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連載新型コロナワクチンを知る

ワクチンの正しい情報を知ってほしい―新型コロナウイルス感染症の情報を伝える「こびナビ」とは?【後編】

公開日

2021年02月24日

更新日

2021年02月24日

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2021年02月24日

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この新型コロナウイルス感染症に関する記事の最終更新は2021年02月24日です。最新の情報については、厚生労働省などのホームページをご参照ください。

日本ではHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンの副反応に関する過剰報道をきっかけに接種率が大きく低下し、現在でもワクチンに対して「危ない」という認識を持つ方がいます。木下喬弘先生は、米国ハーバード公衆衛生大学院への留学をきっかけにこの問題に目を向け、専門家が作るウェブサイトやSNSでの情報発信の取り組みに尽力。現在は、新型コロナウイルスワクチンの正しい情報を発信するためのプロジェクト「こびナビ」をスタートし、積極的な情報発信を行っています。前編に引き続き、木下先生の思いと活動についてお話を伺います。

活動のなかで聞こえてきた医師や市民の方々の思い

ハーバード公衆衛生大学院留学中に日本におけるHPVワクチン接種の問題に取り組んだ経験から、「信頼できる専門家が発信する、分かりやすいウェブサイトを作ろう」と考えました。インターネット上にはHPVワクチンの情報があふれています。しかしその中身は玉石混交で、説明が分かりにくいものや医学的根拠のない情報を掲載するサイトが数多く見受けられ、市民の方々に正しい情報が届きにくいという課題があったのです。そこで、まずは日本や米国の公衆衛生の専門家、産婦人科医、小児科医、弁護士などを募り、一般社団法人「HPVについての情報を広く発信する会(通称:みんパピ!みんなで知ろうHPVプロジェクト:以下、みんパピ)」という団体を設立。2020年8月にはウェブサイトを立ち上げるためのクラウドファンディングを開始しました。

当初の目標金額は400万円でしたがスタートと同時に多くの方から賛同をいただき、2日もたたずに800万円のセカンドゴールを達成、最終的に2600万円ものご協力をいただけたのです。医療系クラウドファンディングのなかでも群を抜くような結果に、関係者一同、とても驚きました。

このとき最初に協力してくださったのは、医療従事者の皆さんです。特に、子宮頸(しきゅうけい)がんによって亡くなる方や妊娠・出産を諦めざるを得なかった患者さんを多く診てきた産婦人科の医師たちにとって、HPVワクチン接種問題は本当に深刻なテーマであったようです。子宮頸がんを防ぐためのワクチンがせっかくあるのに、日本だけが世界に取り残され、今でも子宮頸がんで亡くなる方が後を絶たない。そんな状況に忸怩(じくじ)たる思いを抱いていたのでしょう。

写真:PIXTA

写真:PIXTA

また、過去に子宮頸がんを罹患された方や、子宮頸がんで大切な家族・友人を亡くされた方、子宮頸がんの前段階である「異形成」が見つかり不安な日々を過ごしている方など、医療従事者以外の方からも、多くのご支援や「心から応援しています」という声をいただきました。

クラウドファンディングを通じて、HPVワクチン接種に関する正しい情報発信を求める声がこんなにもあったのかと驚いたと同時に、みんパピが彼らの思いを代弁し実現する手立てになり得るという可能性を感じました。

どこから情報を届けるか?―「みんパピ」の活動

クラウドファンディングを経てみんパピのウェブサイトが誕生しました。みんパピは専門家の作った信頼できるウェブサイトとして、HPV感染症や子宮頸がんという病気の基礎情報、ワクチンを打つことの重要性や安全性などについて情報発信を行っています。

