インタビュー

淋病(淋菌感染症)とは?画像・写真でみる女性男性別の症状と検査・治療など

淋病(淋菌感染症)とは?画像・写真でみる女性男性別の症状と検査・治療など
尾上 泰彦 先生

プライベートケアクリニック東京 院長

尾上 泰彦 先生

この記事の最終更新は2015年07月14日です。

性感染症」というテーマは、日常生活の中ではなかなか話題にしにくいものかもしれません。しかし、性感染症の知識は、私たちがきちんと身につけておかなければならないものです。

さまざまな性感染症について、性感染症学会の代議員としてわが国における性感染症予防・治療を牽引し、ご自身の診療所でも長きに渡り性感染症の患者さんと向き合われてきた尾上泰彦先生に伺います。今回は「淋病(淋菌感染症)」についてのお話です。

淋病(淋菌感染症)とは、淋菌という細菌による性感染症のことを指す病名で、代表的な感染症のひとつだと言われています。10代後半から30代の性活動が盛んな若者に多く見られます。男性のほうが患者さんの数が多く、男性の患者さんの多くには症状が出ますが、女性の患者さんの多くには症状が出ません。

男性では主に尿道に、女性では子宮頸管に感染します。また、オーラルセックスを介して、咽頭に感染することがありますし、アナルセックスを介して直腸に、淋菌が手についた手指を経由して眼にも感染することがあります。

口腔内が淋菌に感染すると、通常より赤味が増す

男性では淋菌に感染してから、2日~7日の潜伏期を経た後、排尿痛と尿道から分泌物が出てくることがあります。排尿痛は排尿の初期に出現することが特徴的で、痛みは激しいこともあれば、軽微なこともあります。尿道からは、黄色~白色のが出てきます。また男性の症状としては、尿道の出口が赤く腫れるということもあります。

男性の感染者の中には、全く症状が出ないという人が約5%います。このような人が感染していることに気付かないでいると、感染が尿道の奥の方に進んでいき、淋菌性急性前立腺炎になり、高熱が出たり排尿ができなくなったりすることがあります。さらに感染が精管から精巣上体の方に進んでいくと、淋菌性精巣上体炎になり男性不妊症になってしまうこともあります。

淋菌性精巣上体炎
淋菌性精巣上体炎

女性の感染者のうち、約80%の人は無症状です。症状が出る場合は、排尿痛、不正出血、下腹部痛、性の帯下、帯下の増量などが挙げられます。尿道に淋菌が感染すると、排尿痛が出たり尿道から膿が出現したりします。排尿痛では排尿の初期に発生する痛みが特徴的です。バルトリン腺に感染してしまうと、バルトリン腺部が腫れ強い痛みが出現します。

女性の感染者の多くは無症状なので、感染の自覚がほとんどありません。そのため、女性は感染に気付かないで放置していると、気付かないうちに男性に移してしまうことがあります。また、無症状のまま経過すると卵管炎や卵巣炎といった子宮付属器炎や、骨盤腹膜炎と感染が広がってしまいます。

淋菌性尿道炎
淋菌性尿道炎

淋病(淋菌感染症)はクラミジアに次いで感染者の多い性感染症です。主に性交渉により感染するのですが、女性が感染した場合は自覚症状が軽度であるケースも多いため、患者本人が感染に気がつかないまま放置してしまうことも多いです。そのため女性の淋病(淋菌感染症)は、不妊症などの重篤な結果を招いてしまう場合もあります。

妊娠は卵胞から排出された卵子と、卵管膨大部へたどり着いた精子が出会い受精卵となり、子宮で着床することで成立します。淋病(淋菌感染症)に気がつかず放置していると、卵管や卵巣など子宮付属器に淋菌が到達し炎症を起こしてしまいます。たとえば卵管が炎症を起こすと卵管狭窄(らんかんきょうさく:炎症により卵管が狭くなること)を引き起こしている場合、卵子と精子がうまく出会うことができません。たとえ受精できたとしても受精卵がうまく移動できないため、子宮外妊娠や不妊症を起こしてしまいます。卵管に問題があることを通過障害と呼びますが、不妊の原因が女性側にあるとき、その原因の多くはこの卵管の通過障害といわれています。

