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インタビュー

統合失調症の原因―脳の神経発達異常が関係?

統合失調症の原因―脳の神経発達異常が関係?
住吉 太幹 先生

国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 児童・予防精神医学研究部 部長

住吉 太幹 先生

目次
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統合失調症は、妄想や幻覚を特徴とする精神疾患のひとつです。およそ100人に1人が発症するメジャーな病気ですが、はっきりとした原因はいまだ明らかではありません。しかし、脳の神経発達異常が原因ではないかとの仮説も唱えられています。統合失調症の原因について、国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 児童・予防精神医学研究部 部長の住吉太幹先生にお話をうかがいました。

統合失調症は、幻覚や妄想などの症状が出るほか、会話や行動のまとまりがない、認知機能の低下などの多彩な症状が現れる精神疾患です。

厚生労働省の調査[1]によると、2017年度の統合失調症の推定患者数は77.3万人です。統合失調症は人口のおよそ1%程度がかかるといわれる精神疾患で、”common disease”であるといえます。

また、発症年齢は10代後半〜20代が多く、若い方に多い点が特徴です。40代以降になると、発症率は下がります。

注1:厚生労働省「平成26年 患者調査(傷病分類編)」

脳

統合失調症のはっきりとした原因は、明らかではありません。しかしながら、2017年12月現在、発症原因として有力視されているものが脳の神経発達異常です。

脳の発達に伴い、通常であれば神経回路がある程度選択的に絞られてくるものが、何らかの理由で不要な神経回路まで残ってしまうことで、統合失調症を発症するのではないかと考えられています。

脳の神経発達異常をきたす要因として、いくつか検討されているものがあります。

【脳の神経発達異常が生じる要因として考えられるもの】

  • 遺伝
  • 周産期のトラブル(新生児仮死など)
  • 薬物(覚せい剤、大麻など)

周産期…妊娠22週から出生後7日未満までの期間

新生児仮死(かし)…出生児の赤ちゃんにみられる、呼吸や循環器の不全を主とする症候群

ヨーロッパの研究において、一卵性双生児の一方が統合失調症を発症した場合、もう一方も統合失調症を発症する確率は28%といわれています。[2]

このことから、統合失調症の発症要因として、遺伝要因はある程度関連していると考えられることは事実です。

しかし、DNAの一致率が100%の一卵性双生児でさえも統合失調症の発症率が30%弱にとどまるということは、発症において遺伝以外の要因(環境要因)が絡んでいることを示しています。

注2:トーリー・E・F.1995 南光慎一郎他監訳 1997 分裂病がわかる本 日本評論社

 

統合失調症と遺伝の関係について詳細はこちらをご覧ください。

妊娠中期以降や出生時などの周産期に何かしらのトラブルが生じ、脳が虚血状態(脳に血が行き渡らなくなること)に陥ることも、脳の神経発達異常を引き起こす要因と考えられています。

統合失調症の発症には、覚せい剤や大麻などの薬物の使用も関連すると考えられています。もともと、覚せい剤や大麻などの薬物は、使用時に幻覚や妄想など、統合失調症に似た症状が現れることがあります。

薬物による幻覚や妄想は、小児が薬物を使用した場合には生じにくく思春期以降に出やすくなるといわれています。これは、統合失調症が思春期〜20歳代に発症しやすい点と重なります。

このことから、通常は思春期以降に発達する幻覚や妄想などの独特な症状をコントロールする脳の部分が、薬物などによって正常に機能しなくなることで、統合失調症の症状が生じるものと考えられています。

悩む若者

発症のきっかけとして、ストレスとの関連が指摘されています。進学、就職、結婚など、生活上の大きな変化が発症のきっかけとなることが多いといわれます。

しかし、これは統合失調症の原因ではなく、きっかけです。もともと統合失調症の素因を持っている方が、こうしたストレスにさらされることで統合失調症を発症する可能性がある、ということにすぎません。

ストレスに関連して、統合失調症など精神疾患の発症率との生活環境の相関がみられる研究結果もあります。それは、都市部で生活する人のほうが、そうでない人と比べて精神疾患にかかる確率が高いというものです。

しかしながら、繰り返すように、都市部に住んでいるからといってそれだけで統合失調症を発症するのではありません。もともと統合失調症になりやすい素質を持つ方がこのような環境にさらされることによって、統合失調症を発症する可能性がある、というものにすぎない点には留意する必要があります。

まじめに勉強をする学生

  • 家族に統合失調症などになった方がいる方(遺伝との関連)
  • まじめ、静かなどひかえめな性格

統合失調症になりやすい人として、家族が過去または現在、統合失調症などの精神疾患になったことがあるという方や、ひかえめであったりまじめであったりと、やや神経質な性格である方は発症の確率が高いといわれています。

統合失調症には、このようにいくつかの発症要因や傾向があると考えられます。そのため、これらの要因を抱える方など、統合失調症を発症するリスクが高い方に対する発症予防が不可欠です。

国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 児童・予防精神医学研究部では、統合失調症などへ移行するリスクの高い方を対象に、精神疾患発症予防に向けた調査・研究を行っています。

抗NMDA受容体抗体脳炎とは、通常は脳に興奮を伝えるNMDA受容体が、体の免疫反応によって生じた抗体(NMDA受容体抗体)からの攻撃を受けることによって、脳の機能が低下する病気です。

初期には発熱や頭痛などの風邪のような症状が出ますが、数日経つと幻覚や妄想などの症状が現れます。この、幻覚や妄想が統合失調症と似た症状であることから、統合失調症と誤診されることがあります。

医師の診察

統合失調症は、かつては親の育て方によるものなどといわれていましたが、それは否定されています。親の育て方が原因で統合失調症を発症することはありません。ですから、保護者の方は自身を責めないでもらいたいと思います。

統合失調症は、早めに発見しすぐに治療を開始すれば回復の可能性がある病気です。私の患者さんのなかでも、社会復帰をしている方がいらっしゃいます。

自身や家族が統合失調症かもしれない、と感じられた場合には精神科、精神科のハードルが高い場合には地域の精神保健福祉センター、学校であれば保健室の先生、大学の保健センターなどにまずは相談してください。

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  • 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 児童・予防精神医学研究部 部長

    住吉 太幹 先生

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