全身がかゆい:医師が考える原因と対処法|症状辞典
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聖マリアンナ医科大学 皮膚科 教授
門野 岳史 先生【監修】
かゆみは全身のさまざまな部位に起こりうる症状のひとつであり、病気や日常生活上の習慣など原因は多岐に渡ります。乳幼児から高齢者まで幅広い年代でみられる症状ですが、中には深刻な病気が隠れているケースもあります。
これらの症状がみられる場合、原因としてどのようなものが考えられるのでしょうか。
全身のかゆみは、身体的・精神的な病気によって引き起こされることがあります。原因となる主な病気は以下の通りです。
皮膚に生じる以下のような病気が原因で、全身のかゆみを生じる場合があります。
特定のアレルゲンに晒されることで生じるアレルギー症状のひとつです。蕁麻疹は、やや隆起した扁平な皮疹であり、非常に強いかゆみを伴うことが特徴です。
体の一部にのみに現れることもありますが、重症な場合には全身に現れ、咳やくしゃみ、目の充血、吐き気や下痢などの症状がみられることも少なくありません。また、さらに重症化すると呼吸困難や血圧低下、意識消失などのアナフィラキシーショックが引き起こされることがあります。
ウイルスに感染することによって発症する水疱瘡や麻疹、風疹は高熱や咽頭痛などの症状とともに全身に皮疹を形成し、強いかゆみを引き起こします。特に水疱瘡はかゆみが強く、皮疹がかさぶたになって脱落するため、皮膚に瘢痕(傷などの治癒後に残るあと)を残すことがあります。
明確な発症メカニズムは解明されていませんが、虫刺されやアレルギーなどが引き金となって、強いかゆみを伴う赤い丘疹(先端が盛り上がった皮疹)が生じる病気です。体の一部分のみにできることが多いですが、全身に現れることもあります。また、治りが遅く慢性化するケースもみられます。
皮膚に慢性的な炎症が生じてかゆみを伴う湿疹を形成する病気です。皮膚のバリア機能の脆弱性やアレルギー体質が発症の原因となります。
湿疹は、肘や膝などの関節面にできることが多いですが、重症な場合には全身に皮疹が生じたり、強い乾燥が生じて全身のかゆみの原因になることがあります。
中高年に多くみられる病気で、皮脂の分泌が低下することで皮膚が乾燥し、かゆみを生じます。掻きむしりたい気持ちになりますが、掻くことでさらに皮膚の水分が失われ、かゆみが悪化するという悪循環に陥ります。
また、皮膚がダメージを受けて湿疹を生じることもあります。特に、冬など空気が乾燥する時期に症状が強くなるのが特徴です。
全身のかゆみは、以下のような内臓や器官の病気によって生じることがあります。
古くなった血液を分解する際に生成されるビリルビンの量が増えることで、全身にかゆみを生じることがあります。ビリルビンは肝臓で代謝され、尿や便とともに排出されます。
そのため、肝機能が低下する病気によってビリルビンが体内に過剰に蓄積し、かゆみの原因となることがあります。かゆみのほかにも、黄疸やむくみ、倦怠感などの症状がみられることもあります。また、腎機能が低下した場合もさまざまな老廃物が体内に蓄積する結果、かゆみの原因になると考えられています。
全身にできる、さまざまながんやリンパ腫が原因で全身にかゆみを生じることがあります。腫瘍からさまざまな物質が放出されるためかゆみが出ると考えられていますが、発症メカニズムはまだ解明されていません。また、リンパ腫のタイプによっては、かゆみを伴う皮疹が現れることもあります。
全身のかゆみは、以下のような精神的な病気が原因のことがあります。また、実際にかゆみが生じていないにもかかわらず、皮膚を掻きむしりたくなる衝動に駆られる病気もあります。
精神的な病気の中には、統合失調症や幻覚症などのように、さまざまな幻覚が現れる病気があります。これらの病気では、体に虫が這いまわっているといった幻視が現れ、実際にかゆみを生じているような幻覚を感じることがあります。
一般的には不合理と考えられる事柄にとらわれて、その不合理な事柄に関連する行動を繰り返す病気です。症状の現れ方はさまざまで、潔癖症による繰り返される過剰な手洗いなども強迫性障害のひとつです。
また、実際にはかゆみが生じていないものの、かゆみがあると思い込み、皮膚を掻きむしるといった不合理な行動が見られることも少なくありません。
全身のかゆみは、日常生活上の習慣が原因のこともありますが、思わぬ病気が潜んでいる場合もあるため、症状が長引いたり、繰り返されたりする場合には注意が必要です。
特に、かゆみのある皮疹がみられる場合や、発熱などほかの症状がある場合、精神的な変調が疑われる場合には、なるべく早めに病院を受診しましょう。受診に適した診療科は、それぞれの症状によって異なり、皮疹がみられる場合は皮膚科がよいですが、全身のどこかに皮疹以外の症状がある場合は内科やかかりつけの病院で相談してもよいでしょう。また、精神的な不調がうかがえる場合は、精神科や心療内科がよいでしょう。
受診の際には、いつからかゆみがあるのか、かゆみの誘因、かゆみ以外の症状、患っている病気などを詳しく医師に伝えるようにしましょう。
全身のかゆみは、日常生活上の習慣が原因になっていることがあります。主な原因とそれぞれの対処法は以下の通りです。
皮膚の乾燥は角質層のバリア機能を低下させるため、さまざまな刺激に過敏となり、かゆみの原因になります。特に、空気が乾燥する冬や冷房の強い夏の室内で症状がつよくなることが特徴です。
肌の乾燥を防ぐには、入浴後などに保湿効果の高いクリームやローションを使用してのケアがおすすめです。また、加湿器を用いて湿度を適切に保つことも大切です。
ただし、クリームやローションは肌質に合わないものを使用すると皮膚に負担がかかって、乾燥が悪化することがあるため注意しましょう。
皮膚の温度が急激に高くなると、かゆみを生じることがあります。特に、冬場の入浴や運動時などに起こることが多いとされています。
皮膚が急激に温められないよう、衣類で調整したり、温度差の激しい場所への出入りを控えたりするなどの対策が必要です。また、運動時に汗をかくとかゆみの原因となることもあるので、綿やシルクなど吸水性のよい下着を身につけるとよいでしょう。
過度なストレスは心因性のかゆみを引き起こすことがあります。夜間や睡眠中にかゆみが強くなるのが特徴です。
生活を送るうえでストレスを完全に排除することはできません。しかし、自分に合ったストレス解消法を見つけることで、その都度ストレスを発散し、ストレスを溜めない生活を送ることは可能です。また、十分な休息や睡眠時間の確保も心がけましょう。
日常生活上の対処法を講じてもかゆみが改善しない場合は、何らかの病気が潜んでいることや間違ったスキンケアを行っていることが考えられます。
なるべく早めに症状に適した診療科を受診して、適切な治療を受けるようにしましょう。