ほかにも淋病(淋菌感染症)は、卵巣炎を引き起こして排卵障害を招く以外にも、骨盤内癒着(骨盤内の隣りあう臓器が癒着すること)を引き起こす可性があります。

(女性は男性にくらべ症状が出にくいのも淋病(淋菌感染症)の特徴)
女性は男性にくらべ症状が出にくいのも淋病(淋菌感染症)の特徴

男性に比べ女性は淋病(淋菌感染症)の症状があらわれにくいです。そのため、下腹部の違和感があって受診したり、パートナーの男性が淋病(淋菌感染症)と診断され検査を受けたときに発覚したりするケースが多いです。とくに女性の淋病(淋菌感染症)は、原因となる淋菌が腟から子宮頸部などへ侵入した状態を放置してしまうと、子宮や卵管など妊娠に必要な部位に炎症を起こし、最悪の場合不妊症を招いてしまいます。痛みやかゆみといった症状が少ないということは、その分病気を見逃してしまいやすくなるため注意が必要といえるでしょう。  

淋病(淋菌感染症)によって引き起こされる他の疾患や症状は以下のようなものがあります。

(淋菌の侵入によって生じたバルトリン腺炎)
淋菌の侵入によって生じたバルトリン腺炎

淋病(淋菌感染症)は、男性の約5%、女性の約70~80%の方には感染しても症状があらわれません。しかし、上記のような疾患や症状があらわれて医療機関を受診したところ、淋病(淋菌感染症)が発覚したということもあるようです。膀胱炎などを引き起こす原因の多くは大腸菌ですが、淋菌によって炎症を起こす場合もあるようです。ほかにも骨盤内感染性疾患(PID)になると、瘍の形成によって骨盤痛を引き起こすこともあります。また淋菌に感染しているとHIVに感染しやすくなり、そしてHIVキャリアの方が淋病(淋菌感染症)に感染するとパートナーに感染させやすくなるという報告もあります

淋病(淋菌感染症)を放置すると不妊症になってしまう可能性があるため、性感染症は早期発見・早期治療が大切です。妊娠中の女性が淋菌に感染すると、胎児にとっても非常に危険な事態を招きます。

妊娠中の淋菌感染は、卵管や子宮内膜といった場所に炎症を起こし、早期破水や早産、低体重出産、さらには流産などを引き起こす危険性があります。

母親と胎児や新生児が、ウイルスや細菌などの病原体に感染することを「母子感染」といいますが、この母子感染には主に3つの感染経路があります。妊娠中に感染する「胎内感染」、分娩時に感染する「産道感染」、授乳中に感染する「母乳感染」がこの感染経路です。淋病(淋菌感染症)も母子感染を起こす可能性があり、分娩時の産道感染はときに新生児へ深刻な悪影響を及ぼすことがあります。

新生児の血液中に淋菌が侵入すると敗血症を引き起こすほか、心内膜炎髄膜炎関節炎尿道炎などの症状がみられることもあります。産道感染の中でも、最も多く表れる症状が新生児結膜炎です。新生児はウイルスや細菌に対する抵抗力が弱く、とくに目の抵抗力も弱いため、最悪の場合失明する可能性もあります。

淋病(淋菌感染症)は自覚症状がない、あっても軽度なため気がつきにくいので、胎児への感染例も少なくありません。生まれてくる子どものためにも、性感染症の検査は必ず受けるようにしましょう。

淋病(淋病(淋菌感染症))の検査は、基本的に尿の詳しい検査で行います。具体的には尿道分泌物()の塗沫標本の「顕微鏡検査」、初尿の「淋菌分離培養検査」、尿の「遺伝子増幅検査(PCRまたはSDA)」の3つを行います。
尿検査は2~3時間は排尿を我慢して病院で行ってください。また、抗生物質を飲んでしまうと検査する意味がなくなってしまうので、抗生物質を飲まないで受診しましょう。
女性の検査は、子宮頸管から分泌物検査を行います。具体的には、「淋菌分離培養法」「核酸検出法」「核酸増幅法」といった検査を行います。

女性が淋菌に感染しても自覚症状がほとんどでないケースが多いため、検査を受けて初めて感染に気付くことのほうが多いといわれています。オーラルセックスの普及により淋菌は性器以外に咽頭部にも感染します。咽頭へ感染しても自覚症状が出にくいため、淋病(淋菌感染症)はクラミジアに次いで多い性感染症として注意が必要です。

