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インタビュー

統合失調症の原因・検査・診断-発達障害との違いとは

統合失調症の原因・検査・診断-発達障害との違いとは
鈴木 道雄 先生

富山大学大学院医学薬学研究部(医学)神経精神医学講座教授

鈴木 道雄 先生

統合失調症はいまだ解明されていない部分が多く、症状も多様な疾患です。そのため、「統合失調症は遺伝疾患なのか?」「発達障害との違いがわからない」「原因はストレス?」といった、様々な疑問と不安の声もあがっています。

本記事では、統合失調症の原因や検査項目、よく似た症状を呈する病気との違いについて、富山大学附属病院神経精神科教授の鈴木道雄先生にお話いただきました。

統合失調症の明確な原因はわかっていません。しばしば、統合失調症の原因として「ストレス」が挙げられますが、ストレスは統合失調症の発症の「引き金」になるものであり、原因それ自体ではありません。もともと患者さんが持っている「脆弱性」とストレスが組み合わさってはじめて発症に至ると考えられています。

発症の引き金となるストレスとは、なにか特定のものがあるというわけではなく、非特異的なものです。たとえば、結婚、就職などのライフイベントがストレスになる方もいれば、ちょっとした周囲の環境変化がストレスになる方もいます。また、Aさんにとっては大きなストレスを感じることでも、Bさんにとっては全く気にならないということもあります。

脆弱性とは、病気にかかりやすさの度合いを表す言葉です。

たとえば、しっかりと食事を摂っておらず栄養失調で免疫力が落ちている人は、栄養十分な人にくらべると、寒冷ストレスにさらされた時に肺炎にかかることが多いでしょう。つまり、栄養失調の人は、「肺炎にかかりやすい」すなわち「肺炎への脆弱性がある」といえます。しかし、栄養失調の人の中にも実際に肺炎にかかる人とかからない人がいます。

脆弱性がある場合も、上記の例のように、実際に病気を発症する人としない人がいることには、脆弱性の程度、ストレスの種類や強度などが関係していると考えられます。

統合失調症の場合、何が脆弱性に関わり、脆弱性とストレスがどのように相互作用して発症するかなどについては、現時点では十分に解明されていません。

DNA

多数の統合失調症の患者さんと健康な人の遺伝子の塩基配列を網羅的に比較する研究が進んでいます。「この遺伝子変異があると必ず統合失調症になる」という遺伝子はありませんが、統合失調症に関連する(患者さんが健康な人に比べて持っていることの多い)たくさんの遺伝子の変異がみつかっています。そのような遺伝子変異の数はおそらく数千を超えるだろうと予測されていますが、それらの遺伝子変異ひとつひとつの効果量(発症しやすさを高める力)は小さいものです。ひとつの遺伝子変異があることで「発症しやすさが数%増える」と考えることができ、逆にそのような変異があっても発症しない人がほとんどということになります。

そのような遺伝子変異を持っていると、なぜ統合失調症にかかりやすくなるのかといったメカニズムについて研究が行われています。

統合失調症への脆弱性は遺伝子に関係するものの、発症そのものは遺伝子によって決定されるわけではないと、区別して考えるのがよいでしょう。

客観的に身体の状態を評価する指標である「バイオマーカー」がない統合失調症の診断には、記事1『統合失調症とは。特徴的な陽性症状と陰性症状』で解説した症状の評価を行うことが最も重要になります。

