子どもの喉の痛み:医師が考える原因と対処法|症状辞典
急ぎの受診、状況によっては救急車が必要です。
どうしても受診できない場合でも、翌朝には受診しましょう。
翌日〜近日中の受診を検討しましょう。
気になる・困っている場合には受診を検討しましょう。
WHO Western Pacific Region Office, Field Epidemiologist、東京都立小児総合医療センター 感染症科 非常勤
堀越 裕歩 先生【監修】
子どもが喉の痛みを訴えたとき、風邪を引いたのかなと心配する人も多いでしょう。しかし、喉の痛みを引き起こす原因は多岐にわたり、場合によっては注意が必要なこともあります。
このような症状が見られる場合、どのようなことが原因として考えられるのでしょうか。
子どもの喉の痛みは、病気が原因となって起こっている場合もあります。
喉に痛みを生じる場合、主に次のような病気が考えられます。
急性上気道炎とは、いわゆる風邪のことで、原因のほとんどがウイルスによるものといわれています。発熱や鼻水、喉の痛みや咳などの症状を伴うことが特徴です。多くは自宅療養で自然と治りますが、息が苦しそうな場合や、水分が取れずにおしっこが半日以上も出ない場合には受診を検討しましょう。
インフルエンザは、インフルエンザウイルスによって引き起こされる感染症です。高熱や全身のだるさ、食欲不振などの全身症状が強いことが特徴で、頭痛や関節痛・筋肉痛など、呼吸器以外の症状を伴うこともあります。
喉の奥の“扁桃”という部分にウイルスや細菌が感染し、炎症を起こす病気です。喉の不快感や飲食物を飲み込むときの痛み、発熱などが現れます。また、高熱や体がだるくなる、食欲が落ちるなどの症状が現れ、顎のリンパ節が腫れることもあります。
A群溶血性連鎖球菌という細菌が喉に感染することで起こる感染症です。38~39度の発熱と喉の痛み、体に小さくて赤い発疹や舌にイチゴのようなブツブツができるといった症状が現れます。頭やお腹が痛くなったり、首筋のリンパ節が腫れたりすることもあります。
麻疹は麻疹ウイルスによる感染症です。38度前後の熱や咳、喉の痛み、鼻水や体のだるさなど、風邪のような症状が現れます。また、口の中に特徴的な斑点が見られることがあります。白目の部分が赤くなる、目やに、まぶしさを感じるといった目の症状や下痢、腹痛といった症状を伴う場合もあります。その後、一度熱は下がりますが再び上がり、高熱と共に全身に発疹が出始めます。赤く小さい発疹が現れ、この時期には再度風邪のような症状をぶり返すのが特徴です。ワクチンを2回接種していればかからないか、ごく軽く済みます。
おたふく風邪とも呼ばれる病気で、ムンプスウイルスによる感染症です。片側もしくは両側の唾液腺が腫れると共に、喉の痛みや発熱が現れることもあります。1週間程度で症状は軽快しますが、髄膜炎や膵炎、精巣炎、卵巣炎、難聴などの合併症を起こすこともあるため注意が必要です。
エンテロウイルスというウイルスにより引き起こされる感染症で夏場に流行することが多いです。熱が出たり、口の中にプツプツとした水疱が現れたりすることが特徴です。発熱から1~2日たつと口の中の痛みは強くなり、喉の奥が赤く腫れ、水疱ができます。このため、小さい子どもでは痛みで食事が取りづらくなることもあります。2~4日程度で熱は下がり、口の中の水疱も消えていきます。全体では1週間程度で治るといわれています。
アデノウイルスというウイルスによる感染症です。プール熱とも呼ばれますが、プール以外でもかかります。最初は熱が出て、頭痛、食欲不振、全身のだるさが現れると共に、喉の痛み、目の充血、目の痛みが生じます。まぶしさや目やにを伴うこともあります。これらの症状は3~5日間ほど持続するといわれています。首のリンパ節が腫れ、痛みが生じることもあります。
手足口病は、エンテロウイルスやコクサッキーウイルスの感染が原因となります。熱は出ることもあれば出ないこともあります。手のひらや足の裏、口の中に2~3mm程度の大きさの水ぶくれができます。基本的には良好の経過をたどり、自然に治っていくことが多いです。
喉の痛みを引き起こすのは、感染症だけではありません。アレルギーや異物によって、喉の痛みが引き起こされることもあります。
アレルギーの原因となる飲み物や食べ物によって、喉の違和感、かゆみ、まれに痛みを生じることがあります。重症の場合は唇が腫れたり、息苦しさを訴えたり、吐いたり、ぐったりとしたり、蕁麻疹が出るなどの症状が現れることがあります。これは“アナフィラキシーショック”と呼ばれる非常に危険な状態です。アレルギーの原因となる代表的な食品には、卵や牛乳、小麦、そば、かに、えび、落花生などがありますが、その他の食品も原因になり得ます。また食品以外にも飲んでいる薬が原因で起こることもあります。
異物を飲み込んでしまったことで喉を傷つけて、喉の痛みにつながることがあります。子どもでは魚の骨が喉に刺さることで痛みを生じることが多いです。おもちゃやコインなど食品以外のものを飲み込んでしまう場合もあります。多くの場合、食道から胃へと落ちますが、気道に落ちると窒息や呼吸困難、咳などが出ることがあり、異物の大きさや詰まった位置によって症状やその程度は変わってきます。口の中に入れやすいものを小さな子どもの周りに置かないことが重要です。
緊急性のある喉の痛みで、急激に悪化する息苦しさがある場合、よだれを垂らすなど唾液を飲み込むことができない場合、異物で窒息が疑われる場合は、ただちに病院を受診しましょう。喉の痛みで水分が取れない場合も脱水になってしまうことがあるので、半日以上おしっこ出ていなければ受診しましょう。子どもの場合、受診するのは主に小児科になります。医師には、症状が出る前後の状況・喉の痛みに伴って出ているほかの症状などを正確に伝えるようにしましょう。
日常生活上の習慣などが原因で子どもに喉の痛みが現れることがあります。主な原因とそれぞれの対処法は以下のとおりです。
空気が乾燥していると鼻や喉の粘膜も乾燥しやすくなってしまいます。喉が乾燥していると、空気中の異物を外に出すはたらきが弱まり、喉に炎症が起こりやすくなります。
乾燥する季節は加湿器を使うことも選択肢の1つです。また、夏冬問わずエアコンなどでも喉が乾燥してしまうため、使い過ぎには注意しましょう。マスクでは吐く息に水分が含まれるため、湿ったマスクを着けて息をすることで乾燥を防ぐことができます。
喉は声を出すために重要な役割を果たしています。そのため、大きな声を出し過ぎてしまうと声帯に炎症が起こり、痛みを感じることがあります。
しゃべることを控え、できるだけ声帯を休ませることが大切です。
市販の解熱鎮痛剤は、痛みを和らげることができます。ほとんどの喉の痛みは、数日で自然によくなります。痛みがとても強い、あるいは長く続く場合は、医療機関へ相談してみましょう。