
糸川昌成先生は分子生物学者・精神科医として、実際に患者さんと向き合って臨床に触れながら、統合失調症研究において最先端の研究を牽引しておられます。今回は糸川先生ご自身が現在重視しておられるテーマについてお話をうかがいました。
東京都医学総合研究所は、東京都立松沢病院の敷地と隣り合って建っています。15年前に着任した私が見たものは、研究所の周囲を歩いている患者さんの姿でした。都立病院ですので、民間病院で受け入れ困難な、かなり重篤な患者さんもおられました。
そこで気づいたのは、数を集めていてはだめだ、ということでした。この人たちひとりひとりを掘り下げるような研究をしようと思ったのです。そこから「統合失調症が秘密の扉をあけるまで(2014年/星和書店刊)」で書いたようなご兄弟(本の中では姉妹)に出会い、そこから非常に珍しいフレームシフト変異を発見し、その人の中だけで起きているカルボニルストレスを見つけました。
それをプロトタイプとして、より弱い形で一般症例でも持っているのではないかと思い調べてみたところ、4割の患者さんから同じ代謝不全が見つかりました。この代謝不全が特殊なビタミン(活性型ビタミンB6ピリドキサミン)で改善するならば、それを投与してみようということになりました。こうして、日本では精神科領域で、未承認薬を用いた初めての医師主導治験を松沢病院で行ったのです。
ですから、自分自身が現在重要と考えていることは、数を集める欧米の大規模研究の真似をしないことです。むしろ、ひとりを深く掘り下げること、その人だけが持っているものと同じものを持っている人たちを集めてくるということが重要だと考えたのです。
なぜそのように考えるようになったかというと、統合失調症は症候群であるからです。症候群とは、あるいくつかの症状の組み合わせが同時多発的に出てきた場合のことをいいます。疾患ではなく、病気のひとくくりである「症候群」としてひとまとまりにした場合に、予後や治療の見立てがしやすくなるということがあります。
具体的にいいますと、後天性免疫不全症候群:AIDSがそうです。研究が進む以前は、「男性同性愛者からカリニ肺炎が発生し、日和見感染症(本来であれば弱いはずの菌が体の免疫が弱っていると悪さをする)を発症して死に至る」という「症候群」だったものが、HIVウイルスの発見によって決着しました。その瞬間に、後天性免疫不全症候群という「症候群」がHIV感染症という「疾患」に昇格したのです。これが症候群と疾患の違いです。疾患としてはHIV陽性かどうかが重要なのであって、男性同性愛者であるか、カリニ肺炎であるかどうかは問われません。
統合失調症は疾患ではなく症候群ですから、学者ごとに定義が少しずつずれています。疾患は、原因から結果が生じる均一な集団です。しかし統合失調症ではHIV感染症におけるHIVに相当するものがわかりません。幻覚や妄想、認知機能障害などの症状のうち、どれが統合失調症の症状なのか、あるいはそうでないのかは、研究者の定義によって変わってしまうのです。
特定のプロトタイプと、それを弱い形で持っている人を集めようとしたことの理由は、巨大な症候群の中にはいろいろな原因が混ざっているからです。これは100人であっても、1万人であっても同じです。いくつもの原因の中のひとつだけを調べてみればオッズ比は10ぐらいになるのですが、混ざると薄めあって1.5になってしまうのではないかと私は考えました。
カルボニルストレスを持っていた松沢病院のたった一人の患者さんをプロトタイプに、およそ全体の4割の患者さんがカルボニルストレスを持っているということを調べました。これは比較的均質で、疾患性を近似しているだろうと予測しました。この場合、カルボニルストレスが陽性か陰性かという点だけを重視して、幻覚や妄想や認知機能障害などの有無を後回しにしました。ここで「陽性の人にはピリドキサミンを与える」ということは、HIVに抗ウイルス薬を与えるのと同じ発想です。
症候群のまま統合失調症を研究するのではなく、疾患性を高めて、個別の症例と同じ症状を持っている人を集めてくるということは、世界的に見ても珍しい研究だと思います。これが今の私の最新トピックスです。
頭部・顔面の症状
手足の症状
首・体幹の症状
糸川 昌成 先生の所属医療機関
周辺で統合失調症の実績がある医師
国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 児童・予防精神医学研究部 部長
内科、外科、精神科、脳神経外科、小児科、整形外科、リハビリテーション科、放射線科、歯科、麻酔科、脳神経内科、児童精神科
東京都小平市小川東町4丁目1-1
西武多摩湖線「萩山」南口 病院シャトルバス運行 徒歩7分、JR武蔵野線「新小平」病院シャトルバス運行 徒歩10分
国立精神・神経医療研究センター病院 精神リハビリテーション部長、医療連携福祉相談部長