また、統合失調症が強く疑われる症状がある場合でも、よく似た症状を呈することのある脳や身体の疾患を除外するために、必要に応じて次のような検査を行います。

【除外診断のための検査】

  • 血液検査、尿検査
  • 脳波検査
  • CTやMRIによる脳画像検査
  • 髄液検査
  • その他

統合失調症のような精神症状が生じる身体疾患を除外するために、初診時には血液検査に異常がないことを確認することが必要です。

精神症状を呈する身体疾患には、甲状腺の疾患などの内分泌疾患、橋本脳症、SLE全身性エリテマトーデス)などの膠原病、さまざまな代謝障害など数多くが挙げられます。

また、てんかんで統合失調症様の症状を示すことがあるので、脳波検査も適宜行います。

前項であげた検査項目のうち、髄液検査は統合失調症に似た症状を呈する急性発症の脳炎が疑われる場合など、ごく稀にしか行いません。

近年では「抗NMDA受容体抗体脳炎」が注目されています。この病気は、急激に精神病症状を呈し、統合失調症と間違われることがあるので注意が必要です。

若い女性に多く、卵巣腫瘍を合併することが多いのが特徴です。早期にこの病気を疑って、髄液検査などの必要な検査を行うことが重要です。

【除外診断を目的として、一度は検査を行うことが望ましい】

脳の画像検査

脳に明らかな異常が生じる他の病気を除外するために、脳画像検査を行うことは重要です。

私個人の意見としては、とくに初めて病院にかかるときには脳画像検査を受けたほうがよいと考えます。

【臨床診断のための脳画像検査は研究段階】

現在、統合失調症そのものの診断に脳画像を応用しようという研究が行われており、成果も報告されつつあります。前駆期が疑われる段階の診断に役立てようという試みもなされています。

富山大学附属病院では、研究に参加の同意をいただけた方に、病態の解明や将来の臨床応用を目的とした研究のために脳画像検査を行っています。

今のところ、臨床診断のための脳画像検査は研究段階であることをご理解下さい。

典型的な統合失調症の症状がある場合は、診断に迷うことはありませんが、幻覚や妄想などの精神病症状を伴ううつ病双極性障害などは慎重に鑑別を行う必要がありますし、発達障害や一部のパーソナリティ障害(境界性パーソナリティ障害など)などでは、ときに診断に迷うこともあります。

本項では、特に疑問の声が多い「統合失調症と発達障害」に焦点を当てて、双方の違いを簡単に解説します。

発達障害には、ASD自閉スペクトラム症)やADHD注意欠如多動性障害)などがありますが、いずれも基本的には幼少期から症状がみられます。

一方、統合失調症は思春期以降に、それ以前にはみられなかった統合失調症に特徴的な症状が現れます。

ときに発達障害でも、幼少期にその特徴に気づかれていない場合や、成人する頃になるまで生活上の問題が明らかにならないことがあるので、そのような場合は親などから幼少期の情報を改めて詳しく聴取することが重要です。

発達障害で幻覚や妄想がみられることもないとはいえませんが、一過性のことが多く、統合失調症のように持続することはありません。

幻覚や妄想がみられても、典型的な統合失調症の症状とは性質が異なるのですが、このあたりの鑑別には専門家の判断が必要になります。

ただし、統合失調症の患者さんのなかには、幼少期から自閉傾向がみられる方もいるため、両者をクリアカットに切りわけることは難しいところがあります。

また、ときに発達障害を持つ人に思春期以降に統合失調症が発症する、すなわち両者が併存することもあります。

最近の研究では、統合失調症と発達障害の病態生理には、オーバーラップする部分もあると考えられています。

もちろん、これは発達障害の方が必ず統合失調症になるということではありません。

鈴木道雄先生

かつて、統合失調症の治療は、幻覚や妄想といった症状をいかに治療するかということに力点が置かれていました。しかし近年では、症状を抑えることだけでなく、認知機能の改善が重要視されるようになっています。

このように、治療ターゲットが変わりつつある背景には、認知機能の改善が社会機能の改善をもたらし予後が良くなる、すなわち統合失調症の患者さんがリカバリーを達成するために役立つ力になるという期待があります。

富山大学附属病院でも認知機能と社会機能の改善を重視しており、早い時期から第二世代抗精神病薬による認知機能障害の改善効果の研究に取り組み、近年では認知リハビリテーションも試みています。

また、当院では、薬物療法などの治療前後で、簡単な課題を行っている時の脳波を記録して比較しています。脳波の変化を調べることにより、認知機能の改善に伴う脳機能の改善を把握することができると考えられます。

富山大学附属病院では、統合失調症などの精神疾患の前駆期が疑われる状態を対象とした診療と研究にも力を入れています。その理由は、早期発見・早期治療が統合失調症などの予後の改善につながる重要な方策のひとつと考えるからです。

しかし、はっきりした幻覚や妄想などが出ていない段階から患者さんの治療や支援を行うことには、多くの注意と慎重さが要求されます。

統合失調症の治療に薬物療法は欠かせませんが、真に患者さんの社会機能改善を目指すのであれば、さまざまな心理社会的な治療も不可欠です。

統合失調症の予後を真に改善するためには、現在利用できる治療法をできるだけ活用することがまず重要ですが、研究にも力を注いでより良い診断や治療を開発していく努力が必要です。

すなわち臨床と研究が、相互に密接に関連しながら発展していくことが望まれます。

 

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    鈴木 道雄 先生

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