院長インタビュー

地域から望まれる医療サービスを追求し、提供する湘南中央病院

地域から望まれる医療サービスを追求し、提供する湘南中央病院
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

目次
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神奈川県藤沢市(辻堂駅より徒歩約8分)にある湘南中央病院は、グループ施設として介護老人保健施設や訪問看護ステーション、居宅介護支援事業所、地域包括支援センターを持ち、急性期医療から回復期、在宅医療、ターミナルケアまで、シームレスで包括的な医療サービスに取り組んでいます。湘南東部医療圏で地域医療を支える同院の役割や今後について、同院の理事長である呉 鐡仁(くれ てつじん)先生に伺いました。

当院は、1955年に若林外科医院として開院し、2025年で創立70周年を迎える歴史ある病院です。開院当初は19床の外科診療所でしたが、1959年には35床に増床し、それに伴い名称も若林外科病院となりました。その後、地域の皆さんからの要望にお応えするべく増築や増床を行い、1964年には、医療法人若林会を設立、また現在の名称である湘南中央病院と改称しました。

1994年には、在宅療養をサポートするため、わかば訪問看護ステーションや若林会在宅介護支援センターを開設しています。

2000年には、介護保険制度開始に伴い、若林会居宅介護支援事業所と介護老人保健施設 湘南わかば苑(100床)を開設しました。これにより、在宅3部門に続き、医療と介護の両翼が揃いました。

2006年には病院を現在の場所に新築移転しました。現在、急性期病棟52床、回復期リハビリテーション病棟36床、地域包括ケア病棟52床、療養病棟43床、緩和ケア病棟16床、そして、透析センター(35床)と健康管理センターを設置し「湘南わかばグループ」と称し幅広い医療を提供しています。
また、藤沢市より藤沢市明治包括支援センター(明治いきいきサポートセンター)の委託を受けて、地域部門拡充として更なる連携が加わりました。

当院の目指すところは、ケアミックス型病院として地域と密接につながる“あったかい医療”のプロであることです。当グループのさまざまな施設と連携し、急性期の治療から回復期リハビリテーション、在宅での療養や介護、ターミナルケアまで、さまざまな段階をシームレスにつなぎ、それによって地域の皆さんの健康的な生活をサポートすることで、皆さんとの絆を深めつつ、求められる医療を提供していきたいと考えています。

2025年問題における地域包括ケアシステム構築を考えたとき、当院はかなり前からそれを見据えて取り組んできたと言えます。

病院外観
病院外観(湘南中央病院ご提供)

当院の整形外科には、整形外科専門医(日本整形外科学会認定)がおり、外傷骨折変形性関節症変形性脊椎症(へんけいせいせきついしょう)関節リウマチ骨粗しょう症骨軟部腫瘍(こつなんぶしゅよう)スポーツ障害などの治療を行っています。

当院の院長である池田 全良(いけだ まさよし)は日本手外科学会の代議員なども務める手外科のスペシャリストで、現在も第一線で診療、手術を行っています。
手指や手関節周辺の外傷と疾患は多岐にわたり、外傷では骨折末梢神経損傷、腱損傷などです。その主なものは、骨性マレット、PIP関節損傷、中手骨骨折、舟状骨骨折橈骨遠位端骨折などです。主な疾患は腱鞘炎ばね指・de Quervain病など)、手根管症候群などの絞扼性末梢神経障害、手指のDIP関節およびPIP関節と母指CM関節の変形性関節症(Heberden結節、Bouchard結節、母指CM関節症)、関節リウマチにともなう手指および手関節の障害などです。

手は日常生活を維持するために重要な役割を果たす部位です。単純な骨折であっても、手指の機能をできるだけ損なわないよう治療するには、さまざまな知識や豊富な経験が必要と言ってよいでしょう。当院の手外科診療については学会からも高い評価を得ており、日本手外科学会の専門医研修施設として認定されています。

