インタビュー

耳の手術における最新の話題

耳の手術における最新の話題
阪上 雅史 先生

兵庫医科大学病院 病院長

阪上 雅史 先生

この記事の最終更新は2016年03月17日です。

耳の手術はより体への負担が少なく、より術後の経過がよい新たな方法が開発されています。兵庫医科大学病院副院長で耳鼻咽喉科・頭頸部外科学教室主任教授の阪上雅史先生に耳の手術における最新の話題として、内視鏡を使った鼓室形成術・アブミ骨手術でのレーザー使用・骨導補聴器(BAHA)の埋め込み術についてお聞きしました。

従来の鼓室形成術は、耳の後ろを切開して骨をドリルで削って広げ、顕微鏡を用いて手術をする方法が一般的でした。近年は顕微鏡を使った手術に代わって、内視鏡による手術が増えつつあります。耳の穴に内視鏡を入れて手術をするため、体を傷つけることがより少なく、広い視野で手術できることが特長です。単純な慢性中耳炎や初期の真珠腫が適応です。

耳硬化症に対して行われるアブミ骨手術の際、従来はアブミ骨上部構造をドリルなどの道具を使って切除していました。手術中に振動が伝わり、アブミ骨が転倒する場合があります。レーザーを使用することで手術時の衝撃が抑えられ、合併症のリスクも減ることになります。当院では5年ほど前から取り組み始め、現在はすべてのアブミ骨手術でレーザーを使用しています。年間20~30例実施しており、西日本では一番多い実績を持っています。

2013年4月から骨固定型補聴器が保険適用となりました。補聴器の一部を頭蓋骨の中に埋め込み、振動を直接骨に伝えて聴こえるようにします。手術としては、難聴になった側の耳の後ろに振動端子を埋め込みます。手術をした患者さんに話を聞くと、通常の補聴器よりも音質がものすごくよくなったといわれます。両側外耳道閉鎖症、両側耳硬化症の術後、また既存の手術で改善がみられない場合などに適用は限られています。

また、何回も手術しても聴力が上がらない場合は、今後人工中耳を使うケースが出てくるでしょう。現在は保険適用になっていませんが、認められれば難聴患者にとっては選択肢が増えます。

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