更年期障害は、更年期(閉経前後の5年間)に現れる、他の病気ではないにもかかわらず日常生活に支障をきたす多様な症状です。その症状は200〜300種類もあるといわれています。更年期障害の症状やその重症度は個人差が非常に大きく、千差万別です。
今回は更年期障害の症状について、昭和大学産婦人科の白土なほ子先生に詳しくお話を伺いました。
更年期は全員通りますが、更年期障害は全員に起こるものではありません。
何も症状がない方から、症状を多少感じる方、症状が重い方、そして治療する方、しない方まで、さまざまです。
更年期障害において必発症状はなく、一人ひとり症状は異なり、個人差が大きいことが特徴です。
症状は、大きく以下に分けられます。
汗は以下のように、出てほしくないというときに出ます。
汗をかく場所は、首から上が多いです。顔の目の淵、耳の後ろなど、今まであまり感じなかったところにも汗をかきます。脂汗というよりは、サラサラとした汗がでます。
汗の量は個人差があり、夜中にパジャマを何回も着替えなければならないほど非常に多くの汗をかく場合もあります。
また、汗のにおいを気にする方が多いです。実際にさほど汗臭くなくとも、自分のなかで気にしすぎるあまり、他人に避けられているような感覚に陥ることもあるようです。
心理社会的要因といい、家族背景、仕事の問題、介護の問題、子どもの受験など、社会的な要因でうつ傾向が悪化する方が多くいます。
うつ傾向がある方で、周りから見て明らかにうつだと考えられる場合は、精神科を受診したほうがよいです。
更年期だけのうつ傾向であれば、婦人科で薬を処方することができます。
詳しいうつ病の症状についてはこちらの記事『うつ病の症状―気分の落ち込みのほか、体の痛みなどの身体症状があること』をご覧ください。
更年期になると、おりものが少なくなり外陰部が乾き、性交痛が生じることもあります。また乾燥によって膣の自浄作用が弱まり、萎縮性膣炎になることもあります。
膣錠や女性ホルモン剤などを週に1回入れるだけでも、乾きの症状は随分変わります。解決策は多少なりともあるため婦人科に相談してみてください。
昭和大学病院産婦人科の健康調査の項目(更年期障害診察時に使用)
・顔や上半身がほてる(あつくなる)
・汗をかきやすい・夜、なかなか寝つかれない
・夜眠っても眼を覚ましやすい
・興奮しやすく、イライラすることが多い
・いつも不安感がある
・ささいな事が気になる
・くよくよし、憂うつなことが多い
・無気力で、疲れやすい
・眼が疲れる
・物事が覚えにくかったり、物忘れが多い
・めまいがする
・胸がドキドキする
・胸がしめつけられる
・頭が重かったり、頭痛がよくする
・肩や首がこる
・背中や腰が痛む
・手足の節々(関節)の痛みがある
・腰や手足が冷える
・手足(指)がしびれる
・最近、音に敏感である
上記の票は、実際に昭和大学病院の更年期外来で使っている健康調査票です。
自分で簡単に更年期障害の症状をチェックすることができます。
項目の多さや症状の重さで更年期障害かを決めるものではなく、自分の症状を把握するために使ってください。
実際の診療では、この健康調査票や精神的ストレスに関する質問票などで総合的に診断しています。
更年期障害と診断するにあたり、必ず血液検査を行うわけではありません。
医師が必要と判断した場合に行います。
血液検査では、血中の「FSH*(卵胞刺激ホルモン)」と「E2*(エストラジオール)」の濃度を調べます。
FSHが40以上あり、E2が20以下の場合は更年期です。
「FSH」…卵胞刺激ホルモン。正常であれば10以下の値。
「E2」…エストロゲンと呼ばれる女性ホルモンの中のエストラジオールという種類。30くらいの値があれば、問題なし。
閉経前後5年ほどが更年期といわれます。年齢でいうと、だいたい45歳〜55歳です。その期間のなかでも、より症状が激しい期間は、閉経前後の2〜3年ほどです。
しかし、更年期障害が治ったと思っても繰り返す方もおり、個人差があります。
また、年齢を問わず、乳がんの治療後の方、卵巣摘出手術を行った方、ホルモン剤での治療などを行った方などは更年期のような症状が出ます。これは、ホルモンのアップダウンが激しくなるためです。
更年期症状にいずれ終わりは来ますが、日常生活に支障をきたすほどの症状がある場合は、更年期障害です。我慢せずに婦人科に受診してください。
以下の症状の原因は、更年期障害ではない病気の可能性があります。
自己判断せずに、まずは医師に相談してみてください。
・うつ傾向:精神疾患、心療内科疾患なども疑う
月経がきた方には、いつか閉経のときが来ます。「みんなそうなのね!」と知っているだけで随分心持ちは違います。周りと話して自分の状況を知ることが大事です。夫や友達、娘や息子など、悩みを打ち明けられる方がいればより安心です。家族や周囲の方々も更年期障害のことを知り、協力的な姿勢でいることが大事です。
ホットフラッシュは夜も起こるため十分に寝ることができないと、午前中に疲れ切ってしまうことがあります。そうすると家事ができなくなる、化粧をしなくなる、予定を入れなくなるなど内向的な傾向になっていきます。
その結果「自分はダメだ」と負のスパイラルに陥ってしまうことがあります。
しかし、家族が協力し合えば解決するということもあります。
婦人科では更年期障害だけではなく、女性医学を網羅的にみています。
我慢せずに、何か悩みがあれば、まずは婦人科に受診してください。
昭和大学医学部産婦人科 准教授
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