突然のけがや病気で入院すると、日常生活が成り立たなくなってしまうことがあります。多くの患者さんは、「入院の期間は、できる限り短くしたい」と思っているのではないでしょうか。当院の外科では患者さんがより早く社会復帰できるよう、日帰り手術、1泊2日での手術も視野に入れた治療方法をご提案しています。

日帰り手術の対象となるのは、鼠径ヘルニア内痔核胆石症下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)などの疾患です。患者さんの体への負担を少しでも減らせるよう、新しく開発された手術法なども積極的に取り入れています。

当院の外科には常勤3名の医師が在籍しており(2024年12月時点)、一般外科、消化器外科、大腸肛門外科、甲状腺外科など幅広い分野の外科治療と救急診療を手がけています。理事長である私自身も、日本外科学会と日本消化器外科学会の認定医として、患者さんの治療にあたっています。外科というと手術を担当する部門という印象がありますが、当院では内視鏡による検査や治療、がんの化学療法なども外科が中心となって行っています。

当院が目指す、地域に根ざした“あったかい医療”で大きな役割を果たしている内科には、一般内科の他に消化器内科、呼吸器内科、循環器内科、糖尿病内科などが揃っており、7名の常勤医師が親身に診させていただいています。また、当院の健康管理センターで行っている成人検診も内科が担当し、地域の皆さんの病気の予防にも尽力しています。

また当院の透析センターは、日曜以外の週6日、血液維持透析を行っています。現在は高齢化が進むにつれ、複数の病気を持つ通院が難しい透析患者さんも増えていますが、当院はさまざまな病床を持っている強みを生かし、病状に合わせた病棟に入っていただくことが可能です。さらには多くの診療科がある強みも生かし、他の疾患の治療を行いながら入院透析を行うこともできます。

緩和ケア病棟というと、人生の最期を迎える場所というイメージを抱く人が多いのではないでしょうか。しかし本来の緩和ケア病棟は、生命に関わる疾患を抱えた患者さんの身体的な痛みや苦痛、心理的な問題や社会的な困難をできる限り取り除き、最期まで自分らしく生きられるよう支える場所です。

そのため当院の緩和ケア病棟では、医師、看護師、薬剤師、理学療法士、ソーシャルワーカー、管理栄養士、ボランティアなどがチームを組んで、患者さんとご家族を支えています。近年は緩和ケア病棟を持つ医療機関も増えてきましたが、当院は湘南東部医療圏ではもっとも初期に緩和ケア病棟を設置しており、豊かな経験を持っています。

緩和ケア病棟では、手術や抗がん剤、放射線といった根治を目的とした治療は行いません。苦痛を改善するための投薬や検査、症状の緩和を目的とした内視鏡的治療などを行っています。患者さん一人ひとりの症状や考え方を尊重したケアプランを立てて、その人らしい生活ができるようにサポートしています。

またご自宅での生活にできるだけ近い環境を実現するため、設備面や面会時間にも配慮しています。ご希望があれば、ペットとの面会も可能です。病状が安定している場合は退院して、在宅医療に切り替えることもできます。介護中のご家族が休息をとるための短期入院(レスパイト入院)にも対応しておりますので、ご希望があればぜひご相談ください。

2013年に在宅診療をスタートさせ、通院困難な患者さんへ定期的な訪問診療を行い、自宅や施設で安心して療養を続けられるようサポートしています。特に緩和ケア外来や緩和ケア病棟との連携により、ガン末期の患者さんへの訪問診療も積極的に受けています。その他にも認知症脳梗塞後遺症、心不全や慢性呼吸器不全、整形外科的疾患など通院が難しい方もご利用いただけます。また、入院が必要と判断した場合には、即入院治療に移行できることを強みにしております。

高齢化が進む現在、医療へのニーズが増えるにつれ、地域内の病院が役割分担をして地域全体の医療を担う、という取り組みが全国で進められています。当院もこの地域において、他の病院と連携しながら地域全体で質の高い医療を提供できるよう尽力しています。

