのではないでしょうか。

写真提供:済生会横浜市東部病院

当院では、常に15名ほどの医師が夜間の当直にあたっています(2023年12月時点)。内科や外科の医師のみならず、小児科、新生児科、産婦人科、集中治療科、循環器内科、脳神経外科のそれぞれの診療科の医師が当直にあたり、幅広い患者さんに対応しています。さらに、精神科の医師もおり、主に身体合併症を有する患者さんの急変に対応できるよう体制を整備しています。

当院は済生会神奈川県病院の急性期医療の機能を引き継いだ病院でもあります。神奈川県病院の交通救急センターは、日本医科大学や大阪大学と共に日本の救命医学のルーツとも言われており、蓄積されていた外傷診療技術も同時に引き継ぎました。近年、救急の患者さんは心筋梗塞(しんきんこうそく)などの内因性による病気が多いのですが、交通事故が多かった昔は、外傷による患者さんが非常に多かったのです。その当時のノウハウを受け継ぐことで、当院の救命救急センターでは、多発外傷や脳外科などにも対応できる外傷診療技術が蓄積されているというわけです。そのような経緯もあり、現在でも交通事故や多発外傷による重症外傷の患者さんも積極的に受け入れています。

ハイブリッドERとは、CT検査や超音波検査などの検査と、手術やカテーテル治療などを同時に行うことができる部屋です。通常、これらは別々にしか行えません。

ハイブリッドERを設置したことにより、たとえばCTで撮影をしながら専門の医師が読影し、さらに患者さんを移動させずにその場で必要な処置が可能となります。これにより、治療までの時間が大きく短縮され、救命率の向上も期待できます。

写真提供:済生会横浜市東部病院

私たちの病院は、総合病院として全ての診療科に力を入れており、質の高い医療を提供できるよう病院全体で取り組んでいます。中でも、精神病棟や小児病棟を備えていることは、地域医療に貢献するうえでも重要な役割を果たしています。お話ししたように、小児科や精神科は夜間の救急にも対応しており、毎日当直をしています。精神科は、身体合併症を持つ患者さんを受け入れることができる精神病棟を有しており、周辺の患者さんを広く受け入れています。

当院の特徴として、小児肝臓消化器科の存在が挙げられます。小児科において、肝臓・消化器を専門的に診ることのできる施設は珍しく、それほど数は多くありません。

当院には、日本肝臓学会認定の肝臓専門医の資格や日本小児栄養消化器肝臓学会認定医の資格を有する小児科の医師をはじめ、消化器領域の資格を保持する医師が参集し、専門的な検査や治療を行っています。また、医師のみならずチャイルド・ライフ・スペシャリスト*や保育士、管理栄養士など多職種が診療に参加しており、患者さんやご家族が安心して治療を受けられるように努めています。

*チャイルド・ライフ・スペシャリスト:Association of Child Life Professionals (ACLP)より認定された資格保持者のこと。

当院の循環器内科には、特に才能あふれる医師がそろっていると思います。もともと、この循環器内科は2名の医師が立ち上げた診療科ですが、彼らを慕って日本全国から医師が集まり、組織を作っていったという経緯があります。そのような歴史もあり、現在でも才能あふれる医師が切磋琢磨しながら、最新の医療設備とともによりよい医療サービスを提供できるよう尽力しています。

当院の循環器内科には、カテーテル検査や治療を行うカテーテル治療専門チームがいます。狭心症不整脈に対するカテーテル治療はもちろん、心臓血管外科とともにハートチームを立ち上げており、大動脈弁狭窄症(だいどうみゃくべんきょうさくしょう)に対する経カテーテル的大動脈弁植え込み術(TAVI)や、重症心不全に合併する僧帽弁閉鎖不全症に対して経皮的僧帽弁クリップ術(MitraClip)も行っています。

また、他科との協力のもと、週に1回フットケア外来を開いています。これは、糖尿病や人工透析患者さんの増加に伴い増えている末梢血管疾患(まっしょうけっかんしっかん)に対し、診察や治療を行うことを目的としています。

