院長インタビュー

地域住民と勤労者を支え続ける東京労災病院

地域住民と勤労者を支え続ける東京労災病院
森田 明夫 先生

東京労災病院 院長

森田 明夫 先生

目次
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東京都大田区にある東京労災病院は、26の診療科と400床の病床を備える総合病院として地域医療の要を担い、24時間365日体制の救急医療やがん診療などの急性期医療を提供しています。

元々、全国で二番目に設置された労働災害専門の病院として1949年に診療を始めており、現在も外傷患者の積極的受け入れ、治療中の患者の就労支援を行うなど、勤労者医療にも一貫して取り組んでいます。

そんな同院の特長について、院長の森田 明夫(もりた あきお)先生にお話を伺いました。

当院は、全国で二番目の労災病院として1949年にスタートしました。当時は、劣悪な環境で働く工場労働者が多く、機械による手足の切断のほか、塵芥やアスベストに起因する呼吸器障害など労働災害が多発していました。

当院の周囲には工場が連なる京浜工業地帯が広がり、開院してしばらくは労働災害の診療に追われていましたが、徐々に労働環境が改善して地域診療の割合が多くなってきました。現在は26の診療科と400床の病床を備える総合病院として、包括的な地域医療に努めています。

救急医療においては、二次救急を主軸に毎年3,000〜4000台のペースで救急患者を受け入れ、一刻を争う脳卒中心疾患にも対応しています。また、2014年には東京都災害拠点病院に指定されDMAT(災害時派遣医療チーム)を編成し、2024年1月の能登半島地震をはじめ各地の災害医療を支援しています。

当院は、羽田空港に最も近い総合病院でもあるため、外国人の患者さんも多数受け入れています。また、万が一羽田空港で災害が起きた場合も、迅速に対応できるような医療体制を整えています。

当院は東京都がん診療連携協力病院に指定されており、外科手術、薬物療法、放射線治療の三大療法による包括的ながん診療を提供しています。

特に放射線治療では、スピーディーかつ高精度な診断を行える“TrueBeam”を導入し、手術と放射線治療を組み合わせた集学的治療を行っています。適用となる症例は、肝癌などの悪性腫瘍における動注化学療法のほか、消化管出血や婦人科出血などに対する緊急止血術など多岐に渡ります。

がんの治療については、肺がんを担当する呼吸器センターや胃がんなどを担当する消化器内科・外科を中心に、熟練の医師が治療を担当しています。特に消化器外科では、がんの症状が現れていない方に対してスクリーニング検査を行い、がんの早期発見に努めています。

さらに、胃がんや大腸がんなどの大半の手術に低侵襲(からだへの負担が少ない)な腹腔鏡手術を採用し、膵がんや胆管がんに対する膵頭十二指腸切除術など難易度の高い手術にも対応しています。

当院は一次脳卒中センターに認定されており、脳卒中の診療に力を入れています。特徴としては、脳神経内科医と脳神経外科医が協力し合って診療にあたることが挙げられます。治療方法は幅広く、脳梗塞に対する血栓溶解療法(t-PA)、カテーテルによる血栓回収療法、くも膜下出血に対する脳動脈瘤クリッピング術やコイル塞栓術、ステント留置術、脳内血腫除去手術(開頭及び内視鏡)など、脳卒中患者に対して迅速に対応できる医療体制を整えています。

脳に関する分野では、今後高齢者の増加に伴って社会問題となってくる認知症や、脳腫瘍、比較的若年者に多い脊髄損傷に対する神経再生医療の診療も積極的に行っています。認知症については、脳神経内科が専門外来を設けており最近上梓されたレカネマブによる治療なども開始しています。脳腫瘍については、病変の位置を知らせる術中ナビゲーションシステムに加え、脳神経の機能を確認する神経モニタリング装置などを駆使し、脳の機能を温存する安全な手術を行っています。また神経再生医療については、急性期の脊髄損傷患者に対する再生治療として、2022年に関東で初めてステミラック注(自家骨髄間葉系幹細胞投与)による治療を行い、全国多数の医療機関と連携して多くの患者さんにご来院頂き治療しています。今後慢性期の脊髄損傷治療の治験筋萎縮性側索硬化症の臨床研究にも参加する予定としています。

そのほか急性期医療においては、近年増加傾向にある虚血性心疾患のほか、末梢血管の閉塞や狭窄で発症する閉塞性動脈硬化症の治療を循環器科で行っています。特に不整脈治療のカテーテルアブレーションを積極的に行い、順調に症例を伸ばしています。

当院は労災病院として、労災事故による外傷をはじめ、交通外傷や一般外傷の治療に⻑年取り組んできました。そうした実績から今では東京全域から多くの患者さんが搬送され、24時間体制で受け入れと治療を行っています。

実際に、当院の患者さんのうち約2%は労災医療に該当し、労働災害関連では他院に比べて約10倍の患者さんを受け入れています。

また、外傷の治療と対をなすリハビリテーションも当院の得意分野です。近年特に問題視されている高齢者の骨折についても、手術後のリハビリテーションを通してサポートしています。

当院では上記の様々な一次疾患の後のケアも充実しています。特に重度な障害を受けた患者さんや、治療の継続を必要とする就労者の人たちは、治療と仕事の両立に悩まれる方が多くいらっしゃいます。病気の治療を続けながら働く機会を創出する“治療と仕事の両立支援”は、独立行政法人労働者健康安全機構が中心となって進める国の事業です。主にがん、メンタルヘルスの不調、脳卒中、糖尿病などの治療を受けながら働く方々を支援しています。

その中で当院は、モデル病院としてがんや脳卒中、メンタルヘルスの不調を抱える患者さんを支援し、職場復帰に関する事例の報告、調査、分析などに取り組んでいます。

当院の“治療就労両立支援センター”では、約15名の職員により患者さんの就労をサポートしています。充実した支援体制にも関わらず、主に当院で治療を受けた患者さんの支援に止まっているため、今後はどの医療機関をメインで加療受けているかに関わらず、大田区、東京、関東圏の患者さんにも利用してもらいたいと考えています。

当院の基本理念は“命の輝きを共有できる病院”です。患者さんをはじめ、勤労者や地域の皆さんの生命と健康を守ることを最優先に掲げています。

守るべき“命の輝き”には職員も含まれます。職員の健康と生活を守りつつ、楽しく働きがいのある職場や、当院で働くことを誇りに思ってもらえるような病院を目指しています。

これからも当院は地域医療と勤労者医療に尽力し、地域の皆さんに親しまれ気軽に相談して頂けるよう、誠実な医療活動に努めて参ります。

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