2020年に第3波が到来した新型コロナウイルス感染症。2021年1月には2度目となる緊急事態宣言も出され、混乱は続いています。このようななか、国内外で新たなワクチンの開発・実用化が急ピッチで進められ、感染対策の決め手として注目が集まっています。日本ではいつ頃接種が可能になるのか、現在の開発状況などについて、厚生労働省の発表を基に解説します。
一般的にワクチンは、基礎研究、非臨床試験、臨床試験という3つのステップを経て開発されます。その過程で、候補となる物質の探索、安全性・有効性の確認、品質を担保しながらの大量生産について検討するため、通常は年単位の時間がかかります。
しかし、新型コロナのワクチンは早期の実用化を目指して通常よりも早いペースで研究が進められており、すでに一部の国では緊急的な使用等が認められているものが複数あります。たとえば、米国のファイザー社やモデルナ社、英国のアストラゼネカ社では第3相試験を実施し、開発中のワクチンを投与した人について、投与していない人よりも新型コロナウイルス感染症の発症が少ないという中間結果が出ています。
2月中旬から接種が開始できるよう、ワクチンの安全性と有効性についての確認が進められています。現在日本が確保する予定のワクチンは、2回接種の見込みです。
最終的には全ての方にワクチン接種できる状況を目指してはいますが、ワクチンは徐々に供給されるため、一定の順番を設けて接種を行う予定です。予定されている接種の順番は以下のとおりです。
なお、妊娠されている方を優先するか、子どもが接種の対象になるかなどは、ワクチンの安全性や有効性などの情報を踏まえて検討されます。
まず医療従事者等については、新型コロナの患者さんやその疑いのある方と頻繁に接する業務を行うため新型コロナウイルスにさらされる機会が多いこと、医療提供体制を確保するためには医療従事者等に対して新型コロナウイルス感染症の発症・重症化リスクの軽減が必要であることが考慮されています。
具体的な範囲は▽病院、診療所において、新型コロナウイルス感染症の患者さん(と疑われる方を含む、以下同じ)に頻繁に接する機会のある医師、そのほかの職員▽薬局で新型コロナウイルス感染症の患者さんに頻繁に接する機会のある薬剤師、そのほかの職員(登録販売者を含む)▽新型コロナウイルス感染症の患者さんを搬送する救急隊員、海上保安庁職員、自衛隊職員など▽自治体などの感染症対策業務において、新型コロナウイルス感染症の患者さんに頻繁に接する業務を行う方――としています。
これまでの議論や海外での対応を踏まえて65歳以上(2021年度中に65歳となる1957年4月1日以前に生まれた方)を対象としており、その規模は3600万人ほど(総務省人口推計)です。また、新型コロナウイルス感染症の重症化・死亡のリスク因子として年齢が大きく影響していることを考慮し、60〜64歳までの方は「基礎疾患のある方」と同じ時期に接種することも検討されています。
高齢の方以外で基礎疾患のある方については、これまでの議論や学会からの意見を踏まえ、以下のとおり具体的な病名や範囲を設定しています。
以下の病気や状態で、通院/入院している方
そのほか、基準(BMI 30以上)を満たす肥満の方(BMI30の目安:身長170cmで体重約87kg、身長160cmで体重約77kg)も対象となります。
対象者の範囲は、高齢の方が入所・居住する社会福祉施設等(介護保険施設、居住系介護サービス、高齢の方が入所・居住する障害者施設・救護施設等)において、利用者に直接接する職員としており、サービスの種類・職種は限定されていません。
*接種の順番についての詳しい情報については、こちらをご覧ください。
原則として、住民票のある市町村(住所地)の医療機関あるいは接種会場で接種を受けられます。今後、インターネット上で接種できる場所を探すための総合案内サイトが設置される予定です。そのほか、市町村からの広報などをご確認いただくとよいでしょう。
なお、以下のような事情がある場合、住所地以外での接種が可能となる見込みです。
なお、医療従事者等の接種場所については、勤務先でお知らせがある予定です。
全額公費で行うため、新型コロナウイルスのワクチン接種は無料で受けられます。
接種までの基本的な流れは次のとおりです。
一般の方よりも先に接種が始まる医療従事者等の方は、勤務先を通じて接種方法が通知されます。すでに接種を受けた方は市町村から送付される接種券を使用しないでください。
なお、ワクチン接種を受けるかどうかは予防接種に関する効果と副反応のリスクの両方を理解したうえで本人の意志で決めるものであり、強制ではありません。
写真:PIXTA
極めてまれではありますが、ワクチン接種の副反応による健康被害(病気になったり障害が残ったりすること)が起こる可能性があります。予防接種によって健康被害が生じた場合は、救済制度に基づき医療費・障害年金等の給付を受けることが可能です。
*救済制度の詳しい情報については、こちらをご覧ください。
接種を受ける時期に供給されているワクチンを接種します。また、いくつかのワクチンが供給されている場合でも、2回目の接種では1回目と同じ種類のワクチンを接種する必要があります。
一般的にウイルスは絶えず変異していくものです。小さな変異でワクチンの効果がなくなるわけではありません。また、ファイザー社のワクチンでは変異株の新型コロナウイルスにも作用する抗体がつくられたという結果が発表されています。
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