
統合失調症の原因はいまだ解明されていません。しかし、身体の病気のいくつかがそうであるように、原因が不明であっても治療ができないわけではありません。原因が分かっていない病気をどのようにとらえていくのか、精神科救急病棟と早期支援青年期外来を担当され、多数の患者さんの診療にあたっておられる東京都立松沢病院精神科部長の針間博彦先生にお話をうかがいました。
統合失調症の原因は分かっていません。従来、統合失調症と躁うつ病(気分障害)は「内因性精神病」と呼ばれていました。この「内因性」とは、明らかな身体的原因がいまだ確認されていないが、それでもそうした原因が存在すると想定されている、という意味です。したがって、診断をするにはまず身体的原因が存在しないことを調べるという鑑別診断が必要です。もう一つの「精神病」という言葉にも、重要な意味があります。これは誰でも体験する正常な心の動きの延長にあるのではなく、それとは断絶された「病気」つまり「疾患」であるという意味です。逆にいえば、どんな症状が出ていても、それがその人のもともとのあり方から生じたものとして理解できれば、それは「疾患」ではないのです。
したがって、私たちは精神科の診断を下す際に、まずその人のもともとのあり方について把握する必要があります。精神科の初診時にこれまでの生活のことを事細かに聞かれるのはそのためです。また、もともとの本人のあり方から断絶しているということは、それは疾患による脳の機能の問題であって、親の育て方や育ちが原因ではないということです。
統合失調症は原因が不明であるため、その治療は薬物治療も心理的アプローチも、対症療法つまり原因ではなく症状に対するものということになります。統合失調症に対症療法が有効であるということは、人にはもともと統合失調症から回復する自然治癒力があり、治療はこれを促進していると考えることができます。最近は脳画像検査などでさまざまな所見が発表されています。しかしそれらはすべて、統合失調症と診断されない人との統計学的な差異にすぎず、個々の患者さんの診断に使うことのできるものではありせん。また、そうした所見が統合失調症に関連するとはいえても、因果関係、つまりそれが統合失調症の原因に関係しているのか結果に関係しているのすら分かっていないように思います。
原因が分かっていないからといって、疾患としての実体がないことにはなりません。症状と経過の特徴によって分類した統合失調症という大きなまとまりが妥当かどうかは別としても、そうした正常から逸脱した状態を示す疾患が存在することについては、合意されていると言っていいでしょう。
原因が不明だからといって実体がないということではありませんから、仮説を立てて「統合失調症という病気がある」という申し合わせをしなければ、それに対する対応を始めることもできませんので、やはりそれは必要なことだと考えます。原因がわからない疾患の分類、つまり名前をつけたまとまりをどう規定するかということですが、症状と経過―どのような症状が出て、その後どうなっていくのかを組み合わせることによって、単位を作っていくということになります。それは表に出てきたものに従ってまとめているわけですから、原因による分類ではありません。それは本来境界が不明瞭な「類型」であり、診断は「確定診断」ではなく「類型診断」つまりタイプ分けにとどまります。
統合失調症という診断が類型であるということは、他の類型との境界がはっきりしていないということです。たとえば内因性精神病には統合失調症とは別に双極性障害がありますが、その境界を診断基準によって恣意的(しいてき)に分けることは可能であっても、用いる基準によって境界は異なってきます。たとえば米国精神医学会が作成したDSM(精神障害の統計・診断マニュアル)に従えば双極性障害と診断されても、世界保健機構(WHO)が作成したICD(疾病の国際分類)に従えば統合失調症と診断されるケースもあります。
このように、統合失調症と双極性障害のどちらの診断が正しいかということはできず、どの基準を使うかによってどちらに当てはまるかが決まるというだけに過ぎません。したがって、実際の臨床で重要なのは、その人の症状と経過の特徴を把握することであって、病名をつけることにことさらこだわる必要はないといえます。
