皮膚がかゆい:医師が考える原因と対処法|症状辞典
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メディカルノート編集部 [医師監修]【監修】
皮膚を引っ掻きたくなるような不快な皮膚のかゆみは、ムズムズする・チクチクする・熱い感じがするなど、さまざまに感じられます。このようなかゆみが皮膚の一部に限局する場合もあれば、全身に及ぶ場合もあります。
かゆみは皮膚の乾燥によって起こることが広く知られていますが、他にもさまざまな原因があり、思わぬ病気が隠れていることもあります。
このような症状がみられる場合、どのような原因が考えられるでしょうか。
病気による皮膚のかゆみの原因を大きく分けると、皮膚に原因がある場合と内臓に原因がある場合の2つがあります。病気によって症状は異なりますが、一般的に皮膚が原因なら湿疹など皮膚症状を伴い、内臓が原因なら皮膚以外の症状がみられます。
かゆみを引き起こす原因のうち、皮膚の病気には主に以下のようなものがあります。
何らかの物質が皮膚に接触し、それが刺激となって皮膚に炎症を起こす病気です。一般的に「かぶれ」と呼ばれるもので、原因物質には化粧品や化学物質、金属、うるしなど、さまざまなものがあります。
症状は原因物質に触れた部位に湿疹が現れるのが特徴です。多くの場合かゆみや痛みを伴い、ときに腫れあがったり、水ぶくれを作ったりすることもあります。
皮膚が乾燥することで湿疹が起こる病気です。乾燥によって角質層の水分が不足し、皮膚の柔軟性が失われ、ひび割れや皮むけが起こるようになります。この段階を乾皮症といい、さらに悪化すると湿疹が現れる皮脂欠乏性皮膚炎湿疹(皮膚炎)となります。
皮脂欠乏性皮膚炎湿疹(皮膚炎)でみられる湿疹は、一般的に強いかゆみや赤みを伴い、水ぶくれになることもあります。かゆみが強いために、掻きむしって血が出てしまうことも少なくありません。
全身または部分的に強いかゆみを伴う湿疹が生じ、これがよくなったり悪くなったりを繰り返す皮膚の病気です。年齢に応じて症状が現れやすい部位に違いがみられ、乳児期では頭・顔、幼少時期では首回り・肘の内側・膝の裏、思春期以降では顔・首などに好発します。
湿疹は赤く盛り上がったものや、ジクジクした水分の多いものなどさまざまで、長年にわたって続くと皮膚が厚く硬くなることもあります。
蕁麻疹とは、皮膚の一部に赤く盛り上がった発疹(膨疹)が生じる病気です。ウイルスなどによる感染症が原因となる場合や、卵、牛乳、小麦、蕎麦、甲殻類などの食べ物に対するアレルギー反応の結果として、蕁麻疹が起こることもあります。
かゆみを伴う膨疹が急激に発症し、ときに体全体に及ぶ場合もありますが、しばらくすると跡形もなく消えていきます。多くは繰り返しませんが、まれに1か月以上続くこともあります。
角化した皮膚に炎症が生じる病気を乾癬といいます。乾癬にはいくつかの病型がありますが、一般的に尋常性乾癬を指します。
発症すると、銀白色の鱗屑(皮膚の粉)を伴う盛り上がりのある赤いブツブツが現れます。頭・肘・膝・お尻に好発し、かゆみは約半数の方にみられます。
白癬菌やカンジダ、マラセチアなどの真菌によって引き起こされる皮膚の感染症です。感染するとその部位に鱗屑や赤み、ひび割れ、ジュクジュクした湿疹などの皮膚の変化が現れます。かゆみを伴う場合もあります。
かゆみを引き起こす原因のうち、内臓の病気として代表的なものに以下があります。
肝臓に炎症を起こす肝炎、肝臓全体が硬くなる肝硬変、肝臓の機能が著しく低下する肝不全など、肝障害にはさまざまなものがありますが、このような病気で皮膚にかゆみが起こる場合もあります。
