院長インタビュー

特徴的な治療を数多く実施し、急性期医療体制を構築した済生会神奈川県病院

特徴的な治療を数多く実施し、急性期医療体制を構築した済生会神奈川県病院
長島 敦 先生

済生会神奈川県病院 病院長

長島 敦 先生

この記事の最終更新は2017年12月06日です。

神奈川県横浜市の中心部に位置する、社会福祉法人 恩賜財団 済生会神奈川県病院は、1913年に全国済生会の第1号病院として開設され、100年間にわたり地域に密着した医療を提供してきました。同じ済生会病院である横浜市東部病院との役割分担と連携を軸とする協働により、横浜市東部地域に良質な地域完結型医療システムを構築することをめざしています。これまで得意としてきた回復期リハビリテーションや透析治療に加え、2016年2月の新棟西館のオープンを機に、急性期医療にも注力しています。

2016年10月に院長に就任されて以来、数々の改革を実施していらっしゃる同院の院長である長島 敦先生にお話を伺いました。                                                                                            

当院は、JR東神奈川駅から徒歩5分であり、京浜急行や東急東横線の駅からも近い、非常に交通の便に恵まれた場所にあります。
一般病棟86床、地域包括ケア病棟37床、回復期リハビリテーション病棟76床のあわせて199床を有する病院です。現在は、緊急入院される患者さんが非常に増えており、病床利用率は常に100%近い状態が続いています。(2017年11月1日現在)

当院の歴史は古く、2013年9月1日に創立100周年を迎えました。開院以来「恵まれない人々のために施薬救療し、済生の道を弘める」という済生勅語の精神に則り、地域に密着した公的医療機関としての役割を担ってまいりました。

2007年に済生会横浜市東部病院が新しく開設され、救急・手術などの高度な急性期医療は横浜市東部病院、リハビリテーションや慢性期医療は当院、と機能分化が行われました。

しかし、地域のみなさまから急性期医療を再度扱ってほしいという要望を多くいただき、2016年の新棟西館のオープンを機に、当院は再び急性期医療への取り組みを始めました。高度急性期を担う横浜市東部病院との連携医療はもちろん、内科を中心とした高齢者救急、早期から始めるリハビリテーションや専門医による透析治療、緩和ケアや予防医療などの充実に力を入れています。

2007年の済生会横浜市東部病院の開院に私自身が関わり、外科を専門に胃がん大腸がんなどの手術に多数携わってきました。

当院でも、2016年2月にオープンした西館の4階に手術室を3室設け、麻酔科の医師の常勤体制を整えるなどして、高度な手術に対応できるようにしました。オープン以前、急性期疾患は横浜市東部病院で診ていましたが、現在は当院の外科と横浜市東部病院の外科・救急科がひとつのチームとして診療にあたっています。各診療科において横浜市東部病院の医師と連携して診療を行っており、当院の常勤医師とともに一体的な連携・機能分担を行うことによって、幅広い疾患に対応する診療体制を整えています。

これまでは当院に搬送された救急の患者さんはそのまま横浜市東部病院に送っていましたが、まずは自分たちでしっかり診て、手術も含めて当院で対応できるものにはすべて対応し、本当に高度医療が必要な患者さんだけを横浜市東部病院に送るようにしました。機能分担がうまく機能し、互いに効率的な診療ができるようになってきています。

当院の年齢別の退院患者数を見ると、70歳以上の患者さんが約61%を占め、ほかの年代の患者さんよりも突出しています。地域のご高齢の患者さんに対する医療を提供し、地域医療に貢献していることがわかります。また、地域の高齢化とともに、脳疾患や心疾患以外にも肺炎、脱水、骨折などによる救急搬送が今後ますます増えてくることが予測されます。一度入院となると、生活を営むうえで不可欠な日常生活動作が低下してしまい、入院が長引いてしまいます。当院は長年の実績を誇る、回復期リハビリテーション科が充実しているので、治療と同時にリハビリを開始するなど入院日数の短縮にも非常に役立っています。日常生活自立度の向上や復職など、一人ひとりの患者さんに合わせた目標を設定し、早期社会復帰を支援しています。地域の診療所や地域包括支援センターとも連携しながら、救急患者の受け入れや在宅患者の急変時の対応なども強化していきたいと思っています。

