院長インタビュー

救急からがん治療まで、神奈川県央地域の健康を支える東名厚木病院

救急からがん治療まで、神奈川県央地域の健康を支える東名厚木病院
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

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東名厚木病院は、神奈川県県央地域の厚木市に位置し、東名厚木IC近くにある総合病院です。開院から携わってきた救急医療、そして現在注力しているがん治療において、地域の中核病院として高度な医療を地域に提供しています。

今回、院長の北野 義和(きたの よしかず)先生に同院の特徴についてお話を伺いました。

東名厚木病院は、昭和56(1981)年、60床の病院からスタートしました。その後の増床や規模拡大により、地域医療支援病院、神奈川県がん診療連携指定病院、管理型医師臨床研修指定病院などの指定を受けながら、現在は282床を有する総合病院として厚木市をはじめとする神奈川県央医療圏の地域医療に尽力しています。

当院は救急医療とがん治療を二本の柱として力を入れており、救急では年間約5,000台の救急車を受け入れています。地域の急性期病院として”お断りしない救急医療”をスローガンに、一人でも多くの救急患者を受け入れ、地域医療を支えることは当院の使命だと考えています。

当院では地域のがん患者さんへの包括的ながん治療に取り組んでおり、2020年に県央医療圏で最初の神奈川県がん診療連携指定病院に指定されました。これはがん診療に対して体制や設備の整備、情報提供、他施設との連携といった項目で基準を満たし、高い質のがん医療を提供する機関が指定されるもので、2024年現在、神奈川県内に10か所が指定されています。

がんの三大療法である手術療法、化学療法、放射線治療による集学的な治療を行っており、とくに放射線治療においては、東京大学医学部附属病院放射線治療部門との専門ネットワーク回線を用いて情報の共有や連携を行っており、大学病院と同等レベルの質の高い医療を提供しています。

また、乳がん手術後に乳房再建を行う形成外科は特徴ある科の1つです。当院では、患者さんの選択肢を広げるため、乳腺外科医と形成外科医が連携して一次再建を行っています。乳がんの手術と同時に再建を行うことで、合計の手術回数を1回減らすことができます。さらには、下腹部など患者さんご自身の組織から胸に移植する再建も手掛けています。これは、やや手術難度が高いといわれており、当院は数少ない実施施設のひとつです。

直接がんを治すこと以外にも、日常生活と治療の両立に向けたサポートは重要です。近年がんは不治の病ではなくなったことにより、治療が長期化し、仕事や家庭と治療の両立が重要となってきました。わたしたちは地域の病院として、患者さんの療養生活に寄り添ったサポートを心がけています。

また、緩和ケアにも力を入れています。緩和ケアというと、「がんの末期に受けるもの」というイメージが強いかもしれませんが、がんに伴う痛みやつらさは「がんと言われた時から」はじまるといわれています。当院では、多職種からなる緩和ケアチームが患者さんに寄り添うサポートを行っています。県央医療圏唯一の緩和ケア病棟もありますので、痛みや辛さなどは我慢せず、ぜひご相談いただければと思います。

当院の泌尿器科においては、尿路悪性腫瘍(前立腺癌、腎癌、膀胱癌)と良性疾患に関する診療を重点的に行っています。

件数の多い尿路結石に対する治療では、Delta Ⅲ(独・ドルニエ社製)という体外衝撃波結石破砕装置(ESWL)を導入し、体外から結石だけを破砕する治療を行っています。これは、施術後すぐに日常生活に復帰できるほど患者さんの負担が軽くできる治療法です。

また、2024年からはダヴィンチ(da Vinci Xi)サージカルシステムを導入し、低侵襲・ロボット支援手術において経験豊富な前・北里大学病院病院長・泌尿器科主任教授の岩村 正嗣(いわむら まさつぐ)先生を常勤医として迎えました。これにより、患者さんへの負担が少ない従来の腹腔鏡手術にロボット支援が加わり、より精度が高く柔軟な手術を患者さんに提供することが可能となります。

循環器内科は心臓や血管に関する病気の治療を行う診療科で、心筋梗塞といった虚血性疾患や不整脈などを中心に、幅広い心臓血管疾患に対応しています。特に心房細動に対するアブレーション治療では有意な成績を上げており、心房細動による合併症を防ぐことに注力しています。

心房細動とは多く発生する不整脈の一種で、心筋が細かく震えることで息苦しくなったり、心臓内に血栓を作り、脳梗塞のような重い合併症を引き起こす可能性もあります。当科では心房細動の治療法の一つとして、原因箇所を焼灼治療するアブレーションという方法を行っています。この治療法を行う医療機関は限られますが、当院はその医療機関の一つです。

当院の摂食嚥下療法科は歴史ある部署の一つで、“口から食べること”全般を支援する専門部署です。“摂食嚥下障害”とは、脳卒中肺炎認知症、心理的な原因などにより食べることに関する行動ができなくなる状態を指し、飲み込む機能が衰えた場合は“嚥下障害”と呼ばれます。口から食べられないと脱水症栄養不良になりやすく、飲み込む機能が衰えると誤嚥性肺炎窒息の原因ともなります。なにより、食べる楽しみは生きるうえで大きな力となるため、食べ物の摂取を口から行うことは人間が活動するうえでも大きな意味があります。当院では看護師や歯科衛生士、言語聴覚士など複数の職種で構成されたチームが、口からの食事摂取と退院の早期実現を目指して患者さんをサポートしています。

また、がん治療においても、味覚の変化や歯がしみるなどの症状が現れることがあります。そのため、がん治療がスタートする前に当チームがサポートに入り、円滑な治療と生活の質の維持に努めています。

当院は“地域に信頼される病院、患者に愛される病院、誇りと責任を持てる病院”を理念として掲げています。そしてこの理念の実現に向け、神奈川県央地区において、救急医療とがん治療の2つの分野での医療提供を当院の使命としています。なるべく多くの地域の方を受け入れ、困った方の助けになるよう取り組んでいます。

また、現代の医療において、チームでの協力は重要であり、当院はスタッフ同士がお互いを尊重し協力し合う環境づくりを大切に考えています。このような取り組みを通して、我々は地域の方々から信頼される病院であり続けるよう努力してまいります。

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