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インタビュー

統合失調症とは-病気を知ることが大切

統合失調症とは-病気を知ることが大切
針間 博彦 先生

東京都立松沢病院 精神科 部長

針間 博彦 先生

東京都の精神医療センターという役割を担う東京都立松沢病院では、患者さんに占める割合では統合失調症の方がもっとも多く、今なお急性期には重症の方もいるといいます。精神科救急急病棟と早期支援青年期外来を担当され、多数の患者さんの診療にあたっておられる東京都立松沢病院精神科部長の針間博彦先生にお話をうかがいました。

統合失調症は一般に、「主に思春期から青年期に発症し、幻覚妄想や思考・感情・意欲の障害が出現する、いまだ原因不明の精神病」と理解されています。「統合失調症」はドイツ語のSchizophrenie 、英語ではschizophreniaの訳語で、以前は「精神分裂病」と訳されていました。Schizophrenie はいまから約100年前の20世紀初頭にスイスのブロイラーが新たに作った語であり、schizoは「分裂」、phrenは「精神」という意味ですから、「統合失調症」も「精神分裂病」も思考の分裂が基本症状であるというブロイラーの仮説を踏襲した訳語です。

ただし、それが本態を表している言葉であるかは疑問の余地があります。また、統合失調症が「原因不明」であるとは、それはおそらく脳あるいは身体の病気による症状と考えられるが、その原因がいまだ特定できていない、という意味です。こうした意味で、従来、統合失調症は躁うつ病とともに「内因性精神病」と呼ばれていました。原因が特定できていない以上、統合失調症が一つのまとまった病気であるのかどうかも分かっていません。おそらくいくつかの病気が混在しているのではないかという考えのほうが、むしろ多いといってもいいでしょう。

原因不明である以上、「統合失調症」という病気の境界ははっきりしたものではありません。診断基準も作成されていますが、それは症状と経過に従ったものであって、原因や検査所見に基づいたものでありません。つまり、患者さんに対してレッテルを貼るように「あなたは統合失調症です」と言い切れるほど、統合失調症は根拠のあるまとまりではありません。むしろ、「こうした状態は統合失調症と呼ばれています」というのが、現状にあった説明の仕方です。ただ、患者さんの治療をしていくうえではそういった概念が一種の仮説として必要であり、また医師によって診断が異ならないよう、申し合わせとして診断基準が必要になるのです。

私たちに言えることは、「原因はわからないけれども今のあなたの状態は何らかの病気によるものであり、治療が必要です」ということです。そして、病名は何かと訊かれれば、「今の診断基準に当てはめると統合失調症というところに当てはまります」とは言えますが、「統合失調症です」と断定的に言うことは本来できないはずです。

統合失調症は主に思春期から青年期、つまり10代〜30代に発症します。発症は10代後半から増え、ピークは男性では20代前半、女性では20代後半です。40代以降の発症もないわけではありませんが、その数は多くありませんし、そもそもそうした例を同じ統合失調症に含めてよいのかは、議論の分かれるところです。これまで統合失調症の発症に男女差はないとされていましたが、実際は男性の方がやや多いとも言われています。発症時期は前述のように男性が早く女性が遅いのですが、一般に発症が遅いほど予後(治療後の経過)が良くなる傾向がありますので、全体として男性より女性で予後がよいことになります。

発症してもしっかり治療すれば最初の数年間、2年〜5年ほどで半数ぐらいの方はよくなります。発症してから治療までの期間を短くするということと、治療が始まってから最初の数年間にしっかり治療していただくことが大切です。ただ、統合失調症はいったん軽快しても、その後の経過の中で再発することがあります。治療を中断すると、最初の数年間はとくに再発しやすくなります。そのため治療を始めて数年間は再発しないよう通院治療を継続する必要があります。再発しなければ、治療の目標を生活上の回復へと移していくことができますが、再発を繰り返していると、再入院を繰り返してそのつど振り出しに戻り、社会生活の回復がより困難になってしまいます。

統合失調症は、明らかな精神病の症状が出現してから治療につながるまでの期間(未治療精神病期間とよばれます)が長いとされ、平均で約2年といわれています。実際は、この期間がさらに長いこともあり、たとえば松沢病院に入院する患者さんの中には、発症後10年、20年以上たち、両親が亡くなり生活が立ち行かなくなって初めて事例化して、病院に連れてこられる例もあります。ということは、いつまでも統合失調症が気づかれず、医療にかかることなく一生を終える人もいるわけです。

なぜそういうことが起こるかというと、家族など周囲の人が「病気である」と思わないからです。たとえば「理由もなく家に閉じこもって何もしない生活を送っている」場合、そうした経過をたどる病気があるということを知らなければ、これは病気かもしれないと疑うことはできません。統合失調症はさきほど「内因性」であるといいましたが、これは「外因」つまり脳や体の病気など明らかな身体的原因や、「心因」つまり原因となる生活上の出来事がないということです。このように目に見える原因がないことが、病気を疑うことを難しくしているのです。

最近では統合失調症がテレビで取り上げられたり、患者さんが自分の体験を語ったりすることが増えているように思います。統合失調症という病気があり、こういう経過をたどるのだということを知っていれば、「病気かな」と疑うことができます。まず「知ること」が大切だと思います。

統合失調症という病気の認知度はたしかに以前と比べて上がっていると思いますが、治療することによって良くなるということまで知識として知っていただく必要があります。そうでないと、たとえば精神科の病気は治らないといった先入観や、薬物療法の副作用ばかりが強調されるネガティブな治療のイメージにとらわれかねません。治療につなげるためには、極端に偏らない正確な知識を共有していくことが必要です。

 

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