名古屋市中川区にある名古屋共立病院は1979年の開設以来、充実した設備を生かして高度な医療提供を展開してきました。国際診療科を立ち上げており、国内のみならず外国人の患者さんも積極的に受け入れている同院の役割や今後について、院長である堀 浩先生に伺いました。
当院の開設は1979年ですから、この地で診療を始めて半世紀近くになるでしょうか。病床数20床、透析用ベッド21床を備えた個人病院としてスタートした後、1982年に医療法人偕行会が設立され、現在はグループ全体で40を超える事業所を展開するまでになりました。
愛知県には約19,000人の透析患者さんがいらっしゃるとされています(2022年時点)。当院はグループ内の透析施設の基幹病院としての役割を担っており、グループ各施設と連携して合併症の予防・早期発見・早期治療に取り組むほか、介護を含めた切れ目のない支援を行っております。
このほか当院では、患者数が増加傾向にあるパーキンソン病や本態性振戦(ふるえ)に対するFUS(集束超音波治療)、がんに対する集学的な治療などを行っており、県外から足を運ばれる患者さんも少なくありません。“常に最新の先端技術を導入し、高度な専門医療を目指します”という理念のもと、集束超音波治療器、ガンマナイフ(Icon)、3テスラMRIをはじめとした医療機器を活用し、専門性の高い治療をご提供します。
当院は“透析の病院”として設立された経緯もあり、グループ施設で透析治療を受けられている患者さんの合併症予防に力を入れています。透析患者さんはほかの病気を発症することが多く、全体の約6割の患者さんが狭心症・心筋梗塞といった虚血性心疾患や心不全を合併するとされます。
これらの病気は自覚症状がないまま病気が進行するケースもあり、できるだけ早期に発見して適切な治療を行うことが重要です。このため当院ではグループ施設で行ったスクリーニング検査(心臓超音波検査や心電図など)の結果に異常がみられた患者さんに対する精密検査(心臓アンモニアPET検査)を行っております。心臓アンモニアPET検査とは、心臓の筋肉を流れる血液の流れ・動きを調べることにより、狭心症・心筋梗塞・心筋症などの病気の有無や程度を確認する検査です。心臓アンモニアPET検査や心臓カテーテル検査で何らかの病気が見つかった場合には、当院の循環器内科にて経皮的冠動脈インターベンション(PCI)・冠動脈バイパス術などを実施することで狭くなった血管を広げ、血液の流れをスムーズにする治療を行います。
このほか身体機能や体力維持を目的とした運動療法、下肢の血流改善が期待できる人工炭酸泉療法を積極的に取り入れるなど、透析患者さんの5年後、10年後を見据えたサポートを行っています。
日本では4人に1人ががんで亡くなるといわれます。がん治療には、がん細胞を手術で取り除く手術療法、がん細胞に放射線をあてて死滅させる放射線療法、抗がん剤などの薬剤を用いてがん細胞にダメージを与える化学療法などがあり、これらを標準治療と言います。しかしながら患者さんの中には標準治療が適応にならなかったり、標準治療を行っても思うような効果を得られなかったりするケースも少なくありません。
当院ではがんに対する標準治療にハイパーサーミア(温熱療法)や高気圧酸素治療を組み合わせる集学的治療を実践しています。ハイパーサーミアは“がん細胞が熱に弱い”ことに着目し、がん細胞の温度をピンポイントに上昇させることでがんの死滅を目指す治療です。一方の高気圧酸素治療は、大気圧より高い気圧に加圧し高濃度の酸素を吸入することで血液中に溶けこむ酸素量を増やし、放射線治療の効果を高める狙いがあります。今の医療では標準治療が適応とならない場合、次なる選択肢は緩和ケアのみというのが実情です。ハイパーサーミアや高気圧酸素治療は両者の間を埋める役割を担い、がん患者さんのQOL(生活の質)維持とともに、がんとの共存をサポートするものです。
また脳腫瘍が生じたり、がんが脳に転移したりした場合は、開頭手術に代わる治療としてガンマナイフによる治療をご提案できることも強みです。当院の“名古屋放射線外科センター”では2004年2月からガンマナイフを導入し、2017年5月には中部地区で初となるガンマナイフ“Icon”へと機器をバージョンアップして、現在までに9,500件を超える治療実績があります(2004年~2024年7月時点の実績)。
当院では本態性振戦やパーキンソン病に対するFUS(集束超音波治療)を行っています。振戦とは自身の意に反して生じる“ふるえ”のことを指し、本態性振戦ではご自分の意に反してリズミカルなふるえが生じます。一方のパーキンソン病においても、ふるえや手足のこわばりなどの症状がみられますが、FUSによってこれらの症状の改善が期待できます。
本態性振戦は65歳以上の5~14%の人に発症するとされ、パーキンソン病は高齢になるほど発症する確率が高まるとされています。FUSはMRI画像を用いて脳の深部に超音波を照射する治療のため開頭を必要とせず、患者さんの体に優しい治療だといえます。当院では2017年より名古屋大学と連携してFUS治療に取り組んでおり、2024年8月には200症例に達しました。
当院では高齢患者さんに多くみられる痛みの治療にも積極的に取り組んでおり、人工関節センターでは変形性関節症などに対する人工関節置換術を行っています。また整形外科領域において特に患者数の多い脊椎・脊髄の病気については、脊椎・脊髄外科センターにて保存治療から手術治療まで幅広く対応しています。
脊椎・脊髄外科センターのセンター長を務める湯川先生は、脊椎内視鏡下手術・技術認定医(日本整形外科学会認定)の資格を持つ内視鏡手術のエキスパートであり、部長の加藤先生は腰椎椎間板ヘルニアに対するヘルニコア治療の開発者の一人です。適切な診査・診断のもと、個々の患者さんに適した治療をご提案いたします。
当院ではかねてより外国人患者さんの受け入れを行っており、異国の地で医療を受けられる方々が不安なく受診できるよう環境整備を進めてまいりました。2015年2月に中部地区の民間病院初となる“外国人患者受入れ医療機関認証制度(JMIP)”の認証を受けたのに続き、2020年4月には愛知県内の民間病院としては初めて“ジャパン インターナショナル ホスピタルズ(JIH)”に推奨されました(一般社団法人Medical Excellence JAPAN)。
2023年5月からは新たに国際診療科を設置し、外国人患者さんの受け入れ体制をさらに強化しています。現在対応できる言語は、英語・中国語・インドネシア語・スペイン語・ポルトガル語の5つあり、病院へお問い合わせをいただいた後、診察から治療まで専門スタッフが一貫してサポートさせていただきます。また当院の外来棟3階には外国人患者さんのための専用フロアがあり、受付、問診、検査結果の説明や会計などを同フロアにて行っています。
当院は地域の中で専門性の高い医療を行う高機能病院を目指す一方、地域の方々にとって優しい病院でありたいと考えています。2018年から始まった“きょうりつ健康サロン”は今も月に一度のペースで実施しており、健康維持に役立つ情報を積極的に発信するとともに、皆さまからの疑問や不安にお答えする場にもなっています。
当院は“最新の医療を、苦痛を少なく、そしてなるべく早く”との信念のもと、がんの集学的治療を実践するとともに臨床研究にも積極的に取り組み、多くの医師が国内外の学会で発表をするなど活躍しています。今後もグループ施設や地域の医療機関との連携を密にし、質の高い医療を継続してご提供することを目指してまいります。何かご不安なことや心配なことがございましたら、お気軽にご相談ください。
*医師や診療科、提供している医療の内容等についての情報は全て2024年8月1日時点のものです。