院長インタビュー

地域の方々にとって特色ある医療のデパートでありたい!東京労災病院の取り組み

地域の方々にとって特色ある医療のデパートでありたい!東京労災病院の取り組み
寺本 明 先生

湘南医療大学 副学長、東京労災病院 名誉院長、日本医科大学 名誉教授

寺本 明 先生

東京労災病院は東京都大田区に位置し、地域中核病院として幅広い疾患の対応や、24時間体制で救急患者さんの受け入れをしています。紹介率(地域のクリニックからの紹介で患者さんを受け入れる割合)は70%、逆紹介率(地域のクリニックへ患者さんを紹介する割合)は80%と高く、地域に根ざした診療を行っていることがよくわかります。地域の方が地域で安心した医療を受けられることはもちろんのこと、特色のある取り組みも多く実施しています。東京労災病院の強みや特徴について、院長の寺本明先生にお話を伺いました。

東京労災病院の外観

独立行政法人労働者健康安全機構東京労災病院は、終戦から4年後の1949年(昭和24年)に設立されました。戦後、多くの方が日本の復興のため劣悪な環境のなかで働いており、全国各地で労働災害が頻発していました。

この状況に対応するために、1949年3月に全国初の労働災害専門病院として福岡県に九州労災病院が開院、当院は同年5月に全国で2番目の労災病院として開院しました。

当院のある東京都大田区には、京浜工業地帯が広がっており、開院当時は数多くの工場が建ち並んでいました。

そこでは、機械による手足の切断や、白蝋病(はくろうびょう:強い振動をともなう工具を使用し続けることで手足の血管が収縮し、末梢神経に障害が起きる病気)、また塵肺やアスベストによる呼吸器障害などが多発しており、当院ではこれらの疾患に対して、多くの患者さんの診療を行ってきました。

開院からしばらく経過し、労働環境は徐々に改善され、上述のような労働災害も減少していきました。

また成長し拡大するにつれ、安い人件費を求めて東南アジアへ移転する工場が出始め、反対に不況で倒産を余儀なくされる町工場が目立ちました。工場があった場所には大規模なマンションなどが建ち、工場地帯から住宅地へと変わっていきました。

この動きに合わせる形で、東京労災病院も労災専門の病院から、ほぼ全診療科を有する、地域の方のための病院へと体制をシフトしていったのです。

東京労災病院は2017年現在で病床数400床(うち52床は地域包括ケア病床)、診療科数21科で運用を行っています。

地域医療支援病院として、地域のクリニックや開業医と連携を図りながら、最新の機器や設備を整え、あらゆる患者さんを受け入れています。

当院では救急医療の体制も整え、24時間体制で患者さんを受け入れる急性期医療機関としての役割も担っていますし、大規模災害が発生した際の医療活動の拠点となる災害拠点病院にも指定されています。

労働災害の患者さんは現在も全体の患者数の約2%の割合で来院しています。他の総合病院では労働災害の平均患者数の割合が約0.2%なので、10倍近くの労働災害の患者さんが来院していることがわかります。

当院は、ルーツである労働災害に対する積極的な診療を行いながらも、地域の患者さんのあらゆる疾患にも対応できる病院です。

東京労災病院の整形外科は医師数11名で診療に当たっており、整形外科におけるほぼ全身の疾患に対応しています。特に「手の外科」については、当院の副院長である楠瀬浩一先生の技術が非常に高く、指が完全に切断された状態でも10時間以内であれば、高い確率で再吻合(ふんごう:つなぎあわせること)が可能です。整形外科は24時間体制で外傷の患者さんを受け入れており、東京の全域から患者さんが搬送されてきます。

消化器内科では、消化器疾患全般において一般患者さんはもちろんのこと、夜間・休日問わず積極的に救急患者さんの受け入れも行っています。9名の医師のチームワークによる、多数例の内視鏡検査と治療には定評があります。

東京労災病院では6名の脳神経外科医と4名の神経内科医が協働し、24時間体制で脳梗塞脳出血を中心とした脳卒中の患者さんを受け入れています。4名の医師が血管内治療専門医の資格を取得しており、脳卒中疾患に対するカテーテル治療(頭を切開せずに、血管内にカテーテルを挿入して行う治療)を行っています。

循環器科では、急性心筋梗塞狭心症といった、緊急を要する虚血性疾患に対するカテーテル治療に力を入れています。また、下肢の動脈狭窄性疾患に対するカテーテル治療に関しては全国でも屈指の症例数を有しています。

各診療科の検査には「3テスラMRI」や「バイプレーン血管撮影装置」をはじめ、最新のものを使用しています。これらの機器を使用することによって、従来に比べてより詳細な診断と治療が可能です。

「治療と就労の両立支援」は、独立行政法人労働者健康安全機構が中心となっている事業で、主にがん・メンタルヘルス不調・脳卒中糖尿病等の治療を受けながら働く方々の支援を行っています。

そのなかで東京労災病院は、がんとメンタルヘルス不調の患者さんを支援するモデル病院として、休業からの職場復帰に関する事例の報告と分析・調査を担当しています。たくさんの方々に、東京労災病院の活動に対して評価をいただいており、多くの見学者の方にもお越しいただきます。

東京労災病院のある東京都大田区は、「モノづくりのまち」として知られており、精巧で高度な技術を持つ中小企業が多くあります。

これらの中小企業は素晴らしい技術を持っているにもかかわらず、自分たちの技術が医療現場にどう活用できるかがわかりません。一方医療機関としては、こういう機器があればいいのにというたくさんのニーズを持っています。

そこで両方の意見やニーズを擦り合わせ、中小企業と医療機関が協働して医療機器の開発を行うために、大田区の力をお借りして「東京労災病院医工連携室」を立ち上げました。

約4年前から活動を開始し、2017年現在では手術に使用するハサミなど計4つの医療機器の特許を申請中で、近い将来に製品化される予定です。

東京労災病院は、全診療科をそろえていながらも、病院内のコミュニケーションが非常に円滑な点が特徴です。これは400床という規模がカギであると考えています。

大規模な病院では、医師は自分に直接関係のある部門としか関わらないことが多いですが、当院の医師は、薬剤師や検査技師、リハビリ技師、ケースワーカー、事務職員などあらゆる職種と気楽に話している様子がみられます。

そのため、お互いに情報の共有ができますし、さまざまなリスクの減少にもつながります。

大病院は専門性を身につけるためにはとてもよい環境ですが、当院で働いていると医療現場がどのようにして成り立っているのかがとてもよくわかります。

若手の医師にとっては、当院で働くことで医療人として必ず貴重な体験ができますし、得るものは非常に大きいと考えます。

寺本明先生

東京労災病院は、これからも地域の住民の方々の健康と命を守る最後の砦であり続けます。

そのために地域の方々が健康面で困ったときには、当院に来ていただければ必要な診療体制は何でもそろっている「デパート」のような存在でありたいと考えています。

しかし、ただ単に一般的な医療を提供するだけではなく、各診療科での得意分野を伸ばすとともに、医工連携や治療と就労の両立支援など、特色ある取り組みを行うことも地域医療支援病院として大切なことであると考えています。

今後も東京労災病院はみなさまのお役に立ち、頼りになるような存在であるため、努力し続けます。

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  • 東京労災病院 名誉院長、日本医科大学 名誉教授、湘南医療大学 副学長

    寺本 明 先生

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