気管支喘息の治療は、どのように行われるのでしょうか。この記事では、重症化を防ぐための注意点、そして重症度別の治療法について説明します。
気管支喘息の発作が起きたときは、気管支を広げる吸入薬を使えば良くなることが多いです。その後も “たまたま”刺激が加わらず、しばらく症状なく過ごせる場合もあります。しかし気道の弱い炎症はずっと続いていて、風邪やホコリなどの刺激があれば、すぐに発作が起きてしまう状態です。
発作を繰り返すと気道を構成している組織が変形して、治療後も気道の狭い状態がもとに戻らなくなります。そのため、常に呼吸がしにくい状態となり運動や日常生活が制限されてしまう可能性や、感染を契機に呼吸不全となり死に至る場合もあります。現在でも亡くなっている方がいる怖い病気です。しかし,正しい治療に取り組むことで重症化を防ぎ、症状なく日常生活を送ることが可能です。
気管支喘息の治療は、現在の重症度を知ることから始まります。これは発作が起きた時の治療のため、そして発作を防ぐ治療のためです。
発作の強度は、下記の表にある4つに分けられます。「小発作」の場合、自宅に発作薬があれば対応することも可能です。「中発作」以上の場合は必ず医療機関を受診するようにしましょう。
また、「小発作」を起こしている場合も徐々に悪化する場合があるため、自宅で対応して改善が見られない場合にはためらわずに医療機関を受診してください。
小発作中発作大発作呼吸不全
呼吸の状態
瑞鳴軽度明らか著明減少/消失
陥没呼吸なし~軽度明らか著明著明
呼気延長なしあり明らか著明
起坐呼吸横になれる座位を好む前かがみ
チアノーゼなしなし可能性ありあり
呼吸数軽度増加増加増加不定
覚醒時の正常呼吸数
<2か月 <60/min 2-12か月 <50/min
1-5歳 <40/min 6-8 <30/min
呼吸困難感安静時なしあり著明著明
歩行時急ぐと苦しい歩行時著明歩行困難歩行不能
生活の状態話し方一文区切り句で区切る一語区切り不能
食べ方ほぼ普通やや困難困難不能
睡眠眠れる目を覚ます障害される
意識障害興奮状況なしやや興奮興奮錯乱
意識低下なしなしややありあり
SpO2 ≧96%92-95%≦91%<91%
PaCO2 <41mmHg<41mmHg41-60mmHg>60mmHg
PEF吸入前>60%30-60%<30%測定不能
吸入後>80%50-80%<50%測定不能
気管支をとりまく筋肉を拡張させて、空気の通り道を広げ呼吸を楽にすることができます。「吸入」「内服」「貼付」の3種類がありますが、最も短時間で効果が出るものは吸入用です。また、β2刺激薬の副作用として知られる動悸、頻脈、不整脈、嘔気・嘔吐なども、吸入のタイプでは少ないことが特徴的です。ただし、啼泣(声をあげて泣くこと)が激しくて吸入が困難な子どもに対しては内服用や貼付用も役に立ちます。また、貼付のタイプは効果が出るまでに4~6時間かかります。皮膚への刺激を避けるため、毎回貼付する場所を変えましょう。
気管支の炎症を抑える最も効果的な薬で、内服薬と注射薬があります。炎症を起こしている免疫細胞の働きを抑えますが、数日間の使用であれば感染に対する抵抗力を落とすことはありません。また、自分自身が作るステロイドホルモンを少なくしたり、顔が丸くなったりする副作用の心配もありません。
次に重症度について説明します。これまでの発作の様子や頻度を総合的にみて、以下の表のように5つに分類し、適切な治療と組み合わせます。
重症度症状、頻度
間欠型年に数回咳嗽、季節性の瑞鳴
β刺激薬吸入で改善
軽症持続型月に1-3回の咳嗽・瑞鳴
呼吸困難の持続はなく、日常生活に支障ない
中等症持続型週に数回の咳嗽・瑞鳴
月1回ほど中・大発作で日常生活、睡眠に支障来す
重症持続型毎日、咳嗽・瑞鳴
週1-2回、中・大発作で日常生活に支障がある
最重症持続型頻回に中・大発作を来し、日常生活が制限される
現在の治療
▼症状のみの重症度STEP1STEP2STEP3STEP4
間欠型間欠軽症中等症重症
軽症持続型軽症中等症重症重症
中等症持続型中等症重症重症最重症
重症持続型重症重症重症最重症
このようにして、現在受けている治療と症状の重症度を合わせて考え、真の重症度を判定します。そのうえで本当に必要な治療を決めます。
STEP1 完結型STEP2 軽症持続型STEP3 中等症持続型STEP4 重症持続型
基本発作の強度に応じて
・LTRA拮抗
・吸入PSL低用量
・吸入PSL中用量
・吸入PSL高用量
・LTRA
・テオフィリン
・長時間作用β刺激薬
追加
・LTRA拮抗
・DSCG
・LTRA拮抗薬
・長時間作用β刺激薬
・テオフィリン
・経口ステロイド
・吸入ステロイド増量
・高用量SFC
気道を収縮させる化学伝達物質である「ロイコトリエン」の働きを抑え、気管支を拡張させ、気道炎症を抑えます。一日に1~2回内服します。副作用は発疹、下痢・腹痛、肝機能障などですが、多くの方が安全に使用しています。
吸入したステロイドが直接気道に到達することで、気道の炎症を強く抑えます。吸入薬なので、全身への影響は比較的少なく、長期管理において最も重要な薬です。以下のように、年齢に応じた吸入の方法(器具)があります。
副作用として、のどへの刺激や、咳・声がかれるといった症状が出たり、口の中にカンジダというカビが付着しやすくなったりします。そのため、吸入後にはうがいをしましょう。うがいが難しい小さいお子さんに対しては、水分を飲ませても構いません。使用開始後1年で身長の伸びが1cm程度少なくなる可能性がありますが、それ以降は大きな影響がなく、大人になる頃には差がなくなっているという研究結果があります。
国立成育医療研究センター 小児医療系総合診療部レジデント
国立成育医療研究センター 教育センター センター長/臨床研究センター 副センター長/臨床研究教育部長(併任)/血液内科診療部長(併任)
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