指がかゆい:医師が考える原因と対処法|症状辞典
急ぎの受診、状況によっては救急車が必要です。
どうしても受診できない場合でも、翌朝には受診しましょう。
翌日〜近日中の受診を検討しましょう。
気になる・困っている場合には受診を検討しましょう。
山梨大学医学部皮膚科学講座 教授
川村 龍吉 先生【監修】
指はさまざまな物質に触れるため、物理的な刺激を受けやすい部位です。指のかゆみはよくみられる症状であり、原因は多岐にわたります。
これらの症状がみられる場合、どのような原因が考えられるでしょうか。
指は日常的に多くの刺激にさらされるため、さまざまなトラブルが生じやすい部位です。指のかゆみには多くの原因がありますが、中には特定の病気が背景にあることもあります。
指のかゆみは、指の皮膚に生じる病気によって引き起こされることがあります。
手湿疹は、外部の刺激やアレルゲン*の接触によって手に湿疹が現れる病気です。一般的に手荒れとも呼ばれます。主な原因は洗剤や薬剤の頻繁な接触による皮膚へのダメージです。水仕事の多い方や、美容師・理容師など洗剤・薬剤に多く触れる職業の方よく見られます。そのほか、金属や洗剤などの化学物質に対する刺激やアレルギー反応、アトピー性皮膚炎が原因になることもあります。症状としては、手の皮膚の乾燥、赤み、かゆみ、ヒリヒリ感などが生じます。重症化すると、皮膚のひび割れや水ぶくれがみられることもあります。手の指や爪の先、手のひらなどに症状が現れやすく、慢性化すると皮膚が厚くなる苔癬化を引き起こします。
*アレルゲン:アレルギーを引き起こす物質のこと。
汗疱は、手のひらや指、足の指などに小さな水ぶくれがたくさんできる病気です。水ぶくれはかゆみを伴うこともあります。多くの場合は自然に治りますが、汗疱の生じている部位を掻いたり刺激したりすると悪化し、赤みや強いかゆみ、痛みなどを伴う異汗性湿疹となる場合もあります。
春から夏の汗をかく時期に発症頻度が高く、多くの場合、気温が下がってくると症状が落ち着きます。
凍瘡は、寒冷刺激によって手足などの体の末端部位に血行不良が起こる病気です。一般的にしもやけと呼ばれます。気温5℃以下で1日の気温差が10℃以上ある場合に発症しやすいといわれています。主な症状は皮膚の赤み、腫れ、かゆみ、痛みです。特に体の末端にある手や足の指先、耳たぶなど血流が乏しくなりやすい部位に症状が現れます。
手白癬とは、カビの一種である白癬菌が手に感染することで発症する病気です。手水虫と呼ばれることもあります。多くの場合、足白癬(足の水虫)の白癬菌が手に感染して発症すると考えられています。手白癬の症状は主に3つのタイプがありますが、もっとも多いのは手のひらが硬くなる角化型です。一方、指間型では指の間がカサカサしたり、かゆみを伴ったりします。また、小水疱型では、指の腹や手のひらにかゆみを伴う小さな水ぶくれが現れることがあります。手白癬がある場合は、足や爪も白癬菌に感染している可能性が高いため注意が必要です。
掌蹠膿疱症は、手のひらや足の裏に水ぶくれや膿疱(膿のたまった発疹)ができる病気です。発疹ができるときにかゆみを伴うことが多く、症状は軽快と悪化を繰り返します。骨や関節に炎症が生じるると、首や胸、腰が痛む“掌蹠膿疱症性骨関節炎”を合併することがあります。
はっきりとした原因はわかっていませんが、喫煙や扁桃腺の細菌感染などが発症や悪化に関わっていると考えられています。
カンジダ性指間びらん症はカンジダという真菌の感染によって生じ、指と指の間にかゆみや赤み、皮むけなどが生じます。カンジダは高温多湿の環境で増殖しやすく、広げにくい中指と薬指の間に多く生じます。気温が高く湿度の高い夏に発症頻度が高く、特に水仕事の多い方がかかりやすい病気です。
全身の病気が原因で指のかゆみが生じる場合もあります。
水痘・帯状疱疹ウイルスにより、皮膚に痛みやかゆみ、赤い発疹が生じる病気です。多くの場合、体の左右どちらか片方の神経に沿って帯状に症状が現れます。好発部位は胸や背中ですが、腕や手に症状が出ることもあります。
原因となる水痘・帯状疱疹ウイルスは、水痘と帯状疱疹を引き起こすウイルスです。初感染の際は水痘として発症し、症状が治まった後も体の中に潜んでいます。何らかの原因で免疫力が低下するとウイルスが活動を再開し、帯状疱疹を発症します。
多汗症は、汗を過剰にかく病気です。全身の発汗が多くなる場合と、手のひらや腋、足の裏など体の一部の発汗が多くなる場合があります。
手が汗で湿っているとあせもができやすくなったり、真菌や細菌の感染が起こりやすくなったりして、かゆみが生じることがあります。
指のかゆみはさまざまな病気によって引き起こされている場合があります。長引く場合やかゆみが強い場合、ほかの症状も生じている場合は軽く考えずに医療機関の受診を検討しましょう。
医療機関を受診する場合、まずは皮膚科が適しています。
受診の際は、いつ頃から症状が出ているのか、ほかに生じている症状はないかなど、症状の特徴を医師に伝えましょう。また、水仕事の頻度や最近指で触れたものなども具体的に伝えるようにしましょう。
日常生活上の原因によって指のかゆみが起こっている場合もあります。
皮膚が水に濡れるとバリア機能が低下し、さまざまな物質による影響を受けやすくなります。また、洗剤や薬剤は手湿疹の原因となります。
そのため、水仕事の多い方や、美容師・理容師、看護師、調理師など水や洗剤・薬剤に多く触れる職業の方は、高頻度で指のかゆみが生じます。
水仕事をする場合は、ゴム製や塩化ビニール製の手袋をはめて皮膚に水や洗剤が直接触れないようにしましょう。ただし、素手でゴムや塩化ビニールの手袋をはめると手荒れが悪化する場合があるため、下に綿の手袋を着用しましょう。
水や洗剤・薬剤に多く触れる職業の方は、その職業や業務内容に応じて適切な保護手袋を着用するようにしましょう。
指が乾燥していると、かゆみを感じやすくなります。特に子どもや高齢の方は皮脂の分泌量が少ないため、皮膚が乾燥しやすくなります。乾燥によるかゆみは湿気の少ない秋~冬に生じやすく、長湯や熱い湯での入浴、冷暖房による屋内の乾燥も原因になります。
皮膚を乾燥させる生活習慣がある場合は改善し、スキンケアに努めましょう。皮膚を清潔に保つこと、保湿剤を適切に使用することがすすめられます。
日常生活での対処を行っても指のかゆみがよくならない場合には、思いもよらぬ原因が隠れていることもあります。症状が強い場合や長引く場合は一度医療機関に相談しましょう。