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連載新型コロナワクチンを知る

ワクチンは人々の健康を支える「影の立役者」―防げるはずの病気で苦しむ人を一人でも減らすために【後編】

公開日

2021年03月17日

更新日

2021年03月17日

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2021年03月17日

掲載しました。
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この新型コロナウイルス感染症に関する記事の最終更新は2021年03月17日です。最新の情報については、厚生労働省などのホームページをご参照ください。

2021年2月、新型コロナウイルスワクチンの先行接種がスタートし、長い闘いにようやく収束の兆しが見えてきました。しかし一方で、ワクチンに関するデマや根拠のない噂などが飛び交う状況があり、インフォデミック(不確かな情報が感染症のように伝わり、社会が混乱する状況)の発生が懸念されています。予防接種で防げるはずの病気で苦しむ人を減らしたいと情報発信などに尽力する中山久仁子先生(家庭医療・感染症専門医*、マイファミリークリニック蒲郡 理事長)に、どのように正しい医療情報を得たらよいのかを伺いました。

*感染症専門医:日本感染症学会認定

ワクチンは人々の健康を守る「影の立役者」

ワクチンというのは、効果を発揮したときにはその病気が起こらないので、人々がそのワクチンに守られていること(健康であること)をなかなか実感しにくいものです。そういう意味で、ワクチンはまさに「影の立役者」と言えます。実際、ある地域でワクチンの接種率が上がるとその感染症の流行がなくなるのですが、その状況に慣れていき病気がなくなり恩恵を感じられなくなった頃にワクチン接種を怠り、ワクチン接種率が低下してその感染症が再び流行してしまう、ということがよくあります。

このように、ワクチンは接種したことで自分が感染症にかからなかったことに気が付かない一方で、接種後の注射部位の腫れや体調不良などが起こればすぐに気付きます。症状は本人に分かりやすく気になりますので、ニュースにもなりやすい。つまり、そもそも情報が均等に露出していない可能性高いのです。SNSなどでワクチンの悪い面ばかりが取り沙汰されてしまうのはそのせいでしょう。

パソコンと携帯 写真:PIXTA

写真:PIXTA

「こどもとおとなのワクチンサイト」による情報発信

予防接種で防げるはずの病気で苦しむ人たちを1人でも減らしたいと思い、私たちは「こどもとおとなのワクチンサイト」(運営:一般社団法人日本プライマリ・ケア連合学会 予防医療・健康増進委員会 ワクチンチーム)を立ち上げました。これは、皆さんに正しい知識を持って適切に予防接種を受けていただくために、以下のようなワクチンに関する種々の情報を提供しているサイトです。

  • ワクチンとは/予防接種とは
  • それぞれのワクチンの性質、効果や注意点など
  • 月齢・年齢別の望ましい接種スケジュール
  • 接種機会を逃した場合のキャッチアップ(後追い)接種スケジュール
  • それぞれのワクチンで予防可能な病気の原因、予後(後遺症や死亡率など)や治療法
  • 予防接種がどれだけ病気を減らしてきたか

あなたもワクチン接種の対象者かも?

現在、風疹の流行を阻止するために、風疹第5期定期接種が実施されています。1962年4月2日~1979年4月1日生まれの男性を対象に3年間の期限付きです(2022年3月31日まで)。この世代は風疹の定期接種がなかったため風疹に対する免疫を持っていない人が多く、2013年と2018年の風疹の流行の時に感染した人の多くがこの世代でした。そのため風疹第5期の抗体検査を行い十分な免疫がない場合には、ワクチン接種を無料で受けることができます。

対象の方には自治体よりワクチン接種の無料クーポン券が配布されていますが、2年目終了が近い現時点で利用率は19%(2020年12月時点)とまだまだ低いです。42~59歳(2021年時点)までの男性といえば働き盛りの方が多く、ご自身がワクチンの対象者だという発想が浮かびにくいのかもしれません。ご本人とこれから生まれてくる世代を守るためにも、ぜひご本人やご家族がこの情報を知ったら、適切に抗体検査やワクチンの接種を受けていただくようお願いします。

