院長インタビュー

モットーは“熊本中央病院品質の医療を提供すること”-急性期医療を通して地域に貢献する

モットーは“熊本中央病院品質の医療を提供すること”-急性期医療を通して地域に貢献する
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

目次
項目をクリックすると該当箇所へジャンプします。

熊本県熊本市にある熊本中央病院は、1951年に国家公務員の職域診療所として開設されました。1997年には現在地に移転し、現在も地域の急性期医療を支えています。そんな同院の役割や今後について、院長の那須 二郎(なす じろう)先生に伺いました。

当院は1951年(昭和26年)に熊本共済診療所として開設しました。1958年(昭和33年)に国家公務員共済組合連合会 熊本中央病院に改称し、その後は病棟の増設や病床数の増加など、診療体制の強化を続けてきました。1997年(平成9年)に現在の場所に移転し、病床361床、手術室6室(内ハイブリッド手術室1室)を有する急性期病院として地域医慮を支えています。

当院は、地域の診療所や病院と連携しながら、入院を中心とした急性期医療を提供しています。ご紹介いただいた患者さんは当院で必要な手術や検査・治療を行い、治療を終えた患者さんはご紹介いただいた医療機関にお戻しするなど、地元かかりつけ医の先生方と密な連携が図られているのが強みです。紹介で受診される患者さんは年間で約14,700件(2023年度:以下同じ)に達し、66%が熊本市、23%が県南にお住まいの方です。

救急においては、地域の2次救急(入院や手術を要する重症患者への救急医療)を担っています。熊本市内には3次救急(命に関わる重症患者への救急医療)を担う救急救命センターが3つあり、救急医療が充実していることから、救急車の受け入れを断られることがほとんどないといわれています。その一方で、救急救命センターは救命が優先されることから、トリアージによって優先度が下がった患者さんは急いで医療を受けるのが難しいケースがあります。当院はそのような患者さんに対応するため病床を確保し、救急搬送されてくる患者さんに質の高い医療サービスが提供できる体制を整えています。

当院は2010年に熊本県指定がん診療連携拠点病院に指定されました。がん診療連携拠点病院は肺がん胃がん肝がん大腸がん乳がんなど、国内で多く見られるがんに対して、手術や化学療法、放射線治療による集学的治療をはじめ、リハビリテーション、緩和ケアまでを提供できる医療機関が指定されます。当院では前立腺がん膀胱がん、肺がんの症例数が県内でも非常に多く、乳がんについても日本乳癌学会認定乳腺専門医による症例数の増加を図っているところです。

また、2024年3月には手術支援ロボット“ダ・ヴィンチ”を導入しました。ダ・ヴィンチは先端にカメラと手術器具を備えた内視鏡を患者さんの体内に挿入し、カメラの映像を見ながら患部の切除などを行う内視鏡手術を支援するロボットです。患者さんの体への負担が少ないなどのメリットがあることから、当院では前立腺がんや肺がん、大腸がん、直腸がんなどの手術で活用し、症例数を増やしています。

当院の整形外科には多くの患者さんが紹介で受診に訪れています。主な症例は腰や首が原因の痛みやしびれ、関節の痛みや膝関節(しつかんせつ)股関節(こかんせつ)の変形、肘や手首の神経障害などで、主に手術が必要な患者さんの診療を行っています。また、当院は多くの診療科を有することから、合併症のある患者さんが多くいらっしゃっています。

2023年度は腰や首などの脊椎手術、人工膝関節手術、人工股関節手術、手の外科手術を数多く実施し、手術件数は889例に達しました。また、脊椎や関節領域においては、合併症を有する複雑性が高い患者さんを数多く診療しています。特に脊椎外科については、手術部位をリアルタイムで確認しながら手術を行うことができる「脊椎ナビゲーション手術」や、皮膚や筋肉の切開を最小限に抑えることができる脊椎固定術「PPS(経皮的椎弓根スクリュー)」、MED(内視鏡下の椎間板(ついかんばん)ヘルニア摘出術)やMEL(腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)に対する内視鏡下の椎弓切除術)などの内視鏡化手術に取り組んでいます。さらに、2024年2月には手術支援ロボット“Mako(メイコー)”を導入し、人工股関節置換術や人工膝関節置換術に用いています。