体に違和感を感じて性感染症かもしれないと思っても、恥ずかしいという気持ちが先にたつ。もしくは、検査を受けたいと思っても平日の昼間に休暇を取りにくい、という方が多いです。こうした方々には、自宅でも感染の有無を調べることがでる検査キットは有用であるといえるでしょう。

性感染症の検査キットにはいくつか種類があります。多くは淋菌だけでなく、クラミジアや梅毒、HIVやB型肝炎などといった関心の高い性感染症も同時に調べる事ができるようになっています。とくに淋病(淋菌感染症)は咽頭部への感染も疑われることが多いため、うがい液採取キットが同梱されている場合もあります。

検査方法は、腟分泌液採取キット、うがい液採取キット、血液採取キットなどを利用し、検体を採取します。それから、同梱されている検査申込書に記入し、検査物を返送。検査物が衛生検査所へ到着後、受付られ、2~5日後に結果を知る事ができます。

結果については、メールや電話の他、インターネット上で登録したIDとパスワードを入力し、ログインしたのちに見る事もできます。(メーカーによって異なります) 検査キットを使用して、陽性反応が確認された場合は、速やかに医療機関を受診し、治療を開始する必要があります。

性感染症の検査キットでは、性感染症の感染の有無を調べることができます。しかし検査手順に不備があった場合には正しい検査結果を知ることができません。そして検査結果が陽性であった場合には、ご自身で医療機関に向かい検査・治療を受ける必要があります。

淋菌に感染しているとわかったら、日本性感染症学会の治療ガイドラインに沿った抗菌剤を使用して淋菌を除菌します。淋菌では薬剤耐性菌が問題になっており、薬剤選択には注意が必要となります。

抗菌剤の服薬が終了した後、おおよその潜伏期間である7日間以上の休薬期間をおき、本当に治っているかどうか確認のために淋菌の治療判定検査を再び行うと良いでしょう。

淋病(淋菌感染症)は、淋菌と呼ばれる細菌に関することで発症する性感染症です。原因となる淋菌を駆除することができれば、淋病(淋菌感染症)は完治したということができます。

淋病(淋菌感染症)の治療は、抗菌剤の服用によっておこなわれます。有効とされる抗菌剤や服薬期間は定められています。通常であれば服薬期間終了後に数日間の休薬期間を設け、その後の再検査結果が陰性であれば完治とすることができます。この休薬期間ののちに検査をして陽性となった場合には、再度投薬治療を行います。

淋病(淋菌感染症)が完治しないとパートナーや、妊娠中の女性であれば胎児へ感染する可能性があります。淋病(淋菌感染症)の治療は、前述したように、抗菌剤が処方されます。使用される抗菌剤の代表例として、セフトリアキソンナトリウム水和物、セフォジジム、スペクチノマイシン塩酸塩水和物をあげることができます。実際にどの抗菌剤を使用するかについては、淋病(淋菌感染症)を確認した部位によって医師が決定します。淋菌は抗菌剤に対する耐性が年々上昇しています。抗菌剤の使用を患者の独断で中止した場合、治療がより困難になります。抗菌剤の用法、用量、治療期間を守るようにしましょう。

淋病(淋菌感染症)は医師の正確な診断と抗菌剤の適切な使用により、体内の淋菌を消すことができれば再発の可能性はありません。しかし治療が不十分で体内に菌が残留していると、症状が再発してしまう事があります。  

淋病(淋菌感染症)の治療には抗菌剤が使用されますが、近年ではこの抗菌剤に対する耐性を持つ淋菌が増加傾向にあります。抗菌剤の使用によって本来であれば体内から除去されるはずの淋菌が、途中で抗菌剤の処方を中断することによって、抗菌剤に対し耐性を持つようになってしまうのです。このような耐性を持つ淋菌を発生させないためにも、医師に処方された抗菌剤を所定の期間服用する必要があるといえます。

ほかにも性感染症は一人だけが完治してもパートナーが感染したままだと、性行為等を通じて再び感染してしまいます。このようにパートナーと感染を繰り返すことを「ピンポン感染」といいます。ピンポン感染をなくすには、淋病(淋菌感染症)と診断された人だけでなく、そのパートナーの方の治療も必須です。

あなたやパートナーが淋病(淋菌感染症)と診断されたら、二人で治療を受けて完治させるようにしましょう。

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