院長インタビュー

地域医療を支え、地域とのつながりを大切にする関門医療センター

地域医療を支え、地域とのつながりを大切にする関門医療センター
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

目次
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1891年に下関陸軍病院の前身である赤間関要塞病院として設立された独立行政法人国立病院機構 関門医療センターは、幅広い診療科を有する総合病院というだけでなく、下関市と長門市の三次救急を担う救命救急センターでもあり、さらに災害拠点病院にも指定されています。

下関エリアの地域医療を守るために、なくてはならない存在といえる関門医療センターの特徴や強み・取り組みなどについて、同センターのセンター長である吉野 茂文(よしの しげふみ)先生からお話を伺いました。

独立行政法人国立病院機構 関門医療センターの歴史は古く、その歴史が始まったのは1891年のことです。この年に下関要塞砲兵第4連隊内に赤間関要塞病院として設立され、その後1936年に下関陸軍病院、1945年に厚生省に移管されて国立下関病院となり、さらに2004年の独立行政法人化を機に現在の関門医療センターとなりました。

内科・女性内科を含め今や34もの診療科があり、病床数についても400床(うちICU6床、救命救急センター24床)を有する当センターは、山口県の中でももっとも人口が多い下関市の医療を支えることをひとつの使命としています。

共に働く仲間を信頼・尊重したチーム医療、多職種連携で“チーム関門”としての連帯を強化し、スムーズかつ患者さんに垣根を感じさせないシームレスな医療提供を日々心掛けています。

地域の医療状況を取り巻く大きな課題としてまず挙げられるのは高齢化の進行ですが、課題はそれだけではありません。特定の場所や診療科に医師が偏ってしまう、いわゆる“医師の偏在”が起こりがちなことも大きな課題である、と私は考えています。

当センターはそうした医療状況に合わせられるよう、以前より体制の見直しなどを行っており、常に地域と時代のニーズに可能なかぎり応えられる地域医療提供を実践するよう心がけております。

当センターは独立行政法人化した2004年に、県内でいち早く総合診療科を開設しました。

総合診療科を開設した最大の理由は“高齢化の進行などが理由で、複数の慢性疾患を抱えている患者さんが多くなり、臓器別の専門家だけでは対応できないケースが増加しているから”です。さらに、地域医療のもうひとつの大きな課題である“医師の偏在によって起こる、診療が行き届かない分野の発生”に対しても、トータルな診療を行える総合診療科は大きなプラスの役割を果たしています。

当科では患者さん一人ひとりが抱えている疾患や不調の緊急性や重要性、問題解決性などを考慮した治療計画を立てるなど、患者さんに納得・安心していただける医療提供を心がけております。

そして総合診療といえばもう1つ、当センターでは2002年より女性総合診療外来も開設しました。女性総合診療外来では女性の一生を心と身体の両方から支えることを目標とし、心のこもった診療を心がけております。

当センターは日本消化器外科学会、日本食道学会、日本胃癌学会、日本乳癌学会などの施設認定を受けております。

特に食道がん胃がん大腸がん肝がん膵臓がんなどの消化器系の癌治療に力を入れており、食道がんの治療に関しては日本食道学会食道外科専門医認定施設であり、2023年4月には日本胃癌学会認定施設Aの認定も受けました。

また乳がんの手術も年間150例近く行っています。

手術においてはできるだけ低侵襲で行えるよう、内視鏡下手術に積極的に取り組んでおります。

高齢化社会が進めば進むほど、骨折や運動器の変性疾患を抱える患者さんも増加し、整形外科の需要が高まります。当科ではそうした状況に対応できるよう、骨軟部腫瘍変形性膝関節症変形性股関節症変形性脊椎症脊椎圧迫骨折関節リウマチなどそれぞれの専門医が診療にあたっています。

また、当科と連携しているリハビリテーション科は365日体制で “遅れのないリハビリ、患者さんのニーズに寄り添ったリハビリ”の提供に努めております。

当センターは、下関市と長門市の医療圏(下関保健医療圏および長門保健医療圏)の三次救急を担う救命救急センターの指定を受けており、当科では24時間365日体制での救急搬送に対応しております。

さらに当センターは災害拠点病院としての役割も担っており、隣接地にはヘリポートも設置しております。このヘリポートではドクターヘリだけでなく海上保安庁や自衛隊のヘリも受け入れるなど、広域の災害医療にも対応できる体制を整えています。

地域医療をより良くしていくためには、私たち医療従事者だけでなく、地域の皆さんひとりひとりの医療や健康に対する意識・知識の高まりも重要であると考えております。

“地域にしっかりと根をおろした、患者さん本位の医療サービス提供”を心がけている当センターでは、患者さんへの情報提供なども積極的に行っております。

また、当センターは地域の皆さんにボランティアとして多大なご協力をいただいている施設でもあります。

“地域の皆さんを医療面で支えているだけでなく、支えてもらっている部分も大いにある”ということをこれからも忘れずに、地域の皆さんとのつながりを大切に考えていきたいと思います。

当センター2Fには、患者図書室“健康応援図書館”があります。

この健康応援図書館には医学専門書(医学雑誌)や医療情報本、医療・健康情報雑誌などが揃っており、落ち着いた雰囲気の中でじっくりと医療や健康について学ぶことができます。

“患者さんやそのご家族だけでなく、より幅広い方々に病気やその治療方法、健康維持について学ぶ機会を提供したい”という気持ちから、どなた様にも閲覧していただけるシステムをとっておりますので、どうぞ気軽にお越しください。(※貸出は入院患者さんのみ可能です)

当センターでは、女性の健康や脳卒中予防などをはじめとした健康応援講座を実施しており、さらに人工呼吸と心臓マッサージ+AEDの使用を含む心肺蘇生法(BLS)をご希望の場所で学べる、出前での救命蘇生講座も実施しております。

他にも研修・講習会などでの講演相談も受け付けておりますので、お気軽にお問い合わせください。

当センターが心がけている“地域にしっかりと根をおろした、患者さん本位の医療サービス提供”の実現のために大きな力のひとつとなってくれているのが、ボランティアの方々による多大な協力です。

ボランティアの方々には外来患者さんの受付や検査室案内のサポート、車椅子の手配などをしていただいているだけでなく、センター内の美化活動や、前述の健康応援図書館の蔵書管理・整理などにもご尽力いただいています。いつも、私たちだけでは行き届かないきめ細やかな部分のサポートをしていただき、とても助かっております。

当センターではボランティアスタッフの募集も随時行っておりますので、もし少しでも興味を持っていただけたなら、参加をご検討いただければ幸いです。

当センターは地域の皆さんの健康と医療を守ることを最大の使命と考え、地域医療の状況を考慮した柔軟な体制を取りつつ、常に患者さん本位の医療提供を心がけていく所存です。

当センターの強みである多職種連携“チーム関門”の、より一層の連携強化を行うなどして、地域の皆さんから信頼される病院となるための努力を続けていきたいと考えておりますので、どうぞ今後も、当センターへのご理解とご支援をよろしくお願い申し上げます。

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