当院の呼吸器内科は新型コロナ感染症が拡大された際に、多くの患者さんの治療にあたって高い評価を得ました。現在も肺がんや肺炎、気管支喘息COPD慢性閉塞性肺疾患(まんせいへいそくせいはいしっかん))、間質性肺炎など、呼吸器疾患の診断と治療に取り組んでいます。

同科の特徴は、呼吸器外科と密接に連携しながら診療にあたっていることです。そのため、手術が必要になった場合でも転科の必要がなく、外科処置も速やかに行うことができます。また、放射線科とも合同のカンファレンスを行い、症例検討や画像診断の技術向上に努めるなど、他の診療科とのチームワークの良さが強みになっています。

循環器疾患の診療においては、循環器科と心臓血管外科の医師のほか看護師、臨床工学技士、放射線技師など、診療科や職種の垣根を超えてスタッフがハートチームを結成し、高い技術を要する進んだ治療をより安全・確実に提供しています。設備においても、2018年に高性能の心臓血管X線装置と可動性の高い手術台、高精細な大型モニターを備えたハイブリッド手術室を県内で3番目に導入しました。これにより、極めて高い医療技術が必要な難しい症例や、重度の大動脈弁狭窄症に対する新しい治療法として知られている“TAVI(経カテーテル的大動脈弁留置術)”にも対応が可能となりました。TAVIは鼠径部の動脈や左の腋からカテーテルを挿入して大動脈弁を人工弁にする治療で、外科的に開胸したり心臓を止めずに治療できたりすることから、高齢の患者さんや外科手術のリスクが高い患者さんの治療が可能です。TAVIを適応するかどうかの判断も診察と検査の結果をもとにハートチームのカンファレンスにて決定しており、

患者さんに良質な医療を届けることが当院の重要な使命です。その使命を果たすために欠かせないのは、全ての職員が職場である自分の病院に愛着を持ってもらうことだと考えています。

そこで当院では、医師や看護師、理学療法士、薬剤師、事務スタッフなどに職域を超えて集まってもらい、さまざまな課題に対応していく取り組みを1年ほど前に始めました。課題を集めるために利用したのはインターネットです。スマホでQRコード読み込むだけで、簡単にコメントを書き込みができるような仕組みを整えたところ、職場の課題だけでなく、「患者さんに喜んでいただくため、こんなことをしてあげたい」などといった提案も数多く寄せられています。寄せられた課題・提案を全て解決できるわけではありません。しかし、現場からの意見を集める仕組みがあることがとても重要で、風通しのよい職場になれば快適に働くことができ、それが最終的に患者さんに良質な医療を提供することにつながるのではないでしょうか。

当院は早い段階から病診連携を進めてきました。その窓口になっているのが“診療支援センター(地域医療連携室)”です。病診連携がスムーズに行われるようなサポートをしている部署で、先生から紹介のお電話をいただいたらすぐに当院で診療できる体制を整えるなど、開業医の先生との密な連携が当院の武器になっています。また、当院と連携いただいている地域の医療機関さんには、CT検査の予約、紹介いただいた患者さんのカルテや検査画像の閲覧等ができる“くまちゅう画像ネット”を使っていただいており、好評をいただいています。

今後もこうしたネットワークを大切にし、強化していくことで、地域密着した医療を提供し続けていきたいと考えています。

最後になりますが、これからもより安心・安全な医療をお届けし、全ての患者さんから“当院に受診して良かった”と思っていただけるよう、職員と一緒になって努力を続けていく所存です。地域の皆さんにおかれましては、引き続きの温かいサポートをお願いできれば幸いです。

実績のある医師をチェック

Icon unfold more