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連載新型コロナワクチンを知る

妊娠中・産後・授乳中の新型コロナウイルスワクチン―効果やリスクは?

公開日

2021年03月09日

更新日

2021年03月09日

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2021年03月09日

掲載しました。
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この新型コロナウイルス感染症に関する記事の最終更新は2021年03月09日です。最新の情報については、厚生労働省などのホームページをご参照ください。

世界中で混乱を巻き起こし、人々の生活に甚大な影響を与えた新型コロナウイルス感染症。2021年2月より日本ではワクチンの先行接種がスタートし、ようやく収束の兆しが見えてきました。大規模なワクチン接種を進めるイスラエルでは妊婦も積極的なワクチン接種の対象とし、現在、新規感染者や重症者が激減しています。日本では、現時点で妊婦に対する安全性は確⽴していないとしながらも、流行拡大の現状を踏まえて妊婦を接種対象からは除外していません。産婦人科を専門とする重見大介先生に、妊娠中や授乳中の方のワクチン接種について、現在分かっていることをお伺いしました。

※新型コロナウイルス感染症やワクチンの情報発信サイト「こびナビ」はこちらをご覧ください。

新型コロナウイルスワクチンは今までのワクチンと何が違う?

まずお伝えしたいのが、従来の一般的なワクチンには主に「不活化ワクチン」と「生ワクチン」という2つの種類があるということです。

「不活化ワクチン」とは感染力をなくした病原体からつくられたワクチンです。たとえば、インフルエンザワクチンやB型肝炎ワクチンなどがその一例です。不活化ワクチンは妊娠中に接種しても安全で、必要ならば適切に接種する必要があります。特にインフルエンザは妊娠中や出産後にかかると重症化しやすいため、インフルエンザワクチンは妊産婦さんの積極的な接種が推奨されています。

一方、「生ワクチン」は生きている病原体を微量接種するタイプのワクチンです。たとえば麻疹、風疹(ふうしん)、おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)、水痘(水ぼうそう)、BCG(結核)などへのワクチンが挙げられます。妊娠中は、生ワクチンの接種を控える必要があります。

妊娠中の女性:PIXTA
素材:PIXTA

新型コロナウイルスワクチンのうち、日本で接種が始まったもの(ファイザー社)は「mRNA(メッセンジャーRNA)ワクチン」と呼ばれる新しいタイプのワクチンです。不活化ワクチン、生ワクチンのどちらにも当てはまりません。

ウイルスそのものを接種するわけではなく、妊産婦さんでも接種可能です。というのも、mRNAという物質自体が不安定な存在で、体内に入ると比較的すぐに分解されてしまうため、ウイルスの免疫をつける以外体に大きな影響を及ぼさないとされているからです。

妊娠中・産後にワクチン接種する際の有効性は?

新型コロナウイルスワクチンの有効性は非常に高く、たとえばファイザー社とモデルナ社のワクチンは95%の有効率(非接種者に比べて発症する確率を95%低下させる)という結果が出ました。接種後に局所の痛みや頭痛、倦怠感、発熱などが見られることがありますが、多くは数日で軽快すると考えられます。

有効性のデータを示した臨床試験には妊産婦さんが含まれておらず、妊産婦さんに同じ効果を示すという明確な証明はされていません。ただ、mRNAワクチンの仕組みを鑑みると、妊娠中や産後の方が接種すると効果が落ちるというのは考えにくく、原理上は一般の方と同等に効果が期待できるはずです。

妊産婦へのワクチン接種の安全性は担保されている?

今のところ、新型コロナウイルスワクチンによる妊産婦さんへの特有のリスクとして報告されているものはありません。また、mRNAは体に入ると比較的すぐに分解されることから、基礎研究や動物実験上、妊娠に関わる胎盤やへその緒、精子・卵子などに対して影響を与えることはないといわれています。

また、新型コロナウイルスワクチン開発の臨床試験において、実際には妊娠と気付かずに臨床試験を受けていた方も少数含まれていました。それらのデータをピックアップしてみたところ、新型コロナウイルスワクチンを接種しても特別な副反応や有害事象が見られた例はなかったようです。

母親と赤ちゃん:PIXTA
素材:PIXTA

知っていただきたいのは、今のところ開発した製薬会社や関連学会などから長期的な安全性に関する懸念事項は報告されていないということです。長期的な安全性について懸念事項があれば必ず報告が出てくるはずですから、「今のところ心配はない」と認識していただければと思います。

授乳中のワクチン接種はOK?