診断基準のここ数十年の流れとして、統合失調症の範囲を狭くする傾向があります。診断の範囲が狭くなるとその結果どうなるかといいますと、発生率が当然下がります。統合失調症の発生率は一般的に100人に1人とされていますが、最近では0.7%とも言われています。症状が短期間しか持続しないものや、双極性障害の特徴ももったものは統合失調症から除外していますから、患者さんの数の増減は絶対的なものではないと考えられます。
また、最終的によくなるかどうかという予後も、このことと関連しています。短期間に回復するものを除いて重症のものだけに範囲を狭めていくと、当然予後が悪いということになってしまいます。逆に、範囲を広く捉えれば症状が軽い方も入ってくるので、予後はより良くなるわけです。繰り返しますが、重要なことはその人自身の症状と経過の特徴を把握し、それに適した治療的対応を行い、それによってその人の回復を目指すことであり、診断というレッテルを貼ることではありません。
頭部・顔面の症状
手足の症状
首・体幹の症状
東京都立松沢病院 精神科 部長
周辺で統合失調症の実績がある医師
国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 児童・予防精神医学研究部 部長
内科、外科、精神科、脳神経外科、小児科、整形外科、リハビリテーション科、放射線科、歯科、麻酔科、脳神経内科、児童精神科
東京都小平市小川東町4丁目1-1
西武多摩湖線「萩山」南口 病院シャトルバス運行 徒歩7分、JR武蔵野線「新小平」病院シャトルバス運行 徒歩10分
国立精神・神経医療研究センター病院 精神リハビリテーション部長、医療連携福祉相談部長
内科、外科、精神科、脳神経外科、小児科、整形外科、リハビリテーション科、放射線科、歯科、麻酔科、脳神経内科、児童精神科
東京都小平市小川東町4丁目1-1
西武多摩湖線「萩山」南口 病院シャトルバス運行 徒歩7分、JR武蔵野線「新小平」病院シャトルバス運行 徒歩10分
国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院 精神科科長 メンタルヘルスセンター長
内科、血液内科、リウマチ科、外科、心療内科、精神科、神経内科、脳神経外科、呼吸器内科、呼吸器外科、腎臓内科、心臓血管外科、小児科、小児外科、整形外科、形成外科、皮膚科、泌尿器科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、放射線科、歯科、歯科口腔外科、麻酔科、乳腺外科、乳腺腫瘍内科、膠原病科
東京都新宿区戸山1丁目21-1
都営大江戸線「若松河田」河田口 徒歩5分、東京メトロ東西線「早稲田」2番出口 徒歩15分
慶應義塾大学医学部 ヒルズ未来予防医療・ウェルネス共同研究講座 特任教授
内科、血液内科、リウマチ・膠原病内科、外科、精神科、神経内科、脳神経外科、呼吸器外科、消化器外科、腎臓内科、心臓血管外科、小児科、小児外科、整形外科、形成外科、皮膚科、泌尿器科、産科、婦人科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、放射線科、歯科、歯科口腔外科、麻酔科、乳腺外科、呼吸器内科、循環器内科、消化器内科、内分泌内科、代謝内科、放射線診断科、放射線治療科、精神神経科、総合診療科、病理診断科
東京都新宿区信濃町35
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慶應義塾大学医学部 精神・神経科学教室 准教授
内科、血液内科、リウマチ・膠原病内科、外科、精神科、神経内科、脳神経外科、呼吸器外科、消化器外科、腎臓内科、心臓血管外科、小児科、小児外科、整形外科、形成外科、皮膚科、泌尿器科、産科、婦人科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、放射線科、歯科、歯科口腔外科、麻酔科、乳腺外科、呼吸器内科、循環器内科、消化器内科、内分泌内科、代謝内科、放射線診断科、放射線治療科、精神神経科、総合診療科、病理診断科
東京都新宿区信濃町35
JR中央・総武線「信濃町」 徒歩1分、都営大江戸線「国立競技場」A1出口 徒歩5分、東京メトロ丸ノ内線「四谷三丁目」1番出口 徒歩15分、東京メトロ銀座線「青山一丁目」0番出口 徒歩15分
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