2017年11月24日(金)〜11月26日(日)、石川県金沢市の石川県立音楽堂・ANAクラウンプラザホテル金沢にて、第36回日本認知症学会学術集会が開催されます。今回は「認知症を診る、治す、防ぐ:地域から研究へ、研究から地域へ」をテーマに、国内外からのエキスパートによる講演や、シンポジウム、多職種連携ワークショップなどが行われる予定です。第36回日本認知症学会学術集会企画委員会会長の山田正仁先生に、本学術集会に向けた抱負を伺いました。
日本認知症学会は、認知症に関する基礎・臨床の諸分野における科学的研究の進歩発展をはかり、その成果を社会に還元することを目的として、1982年に創設されました。
認知症の患者数は世界中で4,700万人を超え、今後も増えていくと予測されます。我々は、認知症診療に携わるさまざまな診療科の医師・薬剤師・看護師・介護スタッフなど多様な職種の方々が認知症への理解を深め、よりよい医療・介護を行うための協力体制を築きたいと考えています。
日本認知症学会には、神経内科と精神科を中心に、老年医学科や脳神経外科を含めて、あらゆる領域の専門家が集まります。学術集会を通して、治療に携わる者それぞれが自身の専門以外の領域について知見を深め、偏りなく多分野を横断する形で認知症そのものを理解することで、よりよい認知症治療が可能になります。
第36回日本認知症学会学術集会は「認知症を診る、治す、防ぐ:地域から研究へ、研究から地域へ」をテーマに開催されます。多くの専門家を招き講演を行うなかで、地域における認知症のコホート研究(特定の地域や集団に属する人々を対象に、長期間にわたり健康状態と生活習慣や環境などさまざまな要因との関係を調査する研究)や臨床研究を活用し、それらに基づき基礎研究を発展させ、その成果を患者さんの診療や地域での予防へ還元することを大きなテーマにしています。
私たちは、石川県能登半島にある中島町(なかじままち)で認知症の調査を継続して行い、住民のライフスタイルと将来の認知機能の関連性を調べています。この研究では、住民のなかで認知機能が正常な方々約2,000名を対象に食事内容や運動習慣などを評価し、5〜10年後という時間を経て認知機能がどのように変化するかを調べ、その関連性を調べています。一方、すでに認知機能が低下している方々に関しては治療を行います。さらに2016年からは、AMED(国立研究開発法人日本医療研究開発機構)の研究として、中島町を含む全国の高齢者1万人を対象とした認知症に関する大規模地域コホート研究を行っています。
中島町でのコホート研究を通して、緑茶を習慣的に飲んでいる方々は将来、認知症や軽度認知障害になりにくいことがわかりました。緑茶が認知症の抑制に有用であるとすれば、その有効成分を明らかにすることで、認知症の予防・治療に利用できるはずです。研究を進めるなかで、茶カテキンなどのポリフェノール類が有力候補にあがりました。私たちは、数十種類のポリフェノールの化合物を用いて、認知症の原因となるアミロイドβ(ベータ)蛋白の凝集を抑制できるかを調べる実験を行いました。試験管による実験、モデル動物による実験を経て、最も優れた抗アルツハイマー病効果を示したポリフェノールを豊富に含む試験食品(ハーブ抽出物)を用い、地域での認知症予防介入試験、病院での早期アルツハイマー病を対象とする臨床試験を実施中です(いずれもプラセボ対照二重盲検ランダム化比較試験)。
これまでは地域ごとに調査項目や評価基準に差があったため、地域コホート研究で得られた結果が他地域でも同様か否かを判断するのは困難でした。しかし2016年から始まった1万人コホート研究では、調査対象となる食事内容(食品)、運動習慣・運動能力、認知機能などの調査項目をすべて揃え、全国の地域コホートで評価基準を統一しています。統一された評価基準の導入により、大規模な地域コホート研究が初めて可能になりました。
本学術集会は3日間の開催期間に、プレナリーレクチャー、学術教育講演、30ほどのシンポジウム、CPC、ホットトピック徹底討論、多職種連携ワークショップなどが行われます。2017年夏に改定された認知症の診療ガイドラインのレクチャーや、アルツハイマー研究の進歩と将来の展望について、最新情報を交えて学ぶことができます。また日本認知症学会の会員でないメディカルスタッフ(研究職を除く)の方に関しては、3日間通し6,000円、11/26(日)のみの場合2,000円で参加申し込みが可能です。(プログラムの詳細はこちらをご覧ください。)
テーマ:認知症地域コホート研究を起点とする予防・治療法の開発
テーマ:認知症疾患診療ガイドライン2017 の改定のポイント
テーマ:アルツハイマー病研究の進歩
テーマ:Population studies of dementia over time, what can they tell us about the future of dementia?
