インタビュー

統合失調症の治療(1)-外来治療と入院治療

統合失調症の治療(1)-外来治療と入院治療
針間 博彦 先生

東京都立松沢病院 精神科 部長

針間 博彦 先生

この記事の最終更新は2016年03月13日です。

精神疾患の治療については、一部の重症例がクローズアップされ、固定観念や先入観を助長している面があるのではないでしょうか。精神科救急病棟と早期支援青年期外来を担当され、多数の患者さんと向き合っておられる東京都立松沢病院精神科部長の針間博彦先生に、統合失調症の治療についてお話をうかがいました。

統合失調症の治療は基本的に外来治療が中心になります。入院というのは生活の中断ですから、仕事・学校・家庭などその人の通常の生活が中断しないように、生活を続けながら治療をするのが原則です。患者さんやご家族によっては、「入院して完全に治してから退院します」とおっしゃる方もいますが、統合失調症の治療はそういうものではありません。治療は日常生活を送りながら、その中での問題に対処しつつ行なうのが基本です。また、統合失調症では幻覚や妄想がしばしば再発することを考えれば、大事なのは入院治療よりもむしろ退院後の外来治療による維持と予防ということになります。

どのようなときに入院治療を行うのかといいますと、ひと言でいえば外来治療が困難な場合です。それには次のような場合があります。

  • 本人がつらさを感じて日常生活が送れなくなる
  • 本人が症状に支配されて周囲が困っている(暴力・徘徊・異常な行動など)
  • 本人に病識がなく、外来に来ない(薬を服用しない)

急性期に症状が激しく、本人や周囲の人の生活が立ち行かなくなっている時には、まず入院をして治療し、日常生活ができるようになってから退院すべきです。そこで無理をして外来治療を優先することはありません。そうした場合には、医師からも入院が必要であるということを説明します。

しかし、急性期で本人に病識がない場合は、なかなか本人の同意に基づいて入院ができません。その場合は医療保護入院という家族の同意に基づく入院が精神福祉法によって用意されています。これは本人にとっては非自発的な入院になりますが、入院治療によって状態が改善すれば、入院は必要だったと思うようになることがほとんどですし、そう思えるようになることが入院治療の目標ともいえます。

また、私たちが勤務しているのは精神科救急の受け入れ病棟ですので、精神症状のため自傷他害のおそれがあって警察に保護された場合には、緊急措置入院という行政処分としての強制入院を受け入れています。その場合には本人の同意も家族の同意も不要の強制入院になります。先ほどお話しした緊張病状態の場合や、激しい暴力や自殺の危険などがあり家族だけでは対応しきれない場合、こうした制度を使う必要があります。東京都では、この行政医療としての精神科救急は、都立4病院で分担して行われていますので、一般の方にも一般の病院の医療関係者にもあまり知られていないように思います。

外来治療において「治療を受ける」ということは、通院して薬を服用することを自分に必要な習慣として受け入れることです。この「習慣として受け入れる」ということ自体は、病識の有無にかかわらずできるはずですし、その段階になれば患者さんは皆さんひとりでも外来に来ることができるようになります。しかし、最初はどうしてもご家族の協力がなければ受診を継続できないことがあります。ひとり暮らしの方の場合は治療が継続できず、結果的に救急入院になる方も少なくありません。

私たち医師も「あなたは幻覚・妄想があるからこの薬を服用しましょう」とは言いません。こうした説明は病識、つまり自分には幻覚や妄想という病気の症状があるという自覚のない患者さんには通用しないからです。一方で患者さんには、病識がなくても、眠れない・外に出るのが怖い・家にいても気分が休まらない・気分が落ち込むなど、必ずつらいことがあります。その患者さんがつらいことに焦点を合わせて、そこが楽になるように通院していただくということが大切です。

患者さんにとって、幻覚・妄想を日常の言葉で表現するのは本来難しいことです。患者さんは自分なりの言葉で伝えようとします。そこで私たちもその人なりの言葉を使って説明するようにしています。たとえば、患者さんが幻聴のことを「電磁波」と表現したら、こちらも幻聴ではなく「電磁波」と呼びます。患者さんが「電磁波」と言ったのをその場で「いや、それは幻聴なんだよ」とは言いません。患者さん自身が感じ、使った言葉をこちらも用いて、患者さんのつらさを話題にするようにしています。ただし、症状が軽快し振り返ることができる時期になれば、「あれは幻聴だったのかもしれませんね」と言うことはあります。

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