授乳中の方が新型コロナウイルスワクチンを接種することは、妊産婦さん以上に安心であるといわれています。基礎研究によれば、ワクチンの成分が母乳に移行して赤ちゃんにうつる可能性は極めて低いそうです。また、仮に微量のワクチン成分が赤ちゃんにうつったとしても、それが悪い影響を起こすことはないといわれています。

ワクチン接種で妊娠の可能性が下がる可能性は?

妊娠を考えている方、不妊治療を行っている方の中には、新型コロナウイルスワクチンを接種することで妊娠の確率が下がるのではないかと懸念される方もいるようです。

基礎研究の結果では、mRNAワクチンの成分が精子・卵子に影響を及ぼすことはないと考えられています。接種によって妊娠の確率が下がる心配はないと考えてよいでしょう。ちなみに、これまで使用されてきたほかのワクチンにおいても、妊娠に大きく影響を及ぼすものはないとされています。新型コロナウイルスワクチンの接種を理由に不妊治療を中断したり、妊娠を諦めたりする必要はありません。これは、やはりアメリカのCDCや産科婦人科学会、日本の関連学会がそのように見解を述べています。

妊産婦のワクチン接種で注意するべきこと

日本産婦人科感染症学会が2021年1月に発表した資料によれば、妊産婦さんが新型コロナウイルスワクチンを接種する際は、一般の方と同様に本人の同意を得てから接種し、ごくまれに起こる副反応「アナフィラキシー・ショック」の可能性を考慮し、接種から30分は病院内で経過観察を行うことが提言されています。また、できる限り接種の前後に超音波検査を行い、赤ちゃんの心拍や状態を確認することも提言に含まれています。

ワクチン接種時の具体的な流れについてはまだ決まっていないことも多いのですが、妊産婦さんの接種はかかりつけの病院で赤ちゃんの状態を見ながら行われる可能性もあります。

診察のイラスト:PIXTA
素材:PIXTA

現段階で、妊婦さんが新型コロナウイルス感染症にかかり集中治療室に入るほど重症化するリスクは妊娠していない同年代の女性の3倍ほどで、死亡率は2倍弱にまで高まるという報告があります。また、感染症による炎症反応などの影響で早産となる可能性もあります。妊婦さんは定期的に妊婦健診を受ける必要があり、外出を完全に控えることはできません。感染予防のために100%家に引きこもるのは難しく、ワクチンを接種したほうがよい場合も多いでしょう。

妊婦さんについて、現在日本においては新型コロナウイルスワクチン接種の努力義務が外され、接種についてはご自身で判断することになっています。世界で共通しているのは「妊婦さん自身が接種する・しないを判断する、ということが尊重されている」ことです。体の状態や基礎疾患(肥満・糖尿病など)の有無によってもリスクは異なるため、かかりつけ医と相談しながら判断していただきたいと思います。

重見大介先生からのメッセージ

新型コロナウイルス感染症は高齢の方や基礎疾患のある方が重症化しやすいというイメージが強いかもしれません。しかし、30〜40代など若くても重症化して命を落とす方がいますし、妊婦さんの重症化リスクも高いです。実際、診療の中でさまざまな原因で重症となり、赤ちゃんがお腹の中にいる状態で集中治療が必要になる方を見てきました。そのため、ワクチンが普及することで重症化したり命を落としたりする方が1人でも減るとよいなと思います。

ただ「ワクチンがあればもう安心」というわけではないので、引き続き感染対策などは続けていく必要があります。しかしながら、新型コロナウイルスワクチンを多くの人が接種することによって社会的免疫を獲得できることが期待されるので、その後に生活上の制限が緩和して過ごせるようになるとよいですね。皆さんには、有効性・安全性など正しい情報を知ったうえで適切にワクチン接種を受けていただけたらと思います。新型コロナウイルス感染症やワクチンに関する情報は、「こびナビ」をぜひご覧ください。

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