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同じ病気を持つ1型糖尿病の患者さんの力になりたい

DOCTOR’S
STORIES

同じ病気を持つ1型糖尿病の患者さんの力になりたい

実直に目の前の相手と向き合う小谷 紀子先生のストーリー

国立国際医療研究センター病院 糖尿病内分泌代謝科 医師
小谷 紀子 先生

医師にはなれないと思っていた

私の父は脳神経外科医でした。幼少期から人の体に興味はありましたが、父の働き方を見ていて「こんな大変な仕事は自分にはできないな」と思っていたため、当時は基礎医学の研究に携わることが将来の目標でした。その目標をかなえるべく大阪大学理学研究科に進学し、卒業後は製薬会社に就職。そこで研究職として医薬品の開発や臨床研究に携わり、忙しくも楽しく働いていました。

そんな研究職としての人生を大きく転換するきっかけとなったのは、自分自身が1型糖尿病を発症したときでした。

「自分自身も糖尿病の診療に携わりたい」という思い

1型糖尿病を発症したのは、結婚後、長女を出産してすぐのことです。最初は病気になったことを受け入れられず、「なぜこんな病気を背負わなければならないのだろう」などと、後ろ向きの気持ちから抜け出せませんでした。しかし、教育入院の期間中、自分がどんな病気になったのかを徹底的に調べているうちに、赤ちゃんの時に1型糖尿病を発症する子もいると知り、気持ちに変化が生じ始めました。もし娘が1型糖尿病になったとしたら絶対に自分が代わりたいと思うのだから、これでよかったと思いました。そして、自分の子どもが1型糖尿病を発症したらそのご両親はどんなにつらい思いをするだろうかと考えているうちに、「自分も1型糖尿病の診療に携われたら」と思うようになったのです。

そして医師になることを決意し、会社を辞めて医学部に入学しました。“医師になる”という共通の目標があったので、年齢の差を感じることなく、若い同級生と過ごした時間はとても刺激的で楽しいものでした。

医師としてのポリシーは物事を先延ばしにしないこと

医師になってから常に大切にしているのは、絶対に「明日やればよい」とは考えないことです。常にベストな判断をしているつもりでも、後から「今の判断で本当によかったのか?」と思うことは起こり得ます。しかし、そのときの疑問を「明日考えればよいか」と放置してしまうと、明日までのわずかな期間に大きなアクシデントが起こる可能性があるのです。医師は一瞬の判断の遅れや小さなミスが患者さんの命に関わることもある仕事ですから、少しでも「あれ?」と違和感を抱いたときは必ず一度振り返って考え直し、できる限りすぐ解決に向けて行動するよう意識しています。

父から教わった、自らを導いてくれる言葉

「神様は見ているから」。これは私が小さい時から父が教えてくれた言葉で、今でも心に刻んでいる言葉です。

この言葉を知ってから、理不尽な出来事に直面して怒ったり悲しんだりしたときも「神様は見てくれている」と思うことで、常に気持ちを切り替えることができました。たとえば病院の廊下にごみが落ちていたとき、それを無視して通り過ぎるか、拾うか、この言葉が選択を導いてくれるのです。

常に正しい生き方を続けることは難しいと思います。自分を正しい方向に導いてくれる言葉を教えてくれた父には今でも感謝しています。

医師になってからは、研究者としての考え方をたたき込んでくださった研究指導の先生、臨床の現場で指導してくださった先生方をはじめ多くの先輩方との出逢いが私の宝になっています。そうした先生方の仕事に対する姿勢には大きな影響を受けましたし、自分自身の仕事への姿勢に取り入れています。

一人ひとりの患者さんに一つひとつのエピソードがある

糖尿病内分泌代謝科は、糖尿病などの慢性疾患を抱えた患者さんを診る科ですから、患者さんとの関わりは必然的に長い年数にわたります。ですから医師は、その患者さんの家族歴や人生の背景なども踏まえてお付き合いをしていくことになります。

私が医師として患者さんと関わるなかで起きたエピソードは本当にさまざまですが、その中でも印象的なエピソードがあります。

私がまだ研修医だったときのことで、とある女性の患者さんを担当させていただく機会がありました。その方は病気への不安が強かったのか、病気についていろいろと私に質問をされました。研修医ですからまだ知識も技術も不足していましたが、分からないことは調べながら、自分なりに患者さんにお答えしました。

その後研修が修了し、患者さんとお会いするのが最後となった日に、患者さんは「ありがとう」と言って私にハイビスカスの花をくださったのです。研修医の自分は何かの役に立てていただろうかと不安だった私にとって、あまりにも嬉しいプレゼントでした。

そのハイビスカス、今でも1年ごとに花を咲かせます。毎年力強く咲くハイビスカスを見るたびに私は初心に帰ることができます。医師としてのスタートは遅く、今でも至らない点があると思っていますが、患者さんが「ありがとう」と言ってくださるだけで、どんな悩みや疲れも吹き飛んでしまいますね。

1型糖尿病の解明と治療の発展を目指して

私は2020年に国立国際医療研究センター病院 糖尿病内分泌代謝科に就任したばかりなので、これからこの病院でやりたいことや、やるべきことが多々あります。なかでも積極的に取り組みたいと考えていることが2つあります。1つ目はまだ分かっていないことが多い1型糖尿病の病態解明と治療発展を目指して、疫学調査や臨床研究などを進めていくこと。そして2つ目は、患者さん一人ひとりに適切な医療を提供できる体制をつくることです。糖尿病などの慢性疾患の治療においては、他科の医師、看護師、栄養士など、多様な職種の医療従事者が連携する“チームワーク”が非常に重要です。さまざまなスタッフがチームになって患者さんを診ることで、主治医1人では気付けないようなことにも気付くことができますから、そのようなチーム医療を患者さんに提供していけたらと思っています。

2020年12月現在、医師になって12年です。若手の先生方と一緒に患者さんを診ることが多いのですが、私から若手の先生に伝えたいことがある一方で、若手の先生方から今までの自分にはなかった考え方などを教えてもらうことも少なくありません。一方的に指導をするのではなく、一緒に考えながら目の前の患者さんを治療していくというスタンスで若手の先生方と関わっていけたらと思っています。

研修医時代からずいぶんと年数が経ち、医師として人並みに経験を積んできましたが、どれだけ年数が経っても「自分の持つ知識は豊富だ」と自信を持って言える日は来ないかもしれません。これからも研修医のときの初心を忘れることなく、患者さんと向き合っていきたいです。

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