テーマ:わが国および世界の認知症対策
テーマ:Diagnosis and management of DLB : a new guideline and hot topics
テーマ:軽度認知障害とプレクリニカルAlzheimerの概念
テーマ:アルツハイマー病
テーマ:高齢者非AD タウオパチー
テーマ:特発性正常圧水頭症
テーマ:レビー小体型認知症
テーマ:前頭側頭葉変性症
テーマ:血管性認知症
テーマ:プリオン病
テーマ:認知症施策: 将来へ向けた提言
テーマ:シヌクレイノパチーの分子病態をめぐる研究の進歩
テーマ:AD のリスク遺伝子とその分子病態
テーマ:ヒトにおけるオリゴマー仮説のエビデンス
テーマ:血管性認知障害の分子病態と治療
テーマ:認知症と自動車運転: 多職種連携の視点から
テーマ:核酸医薬による認知症・神経変性疾患の治療法開発
テーマ:アルツハイマー病脳内炎症の中核機構に迫る
テーマ:アルツハイマー病の分子イメージング
テーマ:Iatrogenic transmission of prion and prion-like proteins in humans
テーマ:アルツハイマー病に対する疾患修飾療法の治験の最新情報と今後の展望
テーマ:認知症におけるタンパク質伝播について議論する
テーマ:記憶のメカニズムとシナプスイメージング
テーマ:地域における認知症診療体制
テーマ:Cerebral amyloid angiopathy : update
テーマ:孤発性タウオパチー(PSP/CBD)の臨床と病態
テーマ:認知症の症候学の進歩
テーマ:生活習慣・生活習慣病と認知症・アルツハイマー病
テーマ:Dementia cohort studies : the East & the West
テーマ:BPSD のメカニズムと治療・予防
テーマ:レビー小体病のスペクトラム
テーマ:認知症を呈する白質脳症
テーマ:脳神経外科と認知症
テーマ:レビー小体型認知症の診断と治療の進歩
テーマ:前頭側頭葉変性症の分子病態と診断・治療
テーマ:自己免疫性神経疾患と認知症
テーマ:抗アミロイドβ 薬の開発から見えた今後の認知症創薬研究の展望
テーマ:認知症初期集中支援チームの現状と課題
テーマ:重度認知症者の終末期における医療と介護
テーマ:エクソソームを介する非細胞自律的な蛋白質凝集・神経変性の抑制
テーマ:個人情報保護法改正と医学研究
テーマ:Alzheimer’s disease: phenotypic variability and its molecular backgrounds
北陸認知症プロフェッショナル医養成プラン(認プロ)
第4回市民公開講座 11/26(日)14:00〜16:25
認プロ・第36回日本認知症学会学術集会ジョイント企画
認知症〜みんなで知ろう、防ごう、支えよう〜
テーマ:Brain Amyloidosis as a Target for the Treatment and Prevention of Alzheimer’s Disease
テーマ:脳梗塞・脊髄損傷に対する再生治療~医師主導治験による実用化~
テーマ:認知症疾患臨床における治療の進歩
テーマ:専門医の診察室へようこそ ロールプレイに学ぶ 認知症正確な早期診断のコツ
テーマ:DLB診断update: 早期介入を見据えて
テーマ:アルツハイマー病の早期診断と先制医療構想
テーマ:
テーマ:認知症先制医療の現状と展望
テーマ:認知症の早期発見・早期介入~現状と展望~
テーマ:認知症の薬物療法 最新のエビデンスレビュー
テーマ:パーキンソン病における認知機能障害と治療マネジメント—ガイドラインを踏まえて—
テーマ:BPSD様症状に対して効果が期待出来る漢方薬について
テーマ:レビー小体型認知症:最新の知見
テーマ:神経炎症イメージングを用いたアルツハイマー病病態の可視化
テーマ:What we find out from the results of current DMTs clinical trials
テーマ:「もの忘れ外来」のパラダイムシフト 古典と最先端神経画像の境界線
テーマ:認知症診療に活かす漢方
テーマ:認知症画像診断の最前線
テーマ:心房細動と認知症~超高齢社会における脳梗塞・認知症予防戦略~
<セミナー全体テーマ>Lewy Body Dementia
<個別演題テーマ>
本学術集会では、その道の第一人者を招いてさまざまな講演やレクチャーを行います。認知症に関する初歩的な知識から先端的な研究まで、3日間というコンパクトな時間で幅広く学べるため、将来的に認知症を専門にしたいと志す方には最適です。
医療の現場では、明確なエビデンスに頼らず判断を迫られる状況に多く直面します。そのような状況で良質な判断をするためには、まだエビデンスがなく議論の余地がある領域についても深く理解しておくことが大切です。学術集会を通してアカデミックな議論の場に身をおき、最新の治療や研究について意欲的に学ぶことは、一流の認知症診療を患者さんに提供することにつながるでしょう。
学会名称 :第36回日本認知症学会学術集会
テーマ :認知症を診る、治す、防ぐ:地域から研究へ、研究から地域へ
学術集会長:山田正仁(金沢大学大学院医薬保健学総合研究科 脳老化・神経病態学 教授)
開催日程 :2017年11月24日(金)~2017年11月26日(日)
会場 :石川県立音楽堂(石川県金沢市昭和町20-1)
ANAクラウンプラザホテル金沢(石川県金沢市昭和町16-3)
第36回日本認知症学会学術集会の詳細は以下URLよりご確認ください。
国家公務員共済組合連合会 九段坂病院 院長
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