腎臓の機能が低下してしまい、慢性腎不全と診断された患者さんは、腎臓機能を代替する治療として血液透析・腹膜透析・腎移植への治療が必要です。当院に新しく開設した腎臓外科では、末期腎不全を患う患者さんの透析療法に必要なアクセスの作製やアクセストラブルへの対応を専門に診療を行っております。同科では、日本透析医学会専門医であり、腎不全外科を専門とする腎臓外科の専門医がおり、血液透析患者さんにおける透析の命綱であるバスキュラーアクセスの新規作成やバスキュラーアクセスのトラブルに対して、非常に質の高い治療を行っています。バスキュラーアクセスを作成する手術にかかる時間は非常に短く、患者さんへの負担がとても少ないため、一般的には2、3週間かかる入院期間が、当院では2、3日で済みます。

バスキュラーアクセスをよりよい状態で長く維持していくことは、透析患者の負担軽減のみならず、透析効率の維持、生命予後の改善や生活の質向上にも貢献します。当院では腎臓内科医とタッグを組み、豊富な透析治療の経験と実績を生かし、バスキュラーアクセス治療に専門的かつ総合的に対応いたします。また当院の特性をいかし、さまざまな合併症を有する透析患者のバスキュラーアクセストラブル(脱血不良、静脈圧上昇、再循環、穿刺困難、シャント肢腫脹、穿刺部発赤など)にも迅速に対応します。

当院の眼科では、眼瞼(がんけん)疾患、ドライアイなど眼表面・角結膜疾患、白内障などの前眼部疾患、緑内障、全身疾患に合併する糖尿病網膜症高血圧網膜症などの眼底異常、視神経障害などを含めた幅広い眼科一般の疾患を診察しています。眼科における手術症例数のほとんどは白内障患者さんへの水晶体再建術です。そのなかでも、多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術の症例数が増えてきています。

白内障手術における一般的な単焦点眼内レンズを用いる手術は、遠くか近くかのどちらか一方に焦点を合わせる方法であるのに対し、遠近両方が見える多焦点眼内レンズを用いると、老眼年齢の患者さんであっても日常生活においてはメガネを使わない、またはメガネの使用頻度を減らすことが可能になります。

ただし、単焦点眼内レンズで既に手術をされた方など、多焦点眼内レンズが適合できない場合があります。患者さんの生活スタイルやこれからの生活へのご希望をよく伺い、眼の状態を精密に検査したうえで、治療方法を提案いたします。

当院の神経内科は、横浜市東部病院の脳血管神経センターと一体となって横浜市東部地域の神経に関係する医療を包括的に行うことを目標としています。

当院で得意とする疾患は、パーキンソン病脊髄小脳変性症などの神経変性疾患や、重症筋無力症多発性硬化症などの免疫による病気があります。また外来診療では、認知症の診断や初期治療・頭痛めまいの鑑別や治療も頻度の高い疾患です。末梢神経の病気や筋肉の病気など神経内科が関わる疾患は数多くあり、一般病棟における入院も含めて幅広く診療しています。

また、リハビリテーション科と協力しながら、パーキンソン病の短期集中リハビリや、ALSなどの神経変性疾患で在宅治療を続けている方のレスパイト入院も積極的に行っております。

2016年12月より神奈川県ではじめてロボットスーツ「HAL®」を用いた入院リハビリを始めました。HAL®の医療用(下肢タイプ)は、脚に障害を持つ方や脚力が弱くなった方に対して、脚の動かし方を脳に伝えるロボット治療機器です。機能回復効果が高いロボットを使用し、患者さん一人ひとりに合わせた細やかなアシストを行う効果的なリハビリテーションを実施しています。

 