かゆみ以外の症状としては、全身倦怠感や食欲低下、吐き気、黄疸(皮膚などが黄色くなる)などが代表的です。ただし、肝臓は「沈黙の臓器」といわれ、自覚症状が乏しいことが多く、かゆみ以外に症状がないケースもみられます。
腎臓の機能が著しく低下する腎不全や、血液中のタンパク質が減少するネフローゼ症候群なども皮膚のかゆみの原因になりえます。腎障害では体内に水分が溜まることでむくみが起こることが多く、大抵は顔や足に限局した後、全身性のむくみへと進行していきます。他の症状として、息苦しさや疲労感、尿の泡立ちなどもあります。
血液中のブドウ糖の濃度(血糖値)が高くなる病気です。ほとんどの場合、発症初期には自覚症状がありません。悪化した場合に、多尿や口の乾き、多飲、食欲増進、疲れやすい、体重減少、皮膚のかゆみなどの症状が現れるようになります。かゆみは全身に起こる場合もありますが、陰部のかゆみが特徴とされています。
かゆみが激しく掻きむしってしまう場合、かゆみがひどくなっている場合、発疹など皮膚の病変が広がっている場合、発熱や体のだるさなどの全身症状がある場合には、早めに病院を受診したほうがよいでしょう。
呼吸困難感や喘鳴(ぜいぜいすること)、意識がもうろうとするなどの症状を伴う場合には、救急車を呼んだり救急外来を受診したりするなどの対応が求められます。
原因の中には内臓の病気もありますが、診療時間内に受診する場合、まずは皮膚科への受診でよいと思われます。診察の際、かゆみなど皮膚症状が現れ始めた時期、かゆみの程度や場所、きっかけ(何かに触れた後・食べた後に症状が出たなど)、他に気になる症状があればその旨を医師に伝えましょう。
皮膚のかゆみは、日常生活上の原因でもよく起こります。主な原因と対処法は以下の通りです。
加齢やホルモンバランスの変化、化学物質(洗剤・シャンプー・化粧品など)の刺激、冷暖房の長時間使用など、さまざまな原因によって乾燥が引き起こされます。皮膚が乾燥すると外的刺激に対して敏感になるため、ちょっとした刺激で炎症を起こしたり、かゆみが誘発されたりするようになります。
乾燥を防ぐには、まず原因を排除することが大切です。洗剤による手の乾燥なら食器を洗う際にビニール手袋をする、冷暖房が原因と思われる場合は使用時間を短くする・加湿するなど、それぞれの原因に対して対策をとりましょう。
また、しっかりと保湿することも非常に大切です。手洗いや洗顔、入浴後のほか、乾燥が気になるときにはボディークリームなどで保湿するようにしましょう。
衣類が皮膚への刺激になって、かゆみを誘発する場合があります。刺激になりやすい素材には、ウールやナイロンなどが挙げられます。
綿や絹などの肌に優しい素材であれば、かゆみが起こりにくくなります。衣類によるかゆみを防ぐために、このような素材のものを着るようにしましょう。
自宅で飼っているペットの毛が衣類に付くなどして皮膚に触れると、それが刺激になってかゆみが起こる場合があります。
また、ペットの毛に対してアレルギー反応を起こすことも珍しくありません。この場合、皮膚に湿疹やかゆみなどの症状が出るようになりますが、皮膚だけでなく目や鼻、喉といった他の部位の症状が出現することもあります。
衣類にペットの毛がついている場合には、粘着式のクリーナーなどを使用するとある程度除去できます。除去したとしても、室内に衣類を干していたり床置きしたりしているとペットの毛がつく可能性があるため、衣類はクローゼットなどに入れておくようにしましょう。
また、こまめに掃除をして、室内からできる限りペットの毛を取り除くようにしましょう。明らかにかゆみの原因がペットの毛で、入念に掃除しても症状がおさまらない場合には、飼わないか、屋外で飼育して毛を室内に持ち込まないなどの対策が必要になってきます。
日常生活上の原因に対して対策を行っても症状がおさまらない場合には、一度病院を受診することを考えましょう。