※風疹ワクチン接種(対象者、実施する医療機関など)の情報はこちらをご覧ください。

そのほかに、感染力の強い麻疹は現在2回のワクチン接種が推奨されています。ただ、2006年度からそれまで1回だった定期接種が2回の接種(1歳児と小児期)となる制度がスタートしたため、十分な免疫がついていない方も多くいます。医療・教育関係者、海外渡航予定のある方はもとより、麻疹にかかったことがない方は2回接種が必要です。自分の母子手帳を確認していただき、2回の接種歴がない場合には予防接種をご検討ください。

また、小児の定期接種を何らかの理由で接種できずにそのまま打ち損じている方もいらっしゃいます。母子手帳のワクチン欄に空欄があったら保健センターや医療機関に相談してください。現在の予防接種スケジュールも参考にして不足しているワクチンがないかをご確認ください。

※国が推奨するワクチン接種の対象者についてはこちらをご覧ください。

※予防接種スケジュールについてはこちらをご覧ください。

子宮頸がんを予防する「HPVワクチン」

こちらのページで、現在HPVワクチンの適切な理解と接種の啓発に追い風が吹いているとお伝えしました。そのようななかで今後取り組みたいと思っているのが、自治体からワクチン接種の案内が届いた人たちに対して正しい知識を伝えられる仕組みづくりです。

たとえば「案内が来たけど、どうしよう」「ワクチン接種は不安だな」と迷ったときに相談するのはおそらく身近にいる保健の先生やかかりつけ医だと思います。その人たちが正しい知識を元に子宮頸がんやHPVワクチンのこと、あるいは副反応や有害事象が起きたときにどうしたらよいのかなどをきちんと伝えられれば、対象者は安心してワクチン接種を受けられますよね。「こどもとおとなのワクチンサイト」での情報発信に加えて、対象者と接する医療者への啓発を行うことで、病気やワクチンへの正しい理解と、適切なワクチン接種を進めていきたいと思います。

※厚生労働省のHPVワクチンに関するリーフレットの情報はこちらをご覧ください。

待合室 子ども 写真:PIXTA

写真:PIXTA

ワクチン・コンフィデンス(信頼)を高める重要性

新型コロナウイルスワクチンの実用化が実現し、今、世界では「ワクチン・コンフィデンス(信頼)」の確保・向上に向けての取り組みが進んでいます。感染の連鎖を断ち切るには私たちの多くが免疫を保有する必要があり、そのためにワクチン接種が必要不可欠です。そしてその実現には、メディアが正しい情報をフラットに伝え、市民はデマや根拠のない噂に惑わされないよう正確な情報源にアクセスすることが大切なのです。

先日、新型コロナワクチンで蕁麻疹(じんましん)を発症したとの報道が出ましたけれども、あれは有害事象(因果関係の有無を問わずワクチン接種後に生じたあらゆる好ましくない出来事)であって、副反応(ワクチン接種に伴う、免疫の付与以外の反応)であるかはまだ分かりません。正しく伝えるなら「有害事象が確認されました。しかしワクチンとの因果関係はまだ分かっていません」という内容になるでしょう。日本のメディアには、不安をあおる報道だけではなく、ぜひフラットで正しい報道のあり方を今一度考えていただきたいです。

新型コロナウイルス関連の情報については、厚生労働省のHP、あるいは日本プライマリ・ケア連合学会による情報サイト、正確かつわかりやすい情報を発信する新型コロナワクチン公共情報タスクフォースのページなどをご覧ください。

中山久仁子先生からのメッセージ

山中久仁子先生

私は「ワクチン接種によって防ぐことのできる病気で苦しむ人を1人でも減らしたい」という思いで現在の活動を続けています。基本的に、重症化したり後遺症が残ったりする可能性がある深刻な病気だからこそワクチンがあるのですから、ワクチンがあるものはそれだけ重要な病気であることをまずは知ってほしいです。そして、一人ひとりがワクチンについての理解を深め、意思決定をしていただきたいと思います。

病気になってしまった後に「ワクチンを打っておけばよかった」と悔やむことのないよう、適切にワクチン接種を受けていただきたいです。根拠のない噂などに惑わされずに、信頼のおける発信元からの情報を得るよう心がけてください。

新型コロナウイルス感染症をきっかけに、これまでの生活ががらりと変わりました。医療というのは意外と封建的で、時代に取り残されているような部分もあります。これからは現場の声や状況を一早くキャッチアップ・反映し、市民の一人ひとりがよい人生を歩んでいくのをサポートするような医療を実現したいと思います。そのために、これからも情報発信と日々の診療に努めていきます。

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