当院の整形外科では、腰痛・肩こりから骨粗しょう症やリウマチなど広範囲にわたる整形外科疾患を扱っています。東部病院の運動器センターと連携・協働し、患者さん一人ひとりに対し最適な治療をご提供します。

整形外科で診る疾患のうち、とくに手外科手術に関しては、年間300件を超える豊富な症例数を誇っています。人間の手は神経、血管や腱などが非常に複雑に入り組んだ構造をしており、その治療には豊富な知識と経験、繊細な手術技術が必須とされています。当院では日本手外科学会認定の手外科専門医が、患者さんそれぞれの病状とニーズに応じた最善の治療を行います。病気やけがの種類によっては、早期に治療を始めることがその後の回復に大きく影響することがあるため、手や腕、足の痛みやしびれ、変形や腫れが出たときなどは、お気軽にご相談ください。

当院の消化器内科は、一般消化器診療および消化管がん診療に力を入れています。特に早期がんに対する消化器内視鏡を使った治療や、進行・再発胃がんおよび大腸がんの化学療法を行っております。2015年度は上部消化管内視鏡検査は約2,400件、下部消化管内視鏡検査は約560件の内視鏡検査・治療を行っています。

内視鏡を使った検査は近年著しく進歩しています。病変の診断には、特殊な波長の光を用いて、病巣の範囲や状態を明瞭に観察できるようになり、診断の精度がより向上しました。治療においても、静脈瘤や潰瘍などからの出血に対する止血術や、今まで開腹手術が必要であった早期胃がん・早期大腸がんなども、内視鏡での安全な治療が可能となりました。

さらに、横浜市東部病院消化器内科と一体的な連携・機能分担を行うことにより広く消化器系疾患全般に対応しています。外来・入院診療ともに、物理的な通院のしやすさと、疾患や治療内容を加味したうえで、当院と横浜市東部病院のどちらでも診療を受けていただくことが可能です。

また、慢性肝疾患を中心に近隣の診療所とも密接な病診連携を行い、肝がんの早期発見に努めています。

近隣の診療所の先生方からの事前予約または当日紹介による上部消化管内視鏡検査サービスを行っており、検査当日に結果の報告を行っています。

当院は、地域で暮らすみなさまが、必要なときに、最適で良質な医療が受けられる「患者さん中心の地域完結型医療」を構築し、それを担う病院であることをめざしています。

当院が位置する横浜市神奈川区は、高齢化が進む地域であり、かつ若い方の流入・流出も激しい地域です。このような地域の特性に合った地域完結型医療の体制をつくる必要があります。

そこで当院は、病院にいらした方に対して医療サービスを提供するだけではなく、当院が地域に出向いて、どんな医療サービスを提供したらよいか調査を始めました。地域に単身の高齢者の方がどれくらいいらっしゃるのか、病気をお持ちの方が自宅でどのように療養されているのか、どのような見守り体制が地域にあるのか、といったことを調査しているところです。また、神奈川区の高齢者福祉課の方を病院のカンファレンスにお招きして、地域の高齢者のみなさまにどのような問題やご要望があるか、病院に入院されているご高齢の患者さんがどのような問題をかかえていらっしゃるのか、といったことについて意見交換をしています。いただいた意見に柔軟に対応し、地域のニーズに応えていきたいと思っています。

これからも、地域とともに発展する地域密着型病院となるよう、職員一同努力してまいります。

当院の使命は、横浜市東部病院との役割分担と連携を軸とする協働により、この神奈川区・鶴見区の横浜市東部地域に、良質な地域完結型医療システムを構築することです。そのため、東部病院をはじめ、地域の医療施設と力を合わせ、「患者さん中心の地域完結型医療」の構築に向けて、医療連携をさらに進めてまいります。

そして、患者さんを中心とするすべての方が満足する医療の実践をめざし、職員一人ひとりが、自分の仕事に誇りを持ち、最大のパフォーマンスを発揮することをめざします。

当院は、これからも医療を通じて、地域のみなさまの幸福に貢献する病院であり続けるよう、努力してまいります。

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