内科、外科、精神科、脳神経外科、小児科、整形外科、リハビリテーション科、放射線科、歯科、麻酔科、脳神経内科、児童精神科
東京都小平市小川東町4丁目1-1
西武多摩湖線「萩山」南口 病院シャトルバス運行 徒歩7分、JR武蔵野線「新小平」病院シャトルバス運行 徒歩10分
国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院 精神科科長 メンタルヘルスセンター長
内科、血液内科、リウマチ科、外科、心療内科、精神科、神経内科、脳神経外科、呼吸器内科、呼吸器外科、腎臓内科、心臓血管外科、小児科、小児外科、整形外科、形成外科、皮膚科、泌尿器科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、放射線科、歯科、歯科口腔外科、麻酔科、乳腺外科、乳腺腫瘍内科、膠原病科
東京都新宿区戸山1丁目21-1
都営大江戸線「若松河田」河田口 徒歩5分、東京メトロ東西線「早稲田」2番出口 徒歩15分
慶應義塾大学医学部 ヒルズ未来予防医療・ウェルネス共同研究講座 特任教授
内科、血液内科、リウマチ・膠原病内科、外科、精神科、神経内科、脳神経外科、呼吸器外科、消化器外科、腎臓内科、心臓血管外科、小児科、小児外科、整形外科、形成外科、皮膚科、泌尿器科、産科、婦人科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、放射線科、歯科、歯科口腔外科、麻酔科、乳腺外科、呼吸器内科、循環器内科、消化器内科、内分泌内科、代謝内科、放射線診断科、放射線治療科、精神神経科、総合診療科、病理診断科
東京都新宿区信濃町35
JR中央・総武線「信濃町」 徒歩1分、都営大江戸線「国立競技場」A1出口 徒歩5分、東京メトロ丸ノ内線「四谷三丁目」1番出口 徒歩15分、東京メトロ銀座線「青山一丁目」0番出口 徒歩15分
慶應義塾大学医学部 精神・神経科学教室 准教授
内科、血液内科、リウマチ・膠原病内科、外科、精神科、神経内科、脳神経外科、呼吸器外科、消化器外科、腎臓内科、心臓血管外科、小児科、小児外科、整形外科、形成外科、皮膚科、泌尿器科、産科、婦人科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、放射線科、歯科、歯科口腔外科、麻酔科、乳腺外科、呼吸器内科、循環器内科、消化器内科、内分泌内科、代謝内科、放射線診断科、放射線治療科、精神神経科、総合診療科、病理診断科
東京都新宿区信濃町35
JR中央・総武線「信濃町」 徒歩1分、都営大江戸線「国立競技場」A1出口 徒歩5分、東京メトロ丸ノ内線「四谷三丁目」1番出口 徒歩15分、東京メトロ銀座線「青山一丁目」0番出口 徒歩15分
関連の医療相談が46件あります
良い薬に出会わなくって困ってます。
私は30代で統合失調症を発症しましたが中々いい薬に出逢わなくて困ってます。今まで色んな薬を飲んでますが一向に良くなりません。今一番辛いのはストレスでうつ状態から抜け出せない事です。どうしたら良いでしょうか?
体に力が入ってる感じで大変です。
7月中旬くらいから体に力が入ってしまいます。 体に力が入るというのは左腕がピンとなったり、体全体が緊張状態のようになることです。 これはなぜなのでしょうか。 私は統合失調症という病気を持っており、毎日精神安定剤を飲んでいますがそのせいなのかなと思っています。 またストレス源と隣合わせで生活しているので、そのせいなのかなとも思います。 生きていて大変不便です。原因やその病気のことを教えて下さい。よろしくお願いします。
この場にいてはいけないような感覚
私はおよそ2年前から統合失調症の陰性とパニック障害を併発しています。薬物療法をしていたのですが金銭面やコロナの影響で12月から薬を飲んでいません。 ここ1ヶ月ほど前から突然夢から醒めてほしいという強い願望に襲われるようになりました。自分が思ってる訳ではなく、自分の中の別人がこの場所に居てはいけないから早く目を覚ましてと言ってきます。常に息苦しく、自分が自分で制御が効かないような感覚がとても苦しいです。これは心療内科に行くべきでしょうか。そしてこの症状は統合失調症の症状なのでしょうか。
統合失調症とSLEの精神症状について
三年前に統合失調症と診断を受け三ヶ月入院して幻聴が全くなくなりました。 投薬して安定しております。 最近、自分が統合失調症じゃなければいいという思いが強く。姉が抗核抗体陽性だということを思い出して、SLEなんじゃないかと疑いを持つようになりました。 統合失調症の薬飲んで回復したのだから統合失調症だとは思うのですが、他の病気だということはあり得ますか?
※医療相談は、月額432円(消費税込)で提供しております。有料会員登録で月に何度でも相談可能です。
「統合失調症」を登録すると、新着の情報をお知らせします