最近ではかかりつけ医の医師たちに協力いただき、HPVワクチン定期接種の対象年齢である12〜16歳の女の子にワクチン接種の重要性を理解していただけるよう、ハガキサイズのリーフレットを作成し、頒布しています。なぜかかりつけ医なのかというと、そもそも12〜16歳の女の子が産婦人科を受診する機会が少なく、HPVワクチンや子宮頸がんについて正しい知識を知る機会が得られにくいという現状がありました。そこで12〜16歳頃の女の子がもっとも接する機会の多いと思われる小児科、皮膚科、耳鼻科などを経由して情報を届けようと考えたのです。私たちはまず小児科医を中心に声をかけ、希望をいただいたクリニックに無料でリーフレットをお届けしました。最近では内科、皮膚科、耳鼻科、整形外科などさまざまな診療科の医師たちから声がかかるようになり、全国388施設から合計5万枚以上の注文を受けました。

今後も、HPVワクチンについての理解を深めていただけるようなアニメーションやドキュメンタリーの作成、全国の学校へのパンフレットの配布などを予定しています。集まった資金を有意義に使い、これからも活動を続けていきます。

新型コロナウイルスワクチンで同じ失敗をしないために

2021年2月中旬から先行接種が始まった新型コロナウイルスワクチン。現在、さまざまな情報があふれており、不安をあおる過剰報道などによってHPVワクチンと同じような流れになってしまうことを危惧しました。そこで私はみんパピでの経験を生かそうと思い、2021年1月より新型コロナウイルス感染症とそのワクチンの正しい情報を伝えるためのプロジェクト「こびナビ」に参加し、ウェブサイトの作成やメディア向けの勉強会などに携わっています。

みんパピ制作チームの協力によってこびナビのウェブサイトは猛スピードで作成され、2021年2月8日にリリースされました。サイト自体は全ての方を対象にしていますが、新型コロナウイルスワクチンは先行して医療従事者の接種が行われるため、現在急ピッチで医療従事者の方向けの情報提供を進めているところです。今後は、ワクチンのことをよく知らない市民の方々や妊娠・出産を予定している女性の方など、さまざまな方を対象に内容を充実させていく予定です。

最終的には、「こびナビを見ればどんな疑問でも解決できる」という状態を目指します。多くの方が不安な気持ちで病気やワクチンの情報を探すと思いますので、医学的に正しい情報をきちんと伝えることで、ワクチン接種について判断する際の助けになるようなウェブサイトにしたいです。

木下喬弘先生ご提供写真

新型コロナウイルス感染症は国全体、そして世界が注目している問題であり、正しい情報を広く伝えるためにはメディアの力が不可欠です。そのため、メディアに携わる皆さんにも国民の不安を過度にあおることなく正しい情報を発信していただけるようにと思い、2021年1月末にはメディア向けの勉強会を開催しました。

安全性・有効性を理解したうえで判断を

医学誌ランセットに掲載された2020年の論文では、ワクチンが安全であると強く同意する人の割合*について、日本は149か国のうちで「最下位」でした。このことから、日本では多くの方がワクチンを「危ないもの」と思っていることが分かります。「本当は打ちたくない」という気持ちで打っている方も多いかもしれません。

しかし、元来ワクチンはとても安全で有益なものです。まれに副反応が起こることはありますが、アレルギーのない健康な方であれば重い副反応が現れる確率は非常に低いですし、ほかのさまざまな薬剤にも同じような副反応の可能性があるのです。

もちろん、ワクチンを打つか打たないかを医師が強制することはありません。しかし、皆さんにはせめて安全性や有効性をしっかりと理解して、ワクチンを打つ目的やワクチンの仕組みなどを知ったうえで、ご自身やご家族の接種について判断していただきたいです。ワクチンのことをあまりよく知らないまま、なんとなく「打たない」という選択肢を選び、感染症の脅威にさらされる方を少しでも減らしたいのです。

私はこれからも周囲の人の協力を得ながら、市民の方々に必要な情報が分かりやすく伝えられるよう、地道に目の前の取り組みに尽力していきたいと思います。

*引用:Lancet. 2020;396:898-908. Supplementary appendix 2.

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