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インタビュー

悪性骨軟部腫瘍の症状-疑うべき症状は

悪性骨軟部腫瘍の症状-疑うべき症状は
川井 章 先生

国立がん研究センター中央病院 骨軟部腫瘍・リハビリテーション科長(希少がんセンター長)

川井 章 先生

この記事の最終更新は2016年04月29日です。

悪性骨腫瘍のなかには、骨肉腫のように腫れや痛みなどの症状があらわれやすいものもあれば、軟骨肉腫のように腫瘤以外の症状がほとんどあらわれないものもあります。また、軟部肉腫は痛みのない瘤(こぶ)やしこりとして気づかれることが多い腫瘍ですが、痛みがないために放置されることも少なくありません。本記事では、骨軟部腫瘍の症状について、国立がん研究センター中央病院 希少がんセンター長 骨軟部腫瘍・リハビリテーション科 科長 川井 章先生にお話しいただきました。

主な悪性骨腫瘍の発生頻度が高い部位は次のとおりです。

  • 骨肉腫:大腿骨遠位部(だいたいこつえんいぶ)・脛骨近位部(けいこつきんいぶ)・上腕骨(じょうわんこつ)近位部などに多くみられます。
  • 軟骨肉腫:大腿骨や上腕骨などの四肢近位部や骨盤、肋骨などの体幹(たいかん:胴体)の骨に多く発生します。ゆっくりと大きくなることが多く、痛みなどの症状がほとんどない硬いかたまりとして気づかれることが多い腫瘍です。
  • ユーイング肉腫:四肢近位部の骨や骨盤、肋骨(ろっこつ)など体幹の骨に発生することが多く、発熱など全身の症状を伴うこともあります。
悪性骨腫瘍の発生頻度が高い部位
悪性骨腫瘍の発生頻度が高い部位

悪性骨腫瘍のうち、発生頻度が高いものに骨肉腫があります。骨肉腫は原発性悪性骨腫瘍の約50%を占めます。骨肉腫は10歳代の青少年、女性より男性に好発することが知られています。

思春期にぐんと身長が伸びるときに、四肢の成長軟骨やそれに続く骨幹端部では細胞分裂や細胞死(アポトーシス)が活発に行われます。その細胞活動の活発なときに骨肉腫の起源細胞のDNAに異常が蓄積して骨肉腫を発症すると考えられています。ですから、骨の成長が終了した成人に骨肉腫が発生することは少なく、女性より細胞の絶対数や成長の度合いが大きい男性に骨肉腫は多いと考えられています。そう考えると成長期の青少年は誰でも骨肉腫になりうる危険性があるといえますが、冷静にその発生頻度を考えると、不必要に神経質になるのも決してよくないでしょう。

思春期の元気な少年が膝が痛いと訴えたときに、その痛みの原因が、関節や靭帯の損傷や成長痛でなく、骨肉腫などの骨腫瘍である可能性は、実際は非常に低いものです。先述したとおり、骨肉腫は全国で年間200~300人しか発症しないきわめて稀な疾患です。それに対して、靭帯損傷や外傷、成長痛で膝に痛みを生じる方はその何十倍~何百倍もいます。ですから、膝痛だけで骨肉腫などの腫瘍であると過度に不安がる必要はありません。

骨肉腫などの骨腫瘍を疑う(何かおかしいと感じる)のは、

  • しつこい痛み(病院で湿布など消炎鎮痛治療をしてもらって3〜4週間たっても痛みがひかない)
  • 夜間や運動していないとき(安静時)に同じところが痛む
  • 関節から少し離れたところが痛む
  • 痛いところが腫れている

これらの場合には医師にしっかりと状況をつたえ、必要であればレントゲンやMRI検査を受けられることをお勧めします。

悪性であっても、多くのものは特に痛みなどはないため放置されていることも多く、腫瘍が大きくなってから受診することもあります。特に、大腿や臀部(でんぶ・お尻のこと)など脂肪や筋肉の多い部位や深部に発生すると、腫瘤が触れにくく、より大きくなってから気づかれる傾向にあります。

滑膜肉腫など痛みを生じやすいものや、神経から発生する悪性末梢神経鞘腫瘍など神経を圧迫して痛みや痺れを伴うものもあります。また、皮膚線維肉腫など皮下の浅い部分に発生する腫瘍では皮膚の色が変わったり、潰瘍(かいよう)になることもあります。大きさが5cmを越える(ゴルフボールより大きな)硬い軟部腫瘍は悪性である可能性も疑い、専門病院を受診されることをお勧めします。

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