院長インタビュー

“人道・博愛”の精神で地域の人々を守り続ける福井赤十字病院

“人道・博愛”の精神で地域の人々を守り続ける福井赤十字病院
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

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福井赤十字病院は、1925年の開設以来、福井市を中心とした地域の医療に長く貢献し続けてきた歴史ある病院です。2025年に100周年を迎える同院の特徴や力を注ぐ取り組みについて、院長の小松 和人(こまつ かずと)先生にお聞きしました。

先方提供

福井赤十字病院は、大正時代の1925年4月に日本赤十字社福井支部病院として開設された歴史ある病院です。1948年6月には福井地震によって建物の倒壊という甚大な被害に遭いながらも再建を果たし、1957年には総合病院となりました。

その後も地域医療のニーズに幅広く応えるべく成長を続け、地域医療支援病院や災害拠点病院(地域災害医療センター)、原子力災害拠点病院、地域がん診療連携拠点病院など数々の責務を担う当院は、今では25科の診療標榜科と529床の病床を有する総合病院として、地域医療に貢献しています(2024年7月時点)。

2024年1月の能登半島地震では、災害派遣医療チーム(DMAT)を派遣して現地の入院患者さんの集団搬送などを行い、そのほかにも災害医療コーディネートチームや救護班、こころのケア班の派遣を行いました。

そんな当院の理念は“人道・博愛の精神のもと、県民が求める優れた医療を行います”というものです。この理念に則り、複数の診療科で緊密に連携して治療にあたる“診療部門のセンター化”の推進や、手術支援ロボットや高精度放射線治療装置をはじめとしたその時々で新しい医療設備の導入も積極的に実施するなど、専門的な医療をできるだけ患者さんにスムーズに提供できる体制づくりに努めています。

当院は日本脳卒中学会より一次脳卒中センター(PSC)コアとして認定されています(2024年7月時点)。脳梗塞(のうこうそく)の患者さんが搬送されてきた際には、脳神経外科と神経内科で構成された“脳神経センター”で各分野のスタッフが迅速に対応しています。

また当センターには、急性期脳卒中専門の集中治療室である脳卒中ケアユニット(SCU)を整備しています。24時間365日体制で常勤の医師が待機し、迅速かつ低侵襲(ていしんしゅう)な(体への負担が少ない)治療を目指して診療に従事しています。

さらに、急性期の脳卒中治療をより安全かつ効果的に行うことを目指し、脳卒中の診断と治療計画に特化した画像解析ソフトウエアの導入や、円滑な議論と迅速な治療方針の決定をサポートする医療関係者間コミュニケーションアプリ“Join”の活用にも取り組んでいます。

消化器センターは、多種多様化する消化器疾患の病態や症状に対応するために、内科・外科の両方の視点を持ってよりよい診療を追求してきました。たとえば、消化器内科医と消化器外科医が隣接したブースにおいて外来診療を行っています。これにより内科外科間の物理的かつ心理的な垣根を取り払い、強固な連携および協力体制と、迅速かつ合理的な診療を共に実施することを目指してきました。

消化器内科においては、積極的に消化管内視鏡検査を行っています。上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)の実績は年間8,982件、下部消化管内視鏡検査(大腸カメラ)の実績は年間2,318件でした(※いずれも2022年4月〜2023年3月集計)。

2023年4月には、肝胆膵領域(肝臓、胆管、胆のう、膵臓(すいぞう))のがんの早期発見や治療成績向上に向けて“肝胆膵専門外来”を開設しました。肝胆膵領域のがんは手術の難易度が高く予後もあまりよくない、いわゆる難治性のがんも多く含まれます。特に、膵臓がんはいまだに早期発見が難しい病気の1つです。そこで当専門外来では、喫煙、肥満、常習飲酒、血縁の家族や親類が膵臓がんや胆道がん(胆嚢がん胆管がん)を罹患した、糖尿病、慢性肝炎慢性膵炎(まんせいすいえん)といったリスクファクターとなりうる生活習慣や持病のある方を対象に、外来診療を行っています。この取り組みに通じて、がんを早期に発見できる方を1人でも多くできたらと思っています。

腎臓・泌尿器科では、腎臓内科領域として腎不全の患者さんを少しでも減らすべく慢性腎臓病に対する治療や腎生検による診断を行うとともに、泌尿器科領域として悪性腫瘍(あくせいしゅよう)尿路結石排尿障害、小児泌尿器科、女性泌尿器科の病気などに対応してきました。

また、前立腺がんに対してはダヴィンチを用いたロボット支援下の腹腔鏡下手術(ふくくうきょうかしゅじゅつ)も積極的に行っています。前立腺がんが見つかった場合、病気の進行度や患者さんの体の状態に応じて治療選択を検討します。当院では、無治療での経過観察、ロボット支援下で行う腹腔鏡下手術、強度変調放射線治療(IMRT)、内分泌療法という選択肢を備え、患者さんの意思を尊重しながら治療の方針を決定します。

我々は「地域の皆さんにもっと当院のことを知っていただきたい」との思いから、広報活動と情報発信にも力を入れております。たとえば、2002年7月に広報誌“ほやほや”を創刊しました。この広報誌では、医療・健康の情報や当院の取り組みなどを掲載するほか、調理師のおすすめレシピ紹介や医師のQ&Aコーナー、ホームエクササイズの紹介などを掲載し、どなたにも楽しんで読んでいただける紙面づくりを心がけてきました。バックナンバーは全て当院ホームページ上にPDFで公開していますので、ぜひご一読ください。

ほかにも、看護部の取り組みや日常のちょっとした気付きなどを綴る看護部ブログや、まだまだフォロワー数は少ないですが、公式SNSで当院の取り組みやイベント、医療・健康情報などを発信しています。さらに、市民公開講座も実施中です。コロナ禍ではオンラインでの開催となりましたが、2023年からは対面での開催が叶いました。市民公開講座は後日当院ホームページ上でアーカイブ配信しているものもありますので、興味のあるテーマがございましたらぜひご覧ください。

当院は2025年に創立100年を迎えます。この100年で医療は目覚ましい進歩を遂げましたが、地域の高齢化も進行するなど、地域の課題も浮き彫りになってきました。

当院は常によりよい医療提供ができるよう職員一同で協力して取り組んでいますが、高齢化が進む地域の課題にもしっかりと対応するには、当院自体の努力はもちろんのこと、地域の医療機関との連携強化も必要不可欠です。2025年に控えた地域医療構想(医療機能の最適配置と連携)の実現を叶えるためには、当院がその構想を支える柱の1つとなる必要があります。そこで“病院単独ではなく地域の総合力で医療を完結させる”体制を実現するべく、2024年度中には電子カルテを全面更新し、地域の医療機関が迅速に診療情報を共有できる環境を整備して切れ目のない医療提供に繋げていく所存です。

今後も地域医療のために努力を惜しまず歩んでまいりますので、皆さんのよりいっそうのご支援、ご協力をお願いいたします。

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