タバコが主な原因で、長い年月をかけてゆっくりと進行していくCOPD。喫煙者本人だけでなく、周りの人や胎児にまで影響を与えると報告されています。ここでは久留米大学病院呼吸内科の川山智隆先生にCOPDの原因についてお話をうかがいました。
COPDとは、タバコの煙などを主な原因とする肺の炎症性疾患のことで、咳や痰のほか労作時の呼吸困難などの症状を呈します。
通常、健康な人の場合には意識せずに呼吸をしていますが、COPDの患者さんの場合は閉塞性換気障害を起こしているため、息を吐くににも非常にエネルギーを必要とします。肺を構成している肺胞とよばれるぶどうの房のような部分が破壊されて、細い気管支がつぶれてしまうため、特に息を吐き出すときに健常な人と比べると多大な労力を要するのです。
COPDは、長い年月をかけてゆっくりと進行していく病気です。現在、日本国内には推定で530万人の潜在患者さんがいるといわれていますが、実際に治療を受けているのは20万人と報告されています。ただ、COPDは軽症から重症まで四段階に分類されており、軽症については必ずしも治療が必要ではない方もおられます。しかし、私たちが最も啓発しなければならないと思っているのは、軽症で症状にまだ気づいていない方たちです。軽症であっても未だにタバコを吸っている方や、あるいはパートナーがタバコを吸っているような環境下にある方などに対しては、重症になる前にタバコの煙から回避することの重要性を知らせる必要性があると考えています。
COPDの原因については、その大半がタバコといわれていますが、過去の日本がそうであったように、公害なども要因のひとつと考えられています。
実際に、いまも公害の多い国の方だとか、有毒と知りながらその有害物質が排出される燃料を使わないと生活が成り立たない環境に置かれている方たちはCOPDが起こりやすいというデータが報告されています。その他にも、α1アンチトリプシン欠損症という遺伝的なものが原因となって発症する場合もあります。
また最近では、お母さんの胎内にいる赤ちゃんがタバコの煙にさらされる環境にあるとCOPDになりやすいという世界的な学説も報告されています。お母さんの周りの方や、お母さん本人がタバコを吸っていると、赤ちゃんがCOPDになるリスクが高まるというものです。同様に、生まれた後の受動喫煙などもCOPDの発症に関与するといわれています。
肺が発達段階にある新生児や胎児では、受動喫煙によって肺の成長が妨げられてしまいます。胎内にいるときや新生児期にタバコの煙にさらされる環境にあった方が成人してタバコを吸ったり、公害などの環境下にさらされたりすると、元々リスクのある土台であるためCOPDを発症しやすくなるのです。
実際、タバコを吸っている方でCOPDになるのは3人にひとりで、タバコを吸っていてもCOPDにならない方もおられます。肺がしっかりと育っている場合には、同じような環境下にあってもCOPDを発症しにくいと考えられていますので、胎内や新生児期におけるタバコの煙からの回避も重要な課題となっています。
久留米大学 医学部内科学講座 呼吸器・神経・膠原病内科部門 呼吸器病センター教授
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