その一例が救急医療です。以前は当院でも救急の患者さんを積極的に診させていただいていましたが、近年は近隣の病院が積極的に救急患者を受け入れるようになったことから、当院はそれらの病院からの下り搬送を受け入れるケースが増えてきました。下り搬送とは、救急搬送された患者さんが、連携する一般病院でも対応可能と判断されて転院搬送されることです。つまり、高次の救急医療を提供する病院の後方支援病院のような位置付けになるでしょうか。

こうした地域の医療インフラの変化に伴い、当院は現在、急性期を経た患者さんの受け入れとともに、在宅医療への移行支援などの立場を担うことも多くなっています。これからも当院は、強みを生かしつつ他の医療機関と連携しながら地域の皆さんの望む医療を提供してきたいと考えています。

ナイチンゲールの誕生日である5月12日が“看護の日”に制定されていることはご存知でしょうか。当院では看護の日にちなみ、毎年5月に健康フェスティバルを開催していました。コロナ禍のため2020年から中断していますが、状況をみて再開を考えています。

健康フェスティバルでは、血圧や血管年齢、骨密度、筋肉量が計れるブースを設置しています。また、医師や看護師による健康相談、薬剤師による服薬指導、管理栄養士による栄養相談なども行っています。
また、お子さん向けに、ユニフォーム体験、地域の救急隊にも協力をいただき、救急車やAED体験なども実施しました。献血バスが来たり、藤沢市のマスコットキャラ“ふじキュン”が登場したりしてイベントを盛り上げてくれたこともあり、毎年500名近くの来場者でにぎわいました。こうしたイベントを通して、健康への意識を高めていただくとともに、病院に対して親しみを持っていただくことで、来院しやすさにつながればと思います。

その他、地域や市のイベント・お祭りなどに出張健康相談として参加、地域の住民向けに医療講話、介護予防講座・公園体操など、積極的に予防の推進活動を行っております。

お祭り
お祭りでの出張健康相談(湘南中央病院ご提供)

私は湘南中央病院に勤務して25年になります。
外科医として、大腸肛門疾患をはじめとする消化器の病気を専門としております。なぜ外科を選んだのかというと、診察をして診断を下し手術をした結果、患者さんが回復して退院していくという起承転結がはっきりしているからです。言い方を変えれば、やりがいを感じやすい分野ともいえるでしょう。

ただ実際の医療現場は、学生時代に思い描いたものより何倍もハードでした。外科医となって初めて勤務した病院では、指導にあたった先生から毎日のように厳しい指導を受けました。右も左も分からない私を医者としてやっていけるよう導いてくださった先生は、まさに恩師というべき存在で、今でも感謝の念に堪えません。

大学では大腸がんの肝転移を研究していた私ですが、がんの治療法も時代とともにどんどん変化しています。昔の知識だけでは、患者さんに適切な治療を提供し続けることはできません。特に乳がんは、患者数が多いことから治療法の進歩も早く、まさに日進月歩ともいえる勢いです。地域の皆さんに質の高い医療サービスを提供し続けようと考えるなら、積極的に学んでいく姿勢を崩さないことが大切だと、日々痛感しています。

当院は2025年で開院70周年を迎えます。地域のみなさんに支えられ、常に地域の皆さんとのつながりを大切にしてきました。

また当院では、病気の早期発見・早期治療のための健診にも力を入れております。同時に後進の育成にも尽力し、質の高い医療サービスをこの地で提供し続けられるよう取り組んでいます。これからも地域の方々が住み慣れた場所で最期まで安心して過ごせるよう、“あったかい医療”を掲げ、スタッフが一丸となって努力することはもちろん、地域の介護施設や行政とも密接に連携して地域の方々の健康を支えていきたいと願っています。今後ともよろしくお願い申し上げます。

受付
病院受付(湘南中央病院ご提供)
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