
HIVの治療薬の開発が進んでいることから、以前のように死に至る病気ではなくなってきています。日進月歩である現代の医学において、HIV感染症は完治させることができるのでしょうか?引き続き臨床経験豊富な尾上泰彦先生に伺いました。
HIVを体内から完全に排除することはできないので、現在の医学ではまだHIV感染症を完治させることはできません。しかしながら、適切な治療を行えば身体の中でHIVが増殖するのを防ぐことができます。HIVの増殖が抑えられれば免疫機能を回復させて維持することができます。免役機能を維持することで、エイズの発症を遅らせることができるのです。
長期にわたって血中のHIV量を検出限界以下まで抑えることです。検出限界とは、検査によって血中のHIV量を測ることができる、最小の限界のことをいいます。血中ウイルス量を減らすことで、免疫力を回復させることができます。免疫力が回復すると、日和見感染の可能性を下げることができ、生きることができる期間を伸ばすことができます。また、QOL(Quality of life:生活や人生の質)も維持することができます。
HIV感染症の適切な治療には、患者さんが規則正しく治療薬を服用することが不可欠です。定期的な服薬がなければ治療効果が不十分になり、体内のHIV量を抑えきれなくなるほか、治療薬に対して耐性を持つウイルスの出現を招きかねません。こうした観点から、HIVの治療にはアドヒアランスが必要といわれています。
アドヒアランスとは医療用語のひとつです。この言葉には、「患者さんが治療方針に積極的に参加し、自らの意志で治療を実行し、それを続けて行く姿勢を重要視する」という意味があります。
アドヒアランスの低下は、すなわち治療効果の低下につながります。そのため医師には、治療開始前に最良なアドヒアランスを行えるような環境をつくることが重要といわれています。
抗HIV治療を開始する時期の早期化が推奨されてきています。それは、治療の早期化による副作用や薬剤耐性の出現などのリスクより、治療開始を遅らせることによる予後の悪化の方が懸念されているためです。治療薬の開発が進んだことによって、飲みやすく副作用が少なくなったことも治療の早期開始の後押しとなっています。
治療効果はアドヒアランスが影響を与えます。そのため、治療薬の副作用やその他のリスクについて医師と患者さんが十分に検討した上で、最良なアドヒアランスを行える環境を整えて治療を開始する必要があります。また、医療者は最新のガイドラインを参照し、その時の最良であると考えられる治療情報を提供することが必要となります。
たとえ一時的であっても、治療を途中で中断すると予後が悪化することが明らかになっています。そのため、長期にわたって継続可能な治療法が求められます。長期継続を可能にするためにも、服薬回数や服薬する薬剤数が少ないこと、副作用が少ないことなどが重要視されています。医療者は、患者さんのライフスタイルなども考慮して患者さんの負担を減らす治療法を提案する必要があります。
プライベートケアクリニック東京 院長
尾上 泰彦 先生の所属医療機関
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