当院では、がんの治療にも力を入れています。がんの治療にはさまざまな選択肢がありますが、特にがんの中でも比較的急性期の治療に力を入れています。

がんの急性期治療には多くの種類がありますが、ここでは、前立腺がんを例にお話します。前立腺がんの治療には、小線源治療と呼ばれる放射線治療やロボット型放射線装置であるサイバーナイフ、リニアックによる治療などがあります。手術にあたっても、腹腔鏡(ふくくうきょう)を用いるか、手術支援ロボットであるダビンチを使用するか、開腹で実施するか選択肢は多様です。さらに、化学療法も最新のものが適応される例が増えてきています。当院の泌尿器科では、患者さん一人ひとりに合わせた治療を行えるよう、こうした選択肢を幅広くそろえています。

サイバーナイフ
高精度の定位放射線治療装置であるサイバーナイフ(写真提供:済生会横浜市東部病院)

当院は、手術支援ロボットであるダビンチや心臓弁膜症の治療法であるTAVIなど、常に新しい医療機器や技術の導入を目指しています。今後も、このように最新の医療を取り入れる姿勢を変えるつもりはありません。それは、常に先端の医療を地域住民の皆さんへ提供したいと考えているからです。患者さんのためになることであれば、今後も積極的に新しい医療機器や技術を取り入れていきます。

当院では、2012年に横浜市で初となるロボット支援手術を開始し、10年以上の実績があります。2018年にはロボット手術センターを開設し、現在2台のダビンチが稼働しています(2023年12月時点)。センター化したことで、手術までの待機期間を可能な限り短くすることもでき、患者さんにとっても治療を受けやすい環境となっているのではないかと思います。

また、当院のロボット手術の対象疾患は幅広く、前立腺がん膀胱がんをはじめ、胃がん直腸がん肺がん子宮体がん、肝臓がんなどにも対応しています。さらに、骨盤臓器脱といった良性疾患も対象となっています。

さらに質の高い医療を提供するための取り組みとして、患者支援センター、通称“TOPS(Tobu Hospital Patient Support Center)”を開設しています。こちらでは、手術などを控え入院を予定している患者さんに対して、事前に身体測定や口腔(こうくう)内の状態チェック、現在服用している薬についての確認などを多職種が集まって行います。術前からこうした管理を行うことで、術後の合併症を防ぐことにつながるなど、早期の回復を目指すことも可能となります。また、術前の経口補水療法チームや術後の疼痛(とうつう)管理チームもおり、術前から術後まで患者さんに寄り添いサポートを行っています。

写真提供:済生会横浜市東部病院
横浜市は、今後も人口が増える傾向にあることに加え、高齢化も進行していきます。それに伴い、医療のニーズは今後ますます高まっていくでしょう。日本はこれまで病院完結型の医療が主流でしたが、国が推進しているように、今後は地域完結型に変革しようしています。それは横浜市も例外ではありません。今後はよりいっそう、横浜市全体で医療における役割分担と連携が進んでいくでしょう。お話したように、当院は横浜市の東部地域の医療を担うために誕生した地域中核病院です。医療により地域に貢献するという使命を忘れず、この地域とともに、よりよい医療サービスを提供できるよう今後も取り組んでいきます。

また、職員の皆さんが生き生きと、働きやすい環境で働けるよう環境を整えることも重要だと考えています。2024年より働き方改革が実施されますが、当院では医師のフレキシブルタイム制を取り入れるなど、より効率よく働けるよう病院全体でしっかりと対応していきます。

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  • 済生会横浜市東部病院 院長

    日本心臓血管外科学会 心臓血管外科専門医日本外科学会 会員日本胸部外科学会 心臓血管外科専門医

    三角 隆彦 先生

    1981年に慶応義塾大学医学部を卒業。複数の病院の外科、心臓血管外科にて勤務した後、2007年に済生会横浜市東部病院副院長・心臓血管外科部長に就任。2011年からは同病院の院長を務める。

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