院長インタビュー

地域の医療ニーズに真摯に応える横浜市栄区唯一の急性期病院、横浜栄共済病院

地域の医療ニーズに真摯に応える横浜市栄区唯一の急性期病院、横浜栄共済病院
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

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横浜市栄区にある横浜栄共済病院は、同区唯一の急性期病院として地域の2次救急(手術や入院を必要とする重症患者への救急医療)を一身に担っています。また、高齢化が進む地域の医療ニーズに合わせ多くの診療科をもつ総合病院でもあります。そんな同院が現在提供している医療の内容や今後の展望について、院長の土屋(つちや) 弘行(ひろゆき)先生に伺いました。

当院は本郷台にあった海軍(かいぐん)燃料廠 (ねんりょうしょう)の職員と家族のための病院を母体としています。その後は海軍の職員や家族のための職域病院となり、終戦後は地域医療に貢献する “大船共済病院”として再出発しました。戸塚区から栄区が分かれた1986年に“横浜栄共済病院”と改称し、現在は430床を持つ栄区唯一の急性期医療を提供する病院となっています。

救急医療では断らない2次救急を行っており、年間約6,500台の救急車を受け入れています。救急の患者さんは栄区はもとより、隣接する鎌倉市からもいらっしゃっています。また当院は横浜市でもっとも高齢化が進んでいる栄区にあること、高齢の方は複数の病気をお持ちである場合が多いことから、30もの診療科をそろえ高齢の方の医療ニーズに合わせた医療を提供しています。

外観

救急においては24時間365日断らないことを目標とし、主に心筋梗塞などの心血管疾患、脳卒中を中心とした脳血管疾患、転倒による骨折などの運動器疾患などの対応を行っています。当院はとくに心血管疾患と脳血管疾患の救急医療に早くから注力しており、横浜市の救急医療体制づくりにも当院は関わってきました。

当院の循環器内科では心臓血管外科と連携しつつ、救急からの要請があれば約10分間で心臓カテーテル検査や冠動脈形成術といった治療を開始できる体制を作っています。また当院は日本脳卒中協会から一次脳卒中センター(PSC)コア施設の認定を受けており、脳卒中の患者さんに対して短時間での対応を求められるt-PA静注療法(血栓溶解療法)、血栓回収療法による治療を提供しています。

当院の治療の特長は、低侵襲(体への負担が少ない)な治療を積極的に取り入れていることです。

当院では消化器系の外科手術において、内視鏡手術でのがん治療を数多く行っています。とくに胃や食道、大腸の早期がんへの内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)では海外での講義も行っている酒井英嗣先生が治療に当たっており、症例数は年間200件近くに上ります。

また、当院の循環器内科ではTAVI(経カテーテル大動脈置換術)という、血管をX線で撮影する装置と手術台を組み合わせた高機能な手術室がないとできない手術を行っています。TAVIは大動脈狭窄症の患者さんで、体への負担が大きい開胸手術を受けることが困難な方でも治療を可能にするものです。なお、循環器内科の野末剛先生と岩城卓先生は全国で多くの講演を行っている先生で、先生の治療を受けたいと当院へいらっしゃる患者さんが数多くいます。
なお、当院では2024年4月に手術支援ロボット”ダビンチ”を導入し、胃がん大腸がん前立腺がんの手術を渡邊(わたなべ) 透(とおる)副院長、谷口(たにぐち) 桂三(けいぞう)ロボット手術センター長、長島 (ながしま)政純(まさずみ)泌尿器科部長を中心として開始しました。今後も患者さんの体に負担が少なく、入院日数も短縮できる低侵襲な治療を当院は積極的に進めていきます。

当院では前述した手術療法のほか、放射線療法、化学療法のいわゆるがんの3大治療法を全て行っており、患者さん一人ひとりの状況に合わせこの3つの治療法を組み合わせた集学的療法でがん治療を行います。放射線療法では高エネルギーの放射線を照射できるリニアックを始め、多くの新しい機器を使った治療を行っています。化学療法ではさまざまな新薬の登場で外来による治療が進んでおり、当院でもリクライニングチェアを設置した落ち着いた雰囲気の外来化学療法室を15床用意し、治療を受けていただけるようになっています。

高齢の方が多い地域にあることから当院は整形外科にも力を入れています。転倒や骨折による救急の対応はもちろんのこと、脊椎脊髄の病気や変形性関節症、リウマチや骨粗しょう症など、多岐にわたる病気の治療を行っており、年間手術件数は約1,000件に上ります。
さらには、私の専門である“がんロコモ”の治療も2023年4月から始めました。がんロコモは、がんの骨転移(がんが骨に転移すること)やがん治療によって運動器に障害が起こり、動くことが困難になった状態のことです。がんロコモは放置されやすい病気ですが、整形外科でがんの骨転移に対する手術治療を行うことで歩くといったQOLの改善を見込むことができます。早期発見、早期治療が重要になるので、お困りの方はぜひご相談ください。

当院は急性期病院であり、一時的に治療を行ったあとの患者さんは別の施設やご自宅で治療を続けていただくことになります。退院後の流れをスムーズに行い、当院を退院されたあとも引き続き診させていただくためには、地元のかかりつけの先生や回復期、リハビリテーションの医療施設との密な連携が欠かせません。当院では地域連携室のソーシャルワーカーがこれらの施設と深くつながり、一連の流れを滞りなく進めています。

また当院は地域の先生方に当院の登録医になっていただく制度を運用しており、2023年3月の時点で約550ものご登録をいただきました。登録医の先生方と当院の間にはベッドコントロールをしている看護師長に直接電話がつながる“さかえコール”を用意させていただいており、「今から入院してほしい患者さんが目の前にいるが空いていますか?」とお尋ねいただけます。“さかえコール”は予想以上に機能しており、2022年度にご利用いただいた医療機関は147施設、件数にして947件、入院は382件でした。今後もこれらの取り組みを通じて地域のさまざまな医療機関、先生方と連携し、患者さんに寄り添った地域医療を展開していきたいと考えています。

当院の理念は“安心、信頼、そして笑顔”です。また、職員のモットーとしては“明るく楽しく元気よく”を掲げています。職員が明るく楽しく元気よく働いていないと、患者さんも元気が出ません。当院はポジティブな雰囲気をもった病院だと思っているのですが、よりいきいきと働けるよう、私は全部署と年2回、ヒアリングの機会を設けて意見を聞き、話し合っています。また、院長室の近くには提案箱を設置し、いただいた意見に対応しています。これらを通じて、院内の雰囲気がさらに元気よくなれたらよいなと思っています。

栄区は、人口が減少しつつ高齢者が増えている地域です。そこで必要とされるのは急性期の治療から通院、介護サービスまで切れ目なく医療を提供することで、当院の役割もここにあります。

目指すのは地域と社会に貢献できる病院であり、良質な医療を提供できる病院であり、患者さんやご家族、職員も喜ぶ病院です。患者さんの病状、家族構成、取り巻く環境は多様化していますが、我々はそこまで含めて考え、患者さんに満足していただけるよう努力したいと思います。

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