院長インタビュー

地域健診から感染症まで、多様な医療ニーズに応える りんくう総合医療センター

地域健診から感染症まで、多様な医療ニーズに応える りんくう総合医療センター
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

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大阪府泉佐野市にある地方独立行政法人りんくう総合医療センター(以下、りんくう総合医療センター)は、大阪府南部の泉州地域における急性期医療の要として、がん診療、救急医療、周産期医療など幅広い地域医療に取り組んでいます。2018年には大学病院本院に準じた診療機能を有すると考えられる“DPC特定病院群”に指定されたほか、コロナ禍においては全国で4施設しかない特定感染症指定医療機関としてコロナ罹患の中等症ないし重症の患者さんや妊婦さんを数多く受け入れるなど、各方面で獅子奮迅のはたらきを見せています。そんな同センターの特徴について、理事長の山下 静也(やました しずや)先生にお話を伺いました。

2011年、当センターの前身となる市立泉佐野病院が地方独立行政法人へと移管され、りんくう総合医療センターとして再スタートを切りました。2013年には当センターと大阪府立泉州救命救急センターが統合し、泉州地域における救急医療の砦を担うようになります。現在は感染症病床10床を含む388床の病床を備え、地域の医療を支える急性期病院として地域住民に貢献しています(2024年3月時点)。

当センターの機能は多岐にわたり、大阪府がん診療拠点病院をはじめ、地域医療支援病院や災害拠点病院としての機能に加え、泉州救命救急センター、泉州広域母子医療センター、特定感染症指定医療機関でもあります。特に、日本に4ヶ所しかない特定感染症指定医療機関の1つとしての感染症専用病床を備える当院は、コロナ禍において、大阪府内の他地域から重症患者さんや妊娠中の患者さんに対する診療を積極的に引き受けてきました。また、泉州救命救急センターでは外傷、火傷を含む重症患者さんの急性期治療を専門に行う3次救急医療施設として有名で、全国から医師が集まっており、いかなる時間帯でも重症患者さんの治療が行えるよう、救急医学専門の医療スタッフが24時間体制で診療に当たっています。

一方、当センターは大阪府外国人患者受入れ拠点医療機関にも指定されています。外国人向けの診療は、外国人患者受入れ医療機関認証制度(JMIP)の認定を受けた国際診療科が担当しており、全国からの脚光を浴びている希少な診療科です。国際診療科では関西国際空港から来院される外国人旅行者のほか、大阪府在住の通訳が必要な患者さんにも対応しています。

さらに我々は泉州南部の病病連携(病院同士の連携)、病診連携(病院と診療所の連携)をスピーディーに行う診療情報ネットワークシステム“なすびんネット”を運営するとともに、2017年には“りんくうメディカルネットワーク”を設立して地域の医師との交流を深めるなど、率先して地域の医療連携に取り組んでいます。

当センターと市立貝塚病院は、泉州広域母子医療センターを共同運営しており、婦人科は市立貝塚病院、産科と新生児集中治療(NICU)は当センターというように、それぞれ役割を分担しています。安産が想定される妊婦さんは地域の産科診療所で出産が可能ですが、妊娠糖尿病妊娠高血圧症候群などのあるハイリスクの妊婦さんではそうはいきません。そのため当センターはそのようなハイリスクの妊婦さんが安心してお産に臨めるよう、診療やお産を一手に引き受けています。この背景には、以前より社会問題となっている大阪府南部における産科医の不足という問題があります。なお同センターの産婦人科では、漫画とTVドラマ“コウノドリ”のモデルとなった荻田 和秀(おぎた かずひで)先生が部長を務めており、全国的な注目度の高い診療科です。

当センターは、脳卒中などを担当する脳神経外科、急性心筋梗塞(しんきんこうそく)心不全などを担当する循環器内科を筆頭に、地域を守る急性期病院として救急医療に取り組んでいます。

設備面では、前立腺がんなどの治療に手術支援ロボット“ダヴィンチ”を採用するほか、心臓血管外科では3D内視鏡を用いて全ての手技を行う“完全3D内視鏡下MICS”を活用するなど、低侵襲(ていしんしゅう)な(体への負担が少ない)治療に努めています。

また、ハイブリッド手術室や最新の医療機器・技術を積極的に導入することに加え、医師の育成にも尽力しています。当センターは病院規模が大きいため手技においても指導医が立会う機会が多くあり、若手の医師が成長しやすい環境が整っています。このようにして継続的に質の高い医療を提供できるよう心がけてきました。

近年、循環器内科では心不全や心筋梗塞の治療に加え、不整脈に対するカテーテルアブレーション(心臓内で異常を起こしている場所をカテーテルで焼灼し、正常なリズムを取り戻す治療)のニーズが急増しています。また地域の中で当センターの急性期医療がますます大きな役割を担うようになってきたため、救急の受け入れはもちろん、他院で診断がつかない難易度の高い病気にも対応し、地域の患者さんを支えるべく日々奮闘しています。

泉州医療圏では、がん検診を含む検診受診率が低い市町村が目立ち、死亡率の高いがんへの対策や検診受診率の向上などが課題とされてきました。そこで私たちは2023年に“先進医療開発センター”を開設(すでに活動していた倫理委員会、治験事務局、りんくうウェルネスケア研究センターを統合)し、臨床研究の支援や予防医学の強化など、研究マインドをもって多彩な事業を推進しています。現在では地域の健診受診率の向上や、生活習慣病家族性高コレステロール血症などの高頻度な遺伝性の病気の早期発見と治療を目指し、地域の医療者の教育、特定健診の指導などを行っています。

また、近ごろ急激に増えている心不全の患者さんに対応するため、心不全の在宅医療ネットワークを構築するほか、感染症センターでは災害やパンデミックなどの緊急事態に備えるべくスタッフのトレーニングを実施しています。

こうした院内外でのシームレスな医療ネットワークは、近隣の医療機関との連携なくして成立しません。当センターは泉州地域の皆さんを支える中核的な病院として、今後もリーダーシップをもって地域連携を強化していく所存です。

がん検診の受診率は地域的な課題となって久しく、当院でも進行してからがんが発見されるケースが多いのが実状です。我々としては、地域の皆さんに1日も早くがん検診を受けていただき、早期診断と早期治療につなげてほしいと願っています。また、当センターは今後も高血圧脂質異常症糖尿病メタボリックシンドロームなどの生活習慣病家族性高コレステロール血症の早期発見と早期治療のための地域への啓発活動を行って予防医療に尽力しつつ、病気にかかってしまった患者さんに対しては引き続き全力で患者さんと向き合いたいと思っています。泉州地域の最後の砦として地域の皆さんのお役に立てるよう、職員一丸となってまい進して参ります。

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