喉のできもの:医師が考える原因と受診の目安|症状辞典

喉のできもの

新潟大学大学院医歯学総合研究科 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学分野 教授

堀井 新 先生【監修】

喉に痛みや違和感があるとき、口の中を鏡で覗き込むと喉にできもののようなものが見えることがあります。原因によっては、喉にかかわる病気が隠れている可能性も考えられます。

  • 喉に白い塊ができて、口臭がする
  • 喉にできたおできを放置していたら声がかれてきた
  • 口の中にできた白いブツブツが激しく痛む

このような症状がある場合、どのような病気が考えられるのでしょうか。

喉にできものが生じた場合でも、さほど心配する必要のないことが多くあります。しかし、中には命にかかわる病気のサインである可能性もあります。

以下は、喉にできものが生じた場合に考えられる病気の代表的な例です。

口内炎

口内炎とは、咽頭や舌、歯肉をはじめとする口腔内にできる粘膜の病気です。白っぽく丸い形であることが多く、食事や歯磨きの際に患部に触れると痛みを伴います。また、状態によっては(うみ)が出たり、潰瘍になったりすることもあります。

口内炎ウイルスや細菌に感染して発症することが多いですが、歯磨きや歯科での治療などでの物理的な刺激、ベーチェット病クローン病などの自己免疫疾患によって潰瘍性の口内炎ができることもあります。

口内炎
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急性咽頭炎(いんとうえん)扁桃炎(へんとうえん)

急性咽頭炎扁桃炎とは、咽頭(口腔と食道の中間)、または扁桃(咽頭部分にあるリンパ組織)がウイルスや細菌に感染して炎症を起こす病気です。

急性咽頭炎扁桃炎を発症すると、喉の痛みや腫れのほか、発熱や倦怠感などの症状を伴うことがあります。また、急性扁桃炎の場合は扁桃に白い塊のようなものができることがあります。

咽頭炎
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扁桃炎
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咽頭・喉頭の良性疾患

咽頭乳頭腫(いんとうにゅうとうしゅ)とは、咽頭にできる良性の腫瘍のことで、ヒト乳頭腫ウイルスへの感染が発症の原因とされています。喉の使い過ぎで声帯にポリープができると声帯の振動が妨げられ、声がかれる症状が出やすいとされています。

声帯に乳頭腫ができると、手術をしても再発を繰り返すことがあります。声がれがどんどん悪くなるときは、悪性の腫瘍の場合もあります。普段見かけないできものを喉に見つけたときは、注意して経過を観察することが大切です。

咽頭嚢胞(のうほう)

咽頭嚢胞とは、喉に粘膜を含んだできもののようなものを指します。通常、放置していても大きな問題はないことが多いですが、できものが大きくなると異物感の原因となる場合があります。

ヘルパンギーナ・手足口病などの感染症

喉など、口の中にできものができる病気には、ヘルパンギーナ手足口病など主に夏季に流行し、子どもに発症することの多い感染症も挙げられます。

ヘルパンギーナは、エンテロウイルスと呼ばれるウイルスが原因で起こる感染症で、感染すると発熱や喉の腫れ、口の中に口内炎、または水ぶくれのような潰瘍ができる症状が出ます。

発症すると口の中が激しく痛んで食欲がなくなることがあるので、子どもが発症した場合は保護者が早めに病院を受診させ、適切な対処を行ってください。

もうひとつの手足口病も、ヘルパンギーナと同じく口内炎のようなものができて激しく痛む病気です。手足口病は病名の通り、発疹が手や足にもできます。このような発疹が現れるほか、人によっては、発症後に爪が剥がれ落ちたり手や足の皮が向けたりすることがあります。

ヘルパンギーナ
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手足口病
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咽頭がん

咽頭がんは咽頭(鼻の奥から食道までの部分)にできるがんのことを指します。咽頭がんを発症すると、食べ物を飲み込んだ際に違和感があったり、声が出しづらくなったり、発症した部分によっては喉周辺(男性でいうと喉仏の裏側あたり)にしこりが現れたりします。

咽頭の上の部分にがんができた場合は鼻や耳、脳神経にかかわってくるので、耳閉感、鼻づまり、鼻血などの症状が出ます。飲酒や喫煙咽頭がんを誘発するので、頻繁に(たしな)む方は生活習慣の見直しが必要です。

また、最近は性習慣の多様化により、オーラルセックスにより扁桃にパピローマウイルスが感染し、それが原因で咽頭がんが発生することが多くなってきています。これらは、酒やたばこを飲まない方にも起こるので注意が必要です。

咽頭がん
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喉にできものがある状態が1週間~2週間以上続く、または風邪をひいていないのにもかかわらず喉にできものがある場合は、早めに最寄りの耳鼻咽喉科への受診を検討しましょう。

受診する際は、できものを発見した時期や痛み、喉の違和感、息苦しさや熱の有無などを詳しく医師に伝えましょう。また、飲酒と喫煙の習慣がある方はその点も話しておくと、診療の助けになることがあります。

受診の目安

診療時間内に受診

翌日〜近日中の受診を検討しましょう。

  • 飲み込みにくさ、痛み、発熱などがある
原因の自己判断/自己診断は控え、早期の受診を検討しましょう。