「気管支喘息の治療」で紹介をした薬物療法だけでは、治療は十分とはいえません。日常的に刺激を受けている環境が続けば、薬の効果も不十分となってしまいます。気管支喘息の発作を起こす要因は、日常生活の中に多く潜んでいます。大人になるまで喘息を持ち越さないために、家族は日常生活でどのようなことに注意すればよいのでしょうか。
寝具のシーツや枕カバーを清潔に保ちましょう。こまめに洗濯することをお勧めします。カーペットやじゅうたんはホコリや毛をためこみやすいので、フローリングが推奨されています。また、エアコンや、家具、部屋の定期的な掃除、カーテンやぬいぐるみの洗濯を定期的におこなうことも重要です。
猫や犬など動物の毛やフケは、喘息重症化の大きな要因となります。なるべく室内で飼わない、室内で飼う場合は活動範囲を一箇所に限定させるなど、物理的な接触を避ける工夫をしてみましょう。それも難しい場合には、最低週3回はペットをシャンプーして、毛を洗うようにしましょう。
タバコも大きな問題となります。近年は「副流煙」という言葉も浸透してきていますが、タバコの煙は、気管支喘息の最大の天敵と言われることもあるほどの脅威となります。お父さん・お母さんが吸っているタバコの煙が、一緒に暮らしている子どもの気道、肺に害を与えているのです。屋外で喫煙しても、タバコの煙がついた服や家の壁が子どもの気道に慢性的に刺激を与えています。タバコを吸っている人がいる家庭で誰かが喘息発作を起こした場合、タバコは少なくとも原因の一部となっているのです。
このような状況にある喫煙者の方は、これを機に禁煙をしましょう。「禁煙」「自分が住んでいる地区」で検索すると、禁煙外来を扱っている医療機関の紹介HPがたくさん出てきます。家族のタバコが子どもの生活を制限し,苦しませる要因となることを認識してください。
気管支喘息と診断された子どもの8割は、6歳未満で発症していると報告されています。一方、小学校に上がるまでに反復性咳嗽、喘鳴を認めた子どものうち、半分以上が思春期までに症状が消失したという報告もあります。薬物療法の徹底および環境のアレルゲン除去や禁煙など、本人と周囲の努力の結果が、小児期後半の喘息率を減らしているのです。
また、7~10歳時期の重症度は、成人期まで症状を引きずるかどうかを予測する因子となるといわれています。コントロールがうまくいかない場合、高校生や大学生、そして大人になっても発作が誘発され、運動部やスポーツサークルに参加することやバーベキューや花火など煙があるような場に参加できなくなってしまいます。子どもの時のコントロールの良し悪しが、大人になったときの活動を制限してしまうのです。
気管支喘息では、地道な早期コントロールが生活の質に直結します。そのためには、本人および周囲の保護者が協力しあい、主体的に取り組むことが必要なのです。
国立成育医療研究センター 小児医療系総合診療部レジデント
国立成育医療研究センター 教育センター センター長/臨床研究センター 副センター長/臨床研究教育部長(併任)/血液内科診療部